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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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28:ティラノサウルスはロマン


「すみません!俺も連れて行ってもらえませんか!」


ギルドを出た瞬間に声を掛けられて、カークは立ち止まったがルリとシャルローゼはまったく気にせず、先に進んでしまったので思わず声を掛けた。


「すまない、ふたりともちょっと待ってくれ」


声を掛けてやっとふたりは振り返り、頷く。

それを確認してから声を掛けてきた青年に目を向ける。

若く瑞々しい褐色の肌。凛々しい相貌だがまだ若く幼さを感じさせる。白銀の髪の頭から飛び出す毛並みの美しい狼の耳が彼が獣人であることを伝えた。

革の胸当てには緻密な金属の細工が施され、背中を見れば合成弓を背負い、腰にはポーチの他に矢筒もある。弓術士だ。

向き直って、ギルドから離れて建物の外壁に近づくと問いかける。


「なぜですか?」

「青鹿を狩りに行くと聞こえて・・・・・・俺の実力じゃあ無理なんですけど、毛皮が欲しくて!勿論、お金は支払います」

「俺達も実力があるほうじゃありません。安全の為にもっと実力のあるチームに頼む方が良いですよ。もしくは、お金があるなら依頼を出すとか」


そういうと、彼は言葉に詰まったようだった。安全を考慮するなら至極当然な言葉だと思うが何故、言葉に詰まる事があるのだろう。

視線を彷徨わせ、ふと何かを思いついたように彼は目を見開いて言葉を紡ぐ。


「あ、青鹿に興味があるんです!」

「そ、そうですか?でも・・・・・・」


安全に変えられるものはない。見たところ冒険者ギルドの登録票だって下げてない、一般人の様だ。

熱意に押されながらカークが口を開くより早くシャルローゼが冷たく言う。


「カークさん、時間は有限です。問答するより連れて行って、そこで起きることは自己責任でよいのではないでしょうか」

「はい。自己責任でなら付いて行かせてもらってもいいですか」

「ええ・・・・・・まあ、俺達も気を付けますけど、危険な真似は止めてください」

「勿論です、よろしくお願いします!俺はマリスといいます」


頷き、めいめい自己紹介をしてから歩を進める。


「カークさんは何故、冒険者になったんですか?」

「気軽に話してください・・・・・・俺もそうするから。冒険者になったのは金の為だよ・・・・・・農民じゃあ腹一杯食うのも難しいから」


答えるとマリスは目線を彷徨わせどこかばつが悪そうにする。

何かおかしなことを言っただろうか。いや、明け透けに金のためだと言われれば反応に困るのも頷ける。正直すぎたか。

だがこれは事実だ。今は指輪を買い戻す為に金が要るがゆくゆくは家族の生活を楽に出来るだけの金を稼げる冒険者になりたい。


「・・・・・・ごめん、正直が過ぎたな」

「いや、金の為というのは十分な理由だ・・・・・・それなら貴族に仕官したりしないのか?噂で泥だって聞いたぞ?」


マリスの顔を見返し、苦笑する。


「金は稼げるだろうが貴族に仕官しても、ろくなことにならないさ。泥というだけで声を掛けるようなひとたちが欲しいのは見世物になる珍獣(ペット)であって俺という人間じゃない。断言できるよ」


一瞬足を止めたマリスを気に留めずに歩を進めて北門から平原を目指す。




青鹿を仕留めるのは難しい。これは実力に関わらずだ。

単純にでかいからというのもあるが、青鹿は臆病で直ぐ逃げるか、突進してくるかの二択をとりがちで逃げる青鹿と並走するだけの脚力があるならまだしも、そうでないなら見失うことが多い。

メタセコイアの様な巨木が生息するホニエ大森林の東端、ロージニアから見れば西の森付近の約200m前方に見える恵躰の青鹿を確認して4人は身をかがめる。

いや、シャルローゼは真っ直ぐに進もうとしたのでカークが必死に止めたが。

不承不承という顔を隠さないシャルローゼを無視して話しを進める。


「もう少し近づきたいが、危ないしなあ」

「此処から撃つのは?」


マリスの言葉にぎょっとした。

弓の射程距離は300mだが、それはただ撃つだけであるならの話だ。的に向かって撃つとなるとよほどの弓で、よほどの腕でない限りは有効射程距離は200mに及ばない。

ちらりと彼の弓を見る。相当良い弓であることは明白だ。滑やかな何かの角か骨と継ぎ目が分からない程丹念に癒着した硬木。引くのは一苦労だと素人目にも分かる剛弓。ならマリスの腕前はその弓に恥じないものだろう。

