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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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55:とても緊張した


3日目にもなるとカークはもう体の痺れは抜け、朝食のリンゴ以外にもパンや卵料理を食べるようになっていたが、食費を考えると胃の辺りがキリキリする。

という相談をルリアにしたところ安心させるように微笑んで「お気になさらず」と返してきたので絶賛気にしている。

何と言うか、侯爵の城に泊まると言うだけでも胃が爆発しそうなのに、その侯爵に会うこともなく――礼儀やなんやかんやを知らないので会いたいわけでは決してないが――過ごすのはそれはそれで胃痛の原因だった。

俺は繊細なんだよ。と言い聞かせながらパンを食べる。腹が減ってはなんとやらだ。

いつになったら城から出ていけるんだろうかと、窓を覗き込んだ。

センチメンタルになって考え事をしているとノック音が響き、部屋にいたルレアが率先して扉に向かう。


「いや、ルレア。俺もう、動けるよ?」

「まあまあ」


ルレアが何処か満足気に微笑んで扉を開け、一瞬固まった後、無言でその2人を部屋に入れたのでカークは驚き目を見開いて直立した。

青い髪、精悍な壮年。間違いなくヨウハ侯爵閣下だ。

そしてもう一人はヴェノ様。

突然現れた高位の存在に生唾を飲み込みカークは言葉を待つ。

いや、何か先に言うべきか!?


「あー朝食中にすまないな。ここは非公式な場だ。礼儀や作法など気にせず話して欲しい」


その言葉を聞いてぼんやりとカークは考えた何を気遣われているのかと思ったら朝食中な事か。

何処か安堵しながら侯爵の背後に立つヴェノが口元を数度指で叩く動作をして初めて自分がどれ程見苦しくかっ込んでいたかを思い知らされて顔を真っ赤にし、パンについてきていたナプキンで口元を拭った。


「あの場では名乗れなかったため、いま名乗っておこう。私がこの城の主、ヨウハ侯爵にしてアルバート・ヌエグ・ダグ・ガデュである」

「は!ご尊名は度々耳にしておりました!非常に優れた侯爵様であると民の間でも広く知れ渡ってございます」


カークは一瞬の躊躇いもなく頭を深く下げ腰を折り相手をヨイショする事に全身全霊を尽くした。

実際の話、ヨウハ侯爵の悪い噂はあんまり聞かない。だた、客観的に優れた統治者であるかどうかは比較対象が無いカークの知ったことではないのだが。

高位の存在を無下にできるわけがない。エメディリルに対する態度は何処かがおかしかったがそれは今きにすることではないだろう。

侯爵は部屋のソファに腰を下ろし、話を続ける。


「・・・・・・それは何より、それで・・・・・・単刀直入に行こうか。カノカノスを救ってくれた君に恩を返したい。何か欲しいものがあれば可能な限り、叶えよう」


侯爵の言葉を聞いて真っ先に反応したのはルレアだ。彼女は満面の笑みでカークを見ている。


「身に余る光栄でございます。ですが、既に頂いておりますので」


カノカノスにおけるニティスクアナとショズヘネラの市民権を貰っている。ひょいと貰ったがこれは本来相当な価値のあるものだ。

それを考えればカークは十分な褒章を貰っているだろう。


「いや、いや。あれは、なんというか・・・・・・彼女たちのための物だ。君のための物を用意しようと思っている」

「ですが、閣下。私は、それで十分なのです」


困った様に侯爵はヴェノを振り返り、それから困った様に首を傾げる。


「これは困った。君はこのヨウハ侯爵の顔に泥を塗りたいのかね?」

「は?い、いえ、そんな滅相もございません」


突然そんな事を言われてカーク驚いて否定するも侯爵は胡乱気にこちらを見た。


「だが、恩を返させてくれないというじゃないか。それは困るこれから先、私はあらゆる者に後ろ指を指される生活を送る事になるだろう。ヨウハ侯爵は都市を救った英雄に名誉も財も与えない恥知らずだと」

「・・・・・・は、あの、いえ・・・・・・」


何と言えばいいのか。カークは必死にその脳みそをフル回転させ最善の答えを導きだそうと考えたが、何も出てこない。

そりゃそうだ。市民権を2人分ももらえてそれで満足していたのだから。

カークは小市民にすぎず、ただの冒険者で、F級で・・・・・・とにかく今欲しいのは地位でも名誉でもない。単純に金だが、此処で貰ってもカークは持て余してしまうだろう。

所謂、高額宝くじに当たった気分になるに違いなかった。

ぐるぐると考えて、ぴんと来るものがあった。


「竜の鱗」

ニティスクアナとショズヘネラの鱗。舞い散った時、美しく輝いていた。

ルレアの剣がどれ程の一品かは知らないが、その剣を防ぎ、刃毀れさせる程の硬度だ。


「ん?」

「もしよければ、竜の鱗を加工して、長剣にして欲しいです」


侯爵はカークの言葉を聞いてヴェノを振り返った。


「装飾を考えないのであれば明日には出来る」

「必要ありません。切れて、鞘があれば十分です」


カークの言葉にヴェノは頷いてちょっと笑ったようだった。


「一振りで良いな?」

「はい」

「明日の朝までに仕上げてやる」


そう言ってヴェノは去って行った。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒険者が危険を犯して領土防衛の立役者になって 報酬が襲撃者の市民権で満足ってただのアホだろ
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