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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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57:次に生かそう


「ショズヘネラ」


背後からかけられた言葉にショズヘネラは赤い髪を揺らして振り返ると、荷車から手を離した。

「こ、これは我が主!」


恐縮し、膝を付きそうなショズヘネラを押さえてカークは苦笑した。心の底から。

――だから俺は主じゃないんだけど

周りの目を気にしながらもカークは話す。


「しっかり復興を手伝ってくれてありがとうな」

「勿体無いお言葉です」


“勿体無い言葉”と言うと彼女の顔は僅かに曇る。

感情の振れ幅が大きくなり、視野が広がると気にしていなかったものが気になるようになる。彼女はいまだそれに戸惑っているのだろう。

ショズヘネラは息を呑み、それから、戸惑い気味に口を開いた。


「・・・・・・やり直せると言われた。本当だろうか」


突然の言葉にカークは優しい顔を見せる。


「本当さ。誰だって間違いを犯す・・・・・・俺だってそうだ」

「主も?」

「俺は、主じゃ・・・・・・とにかく、次に生かすことが重要だ。失った命は戻ってこない。失った時間も戻ってこない。悩むのも良いが、先に進むのも大切なんだ。もちろん立ち止まるのだって大切だけどな」


そう言うと、彼女は苦笑した。


「大切な事ばかりだ」

「そうだよ。生きるってそう言う事だ。難しいよな」


ルレアがカークの隣で頷き、ショズヘネラは吹っ切れたように明るく笑った。


「今できることをする。それが私の使命だな」

「まあ、だけど無理はするな。無理をしたら元も子もない」

「まかせろ。力を抜くのは得意だ」


そう言って彼女は瓦礫でいっぱいの荷車を押して去って行った。


「・・・・・・彼女たちのおかげでカノカノスの復興は早まりそうです」

「それは嬉しい。カノカノスが栄えればこの領が栄える。侯爵領が栄えれば他の領地もより良い方法を探るだろう。そうなれば国も栄える。良い事に目を向けて行かないとな」


笑うカークにルレアは何処かで失った純粋さを思い出すように微笑んだ。




東側の大通りの外円から内円に向けて歩いていると前から見慣れた赤みがかった金の髪を揺らす美しすぎて現実感の無い美少女としか形容できない少年エメディリルが手を振ってこちらに向かって来た。


「カーク!探したよ」

「ごめん。なんか用だったか?」

「マリスがさ『遠回りする予定だったけど真っ直ぐロージニアに戻る』って伝えてって言ってきてさぁ・・・・・・キレそうだったよ。僕伝書鳩じゃないのにね」


口を尖らせるメディにカークはすぐさま頭を下げた。

機嫌を損ねるのは非常にまずいぞ。


「・・・・・・それはすまない。俺も謝る。強くて信頼出来て頼れるのはメディだけだから皆頼るんだ」

「えっ?本当?頼れる??」

「ああ、皆、頼ってる」


カークの言葉にメディは嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべる。


「カークも?」

「当然さ。友達だからメディも俺を頼ってくれ。出来る範囲なら頑張るからさ」


この上なく満足気にメディは鼻を鳴らし、胸を逸らす。


「ま、まあ!僕はすっごく凄いから、頼ることはあんまりないけど、どーしてもっ!て時は頼ってあげてもいいよ」

「そうだな、よろしくな。メディ」


思わず頭を撫でそうになったが寸での所で思いとどまった。

空振りさせた右手を不自然にぶらつかせ、不意に思い出したことを口にする。


「・・・・・・クェルムは?全然見かけないけど」


名前を聞いて考えこんだメディはやっと誰だか見当がついたのか口を開く。


「クェーゲルニルムの事?とっくにロージニアに帰したよ。ここに用事ないし、あの子」

「あ、そうなんだ」


ロクに挨拶せずに別れちゃったなと考えながら周囲を見た。


「じゃあ、一緒にぶらつくか?」

「いいの?わーい!」


無邪気に喜ぶメディと裏腹に一緒にいたルレアの顔は青い。

顔は引きつり、肩が震えている。


「わ、私は・・・・・・どうしたら?」

「え・・・・・・どうしたらって?体調が悪いなら戻った方が良いぞ、ルレア」

「えー?3人で街見て回ろうよ。面白いかも」

「ふぐぅ・・・・・・ご、ご一緒させていただきます」


青い顔のままでルレアがそう言うとメディは不満を漏らす。


「固い!友達の友達なんだし、もっと軽く!」

「ひゃい!一緒にいきます。エメディリル様!」


胸に勢いよく手を当てて敬礼するルレアに満足して頷きメディはカークに向き直り笑う。


「一緒に街で遊ぶのって友達っぽい!」

「お、おう・・・・・・そうだな?」


何処か釈然としないものを抱えながらカークは3人で街の散策に出かけた。



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