カークは一瞬悩んでから、マリスに向き直る。


「頼む」

「おう、まかせろ」


マリスはゆっくりと立ち上がると獲物が気づいていないことを確認する。

背負った弓を左手に持ち、矢を番える。

よく狙う。瞳孔を引き絞り細い縦線だけになるほど絞って獲物を捉えると、息を詰めた。

息を止めた一瞬で強く弓矢を引く。

風を切る音が微かに聞こえる中で鋭く放たれた矢は青鹿の逞しい首に吸い込まれるようにして突き刺さる。

悲鳴を上げる青鹿。獲物は痛みに耐えかねて暴れ、西の森に向かって走って行った。


「・・・・・・青鹿の筋肉を舐めてた」

「この距離で当たるなんてすごいな。じゃ、追いかけようか」


全員立ち上がり素早く行動に移す。足の速さはシャルローゼ、ルリ、マリス、カークの順だ。

そして悲しい事にカークが森に入った瞬間、シャルローゼがどこから取り出したのか血に濡れた白銀の長剣を片手に持っていた。確かにカークよりは強いと聞いていたが、こうも一瞬で終わってしまうと悲しさがこみあげてくる。

その足元には首を絶たれた青鹿が転がっている。


「解体はカークさんかルリさんが行ってください」


シャルローゼの冷淡な言葉に頷きながらカークは解体用のナイフを取り出した。

皮を丁寧に剥ぎ取ると内臓を取り出し、部位ごとに肉を切り分ける。うまい場所は高く売れるしコンパクトで持ち歩きがしやすい。が、腐るまでの時間が当然あるのでカークは必死に切り分けた。ルリに手伝ってもらいながら解体した。剥いだ皮から脂を丹念にそぎ落とし、丸めると欲しがっていたマリスの足元に置く。


「肉が欲しいひとは?」

「あ、俺欲しい」


マリスはそう言ってポーチから滅多に見ない程に白い綺麗な布を取り出す。

どの部位が欲しいか聞くと背中の肉が欲しいというのでそれを渡すと、惜しげもなく白い綺麗な布で肉を丁寧に包み、そのままポーチへ放り込んだ。すると、目を疑ったのだが、小さなポーチに肉の塊が収納されたのだ!


「・・・・・・ん?そのポーチどうなってるんだ?肉が入ったぞ!?」


目を剥いて驚くとマリスもまた驚いた様子だった。

ルリもシャルローゼも驚いていない。何故驚かずにいられるのか!

明らかに小さなポーチに吸い込まれて収納されるなんて、考えられない。


「空間魔法の付与された鞄やポーチを見たことが無いのか?」

「見た事ない。驚いた・・・・・・そんな凄いものがあるんだな。どれくらい入れられる物なんだ?」

何処か得意げにマリスは答える。


「これは300kgまで収納できる。でかい武器とか入れている冒険者もいるぜ」

「凄い・・・・・・いくらくらいするんだ?」


その下品ともいえる言葉に反応したのは背筋をピンと伸ばして我関せずとしていたシャルローゼだった。


「それと同程度の物でしたらラナンティアの店では格安の金貨450枚で取り扱っております」

「・・・・・・そっか、ありがとう。金が出来たら考えるよ」


手も足も出ない値段である。カークは項垂れながら青鹿の頭を指す。


「それより、頭ごと持ち帰るのか?それとも角を切り取る?」

「角だけで構わないかと。剥製を作る訳ではないので」

じゃあ、と言って角が切れたら苦労しない。カークはのこぎりなど持ち歩いていないし、ナイフで切るには相手が悪い。

するとシャルローゼが持っていた剣を振り上げて角の根元に向かって振り下ろす。

そして反対側の角も同じようにするとこちらを見つめてきた。

すっぱりと切れた角の根元にうすら寒いものを感じながら恐る恐ると聞く。


「よく切れる剣だな・・・・・・誰が角を持つ?」


と言いながら空間魔法の付与されたポーチを持つマリスに目を合わせる。折角だし入れて貰おうという魂胆だったがシャルローゼが声を出す。


「私が運びます。私も空間魔法の付与されたポーチを持っていますので」

「あ、うん。ありがとう」


やっぱり持っていたのか。まあ、シャルローゼの格好はどう見ても高級品で固められているし持っていても不思議ではない。

ひとしきり空間魔法のポーチに驚いて疲れていると背後でかさかさと葉擦れの音がする。

振り返ると丸々としたオレンジ色の目、縦に割れた瞳孔と目が合う。

後ろ足で立つ二足歩行のでかいトカゲだ。全長は2m程で背は60cmくらいか。首元から背中には僅かに羽毛が生えており顔や手足には黒と灰の間の色の鱗が見える。


「・・・・・・見たことあるな・・・・・・小さい頃に図鑑で」


シャルローゼは角をポーチに入れて、ルリは特に警戒するでもなくこちらを見て、マリスは困惑したようにトカゲを見た。


(・・・・・・ティラノサウルス・レックスによく似てる。小さくしたら丁度こんな感じじゃないか?まあ、あり得ないな。ティラノサウルスは狂暴だって話だし)


トカゲは好奇心に目を輝かせ、落ちている肉に目をやると喜びの声を小さく上げて、それに齧り付いた。

内臓を食べ、分けてあった肉を平らげると甘えるようにくるくると喉を鳴らす。


「いや、お前の為に置いてた訳じゃないからな!?」


トカゲの意図を鋭敏に感じ取りカークは憤慨しながらそう言う。そりゃ、結構な量があったのだから全部の肉を持ち帰ることは出来なかっただろう。だがそれでも、綺麗に丸ごと食べられてしまえば売るものもなくなってしまう!


「・・・・・・切り捨ててお前の肉を売ってやろうか」


剣に手をかけ獰猛にそう言うとトカゲは尻尾を巻いて逃げ出した。文字通りに。


「なんなんだ?あのトカゲ」

「さあ」

「それより青鹿を探しましょう」


シャルローゼの言葉は尤もだ。一行はメタセコイアの生い茂る森を探索する。




だが問題というのはそう簡単には解決しない。

カークは振り返ってでかいトカゲを睨む。


「ついてきても肉はやらない。どっかにいけ」


きゅるきゅると悲しげな声をだしながらも一行の足に合わせてトカゲはついてくる。

こんな肉食動物が一緒にいては、青鹿は出てこない。

カークはため息を吐くと立ち止まってトカゲに向き直る。


「いいか、俺達はお前に構ってる暇はないんだ。仲間の所に行け」


カークの言葉にトカゲは嫌がるように首を振りきゅるきゅると鳴くがこれは拒否の声に聞こえる。何故、トカゲの気持ちが分かるのかは分からないが兎に角、このままでは角が集まらない。


「・・・・・・カークさんに懐いているようですしカークさんを置いて私が角をとって来ましょうか」


シャルローゼの合理的な提案にカークは賛同しようとしてとどまる。


「いや、でも、俺が狩ってくるって話だったし」

「貴方が角をラナンティア様の元に持っていけば問題ありません。あの御方は今回過程は気になさらないでしょう」


ちらりとトカゲを見る。首を傾げているがさっきから言葉が分かっている様子のトカゲがするにはあざとい行動だ。


「・・・・・・じゃあ、頼みます。此処でトカゲに帰るよう説得しますから」


シャルローゼからルリに視線を移す。


「ルリ、すまないがシャルローゼさんを手伝ってもらえるか?」

「はい、カーク」


シャルローゼは断るかとも思ったがそんなことは無く、ふたりはきびきびとした動きで森を進んでいった。

残ったカークとマリスは目を合わせる。


「マリスはトカゲとか飼ってるか?」

「いや、トカゲは飼ってないな」

「ああー参考にしたかったんだけどな、うん・・・・・・どっかいかないと殺すぞ」


ぶっきらぼうにそう言ってもカークに殺意がない事を見通しているのかトカゲはどこ吹く風だ。

カークは額に手を当てて怒りを堪える。トカゲ相手に怒っても仕方がない。


「お前が食ったのは俺達の飯のタネだったんだ。なのにそんな態度をとるなら本当に狩るぞ」


怒りを滲ませた声にトカゲは怯えたようにきゅいと鳴き、顎を地面につけた。

許しを乞うよう見上げてくる潤んだ目にカークは口ごもる。

いや、トカゲ相手に押し切られるだなんて・・・・・・。


「くそ・・・・・・そんな顔してもダメだ。だいたい何が望みなんだ?勝手に肉食って懐くなんてありえないだろ?」

「野生生物が勝手に肉食って懐いたら苦労しないわな。変なトカゲだ」


口々にそう言うとトカゲは何処か不貞腐れたような顔をして鼻息を荒げた。

瞬間。ずん、と地響きが鳴る。地震かと身構えた。いや違う。何か大型生物が走っているような連続した地響きだ。

それは真っ直ぐにこちらに向かってきているように思える。

カークは慌ててその場を離れようとマリスとトカゲを見ると、マリスは臨戦態勢で弓を弾いていたしトカゲは怯えるように後ずさっている。


「ガギギャガギアァァアアァ!!!!」


大気が震えるほどの咆哮。思わず身を竦め耳を塞ぐ。咆哮した主はまさに“ティラノサウルス・レックス”そのものだった。

口には円錐形で鋸歯状の歯がびっしりと並び、鱗に覆われた巨躯はあらゆる攻撃を防ぐとしか思えないほどに強固に見える。

血に飢えた目がこちらを睨む。

さっと血の気が引くとカークは後ずさろうとして、息を呑んだ。

(今、後退しても、追い付かれる。ここで)


ここでやるしかない


ティラノサウルス・レックスの最高時速は30kmだとされている。この世界のこいつがどの程度の速さで走れるかは知らないがどの道カークの様な常人では走って逃げれられる速度じゃない。

この化け物と戦う覚悟を決めて剣を抜く。


「こっちのトカゲは言葉が通じそうにないな?」


一応声を掛けるが返って来たのは咆哮だった。

そして、突進。

マリスが放った矢は固い鱗でもなお刺さりはしたが、なんの足しにもならなかった。

一歩ごとに地面を抉るようにして駆ける姿は感嘆に価しただろうがカークにとっては死の突進だった。

避けることは叶わない。

カークは死を覚悟した。泥にとって死ぬことは、安い事だと諦めて。

だが、カークは渾身の力で目を見開き、魔獣ティラノサウルスの鼻先を目前にして全力で怒鳴った。


「【時虹公のこぶし】!!!」


200も消費したせいでごっそりと魔量(MP)を消費した感覚を覚えるとともに、白く穢れた虹色に輝く悍ましい泡で出来た巨大なタコの触手の様な何かが一瞬視界の端を通り、魔獣ティラノサウルスを殴り飛ばした。

突進をしていたはずの魔獣ティラノサウルスはのけ反り、血を吐きながら後ずさる。

ぼたぼたと零れる血の量が軽傷ではなく重傷であると伝えるが魔獣ティラノサウルスは関係ないのかこちらを睨めつけて、血を零しながら咆哮する。

しかし咆哮には先ほどまでの力はなく、怯えすら含んでいた。

そのまま、身を返して逃げるように巨躯を揺らして森の奥へと消えていく。

その背中を見て、詰めていた息を吐き安堵した。重傷であれば追いかける必要はないだろう。

振り返ってマリスを見ると弓を下ろしながらこちらを驚いたように見ていた。


「魔法・・・・・・か?」

「ああ、魔法だ。驚いたな、あんなトカゲが出てくるとは・・・・・・」

「・・・・・・驚いたよ」


どこか茫然としているマリスに怪訝な目を向けても反応はない。何か考えている様子だ。さっきの奴について考察しているのかもしれない。ほうっておいてトカゲに声を掛ける。


「お前、大丈夫か?」

「きゅう」


(うーん見た目はさっきの奴の小さい版だが、こっちのが可愛いな・・・・・・絆されてるな、俺)


可愛らしく見上げてくる姿に思わずそんなことを考えながらその頭を撫でる。

トカゲの鱗はひんやりとして気持ちがいい。流石はトカゲ。

撫でると気持ちよさそうに喉を鳴らし頭を掌に押し付けてくる。


「おお?よしよし、怖かったな」


数分間、思う存分撫でていると背後から冷たい声がかかる。


「追い払うのではなかったのですか」

「・・・・・・いや、あの、これは」

「カーク!先ほど大型生物がここから去っていくのが見えましたが、無事ですか!?」


シャルローゼの詰問から逃れるようにルリの言葉に飛びつく。


「大丈夫だよ、ルリ」


ルリは信じられないものを見るようにこちらを検分するとマリスを見る。


「・・・・・・どうしたのでしょうか」

「さあ?この辺じゃあ見たことないトカゲだったから悩んでるんじゃないか」

「トカゲ、ですか?」


ルリの疑問に答えるようにさっきまで撫でてたトカゲを指す。


「あれを巨大化したようなトカゲだった。全長は13mくらいかな?」

「大きいですね」


それを聞いてルリは首を傾げる。


「それなら、このトカゲはその巨大トカゲの仔どもなのでは?」

言われてはたとトカゲを見た。トカゲは呑気に尻尾を追い回している。


「・・・・・・実は親で取り返しに来たとか」

「それはあり得ません。あの魔獣ティラノサウルスは子育てと言うものをほぼしないことで有名です。卵から生まれたら基本的にはそれっきりで、そのトカゲはひとりでうろついていました。なので、もう巣立ちした後でしょうね。縄張りを荒らさない限りは卵だろうと仔どもだろうと奪われたりしても血相変えて親が取り返しに来る状況は極めて稀です」


一息にそう言われてカークは思わずたたらを踏んだ。生き物にも詳しいんだなと思いながら礼を言う。


「そうか、ありがとう」

「いいえ、どうしたしまして。そのトカゲ、どうするのですか・・・・・・まあ、角は2頭分集まったのでどちらでもいいですが」


まあ、そうなるよなとトカゲを見ると今度は土の中の虫を必死に探しているらしく、そこら中に穴を掘っている。そのうち誰かがそこでひっくり返るだろう。

そこに声を掛けた。


「お前、どうするんだ?俺達に着いてきてもいいことは無いぞ」


虫を探すのを止めて土のついた口をぐいぐいとカークの足に擦り付けてくる。


「きゅぃい」


可愛い。いや、流されては駄目だ。こいつにとっていい食事を提供することがカークにとって困難であることは明白なのだ。カークには金もなければ狩りの腕もないのだから。


「・・・・・・食べ物も満足に食べられないかもしれない」

「きゅ!」


後ろ足で土を引っ掻きまわして虫を取りそれを食べて得意げな顔を見せる。

いじらしい事に狩りも出来ると。

ああ、可愛い。



家族として迎えるのだ、ペットは責任をもって終生飼育!



カークは心にその言葉を刻んで刻み付けてトカゲの頭を抱いた。

ふかふかの背中の羽毛は意外とちくちくする。


「俺が飢えてもお前は絶対に飢えさせない!暖かい家庭を築こうな!」

「きゅぃぃい!」


何処か不満気な顔のルリが控えめに口を出す。


「・・・・・・カーク私もいますからね」

「勿論だ。一緒にこのトカゲを飼おう!」


そう言うとルリは心なしか機嫌よく耳を伏せて尻尾を上げた。

それを呆れたように見ていたシャルローゼが声を掛ける。


「それでは皆さん。用事は済みましたので、街に帰りますがよろしいですか」


めいめい返事をして確認をすませて街へと帰って行った。




「・・・・・・あれくらいでかくなるんじゃないのか?」


ぽつりと零れたマリスの独り言は誰にも届かなかった。




トカゲ:可愛い。ティラノサウルス・レックス似のトカゲを小さくした見た目。幼体ではない。肉が好き。ヒトの言葉が分かる、賢いトカゲ。そのうち名前が付く。

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― 新着の感想 ―
本当に3点リーダ多すぎて読みにくい
プチティラノがなついたら可愛い… しかし街に魔獣連れてって大丈夫なんだろうか 街には泥相手に何してもいいみたいな風潮?でヤバいキャラいっぱい居るからティラノちゃん長生きできるといいなぁー
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