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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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27:新しいブーツ買っちゃった


「これはまずいんじゃないのか」


夜の危険な森の中。緑の髪を揺らし、男は振り返る。

明かりは頼りない月明りだけ。夜暗を見渡せない人間の目であれば暗闇と言える森の中、ランタンもない状態で話しかけられた緑の髪の男は指示された地面に転がる死体を見て渋面を作る。


「・・・・・・不味いだろうな。冒険者ギルドにも報告が上がってたと聞いた。これも閣下に報告しよう」

「こいつら冒険者を襲ったのか」


そう言った男は長い緑の髪を一度弾いてしゃがみ、辺りを見渡した。

お互いの顔を分からない程に暗い森の中でそれでも男2人は目を合わせる。


「襲った。ソレも2組・・・・・・本格的に動いてる可能性がある」


2人の顔は瓜二つだったが表情は対照的だ。

酷く焦っているような不安を感じている表情を見せる男と楽観的で状況を把握していない表情を見せる男。


「俺達には関係ないだろ?」


楽観的な男の言葉に首を振って溜息を再びつく。


「俺達がいるから活動的なんだろ。ここで弑害申しあげれば、責任はロイノーネに押し付けられる。あいつらは知らん顔でヘトネベア花竜帝国とロイノーネ陽王国が仲違いするのを見られるわけだ」


その言葉を聞いて男ノアは渋い顔を見せた。


「・・・・・・面倒くさいな」

「ああ、面倒くさい」

「だが、まだ出るわけにはいかねえんだろ?」


ノアが死体を検分する間にレラは目を伏せた。そうだ。まだ街を出るわけにはいかない。

「目撃情報はある。明日か明後日かどちらにせよ、直ぐに接触するさ」


「・・・・・・うまくいくと良いけどな」


事によってはあの2人はより離れたところに行ってしまう。そうしないように、慎重に会談する必要があったが、それはノアもレラも管轄外だ。

重要な事を1人に押し付けその肩にあまりにも重いものが乗っていることを知っていても何もできない自分に歯噛みする。


「あいつなら、上手くやる」


このままでは帝国が分裂する。

レラはそうならないように祈りを込めて呟いた。

それを気にしないようにノアはいう。


「・・・・・・レラ。この死体おかしいと思わねえか」


乾いた血に染まる死体を覗き込む。臓腑が零れ、腐敗臭が鼻を突く。

確かに奇妙だ。


「まあ、身ぐるみはがされているから、おかしくはある」

「そうじゃなくって、断面が食い千切られたみたいになってんだよ」

「あ?」


死体をよく見ろと言われて顔を顰めるが言い出した奴は大抵話を聞かない。

諦めて覗き込むと確かに不思議な断面だった。

通常、剣や弓や槍で止めを刺そうと思ったら体を抉る方法はかなり無駄があるし無理もある。相当な膂力を持って、剣であれば肩から切り込んで脇腹に沿って骨ごと切る事になる。

しかし、この死体の断面は違う。そこだけ食い千切られた様に丸みを持って無くなっていると言った方が自然だった。

もしくは円形の何かがそこを抉ったようなというほうが伝わるか。


「でもな、何かに当たって肉や骨が弾けたように周囲には破片が散らばってんだ」


暗い中で死体を眺め、ノアは言う。


「こいつは肉も骨も内臓もこの部分だけ無くなってる。相当鋭い剣で斬りとったか、でかい魔獣に食われたかもしくは」


なるほど、ノアの言いたいことがわかってレラは額に手を当てる。


「相当強い魔法で殺したかって事か。そんな強い魔法使いになんでこいつらは手を出したんだ?」


得たりとピッとノアは指を向ける。


「それだよ!こいつらの実力じゃあ、そんな魔法使い相手なら鎧袖一触で終了だとこいつらでも分かるだろ?なのに手を出した・・・・・・が、問題がある」

「うわ・・・・・・面倒くせっ。その話今じゃなきゃダメか?」


素直にそう言ってノアの目線の先を追う。

こいつらの衣服は全て乱れており、持っていたであろう剣とポーチ類、身につけていたであろう短剣やペンダントがより分けたように散らばっていた。

そこに落ちている剣のひとつを持ち上げる。


「この剣だけ造りが違う。ボロボロだしな・・・・・・で、見たことないか」

「剣の造り何て一々見てねえよ」


あからさまな得顔を闇夜の中で披露したノアは続ける。


「泥の奴いただろ?くそば・・・・・・エリス様の所に行ったときについてきた奴」


いたか?いや、いたか。ねずみ耳の獣人の女が強くていまいち影が薄かった。思い出しても顔がぼやけている。

レラは苦心してその多分男の方を思い出して頷く。


「が、持っていたのか」

「そう、そいつが持ってた剣だ。で、こいつらの剣が一本足りない・・・・・・誰かが持って行ったと考えるのが自然だ。ただし、あいつの実力でこいつらは辛いだろうな。確実に死んだだろう・・・・・・泥だし死んでも生き返るが、女の方は違う。なのに死体が無い。じゃあ、あの女が思ったより強かったか?違うな。あの女なら4匹に囲まれた時点で終了だ」

「・・・・・・何が言いたい」


にやり、とノアは笑う。


「どっちかが、この強力な魔法を使えるっていうのは俺達に有利に働くんじゃないのか」


それは、甘美な言葉に聞こえた。

レラ達にはやることが山ほどあるが、人手は足りない。

それに中には荒事も含まれている。もしその魔法使いを仲間に出来れば、確かに有利に働く。


「・・・・・・どっちだと思う」

「女の方だろ。泥の方は魔法は門外漢って感じだったし」




朝の早くからブーツの踵を鳴らしてカークは歓喜に打ち震えた。


「歩くたびに土が入らない・・・・・・なんてすばらしいブーツなんだ!!」


新しく買ったブーツはカークにとって高価な物だったが、その価値はある。

頑強の魔法が掛かると高くなるのは仕方が無い。その分の安心を買えるのだ。

黒のブーツは滑らかな革の光沢を放ち、カークの足を守ってくれる。


「金貨1枚は結構な出費だったが、うーん・・・・・・履き心地がいい」

「良かったですね、カーク」


ルリの言葉に笑顔を返す。近いうちにルリにもいい防具を買いたい。

それは伝えたことがあるが、ルリが言うには着ている服に魔法がかかっていて結構頑丈なのだそうだ。だが、それでも防具は身につけてしかるべきだ。


「ああ・・・・・・うん、夢みたいだな、こんなに履き心地の良いブーツに出会えるなんて」


前世でもこんなにいいブーツには出会えなかった。そう考えると、金をくれたあの美しい少女には感謝するべきだろうが、素直に感謝を示すのをなぜか躊躇う気持ちがある。

彼女の邪悪としか言えない性格のせいかもしれない。いや、邪悪というよりはヒトの事を突いて突いて突きまくってそれに怒ったら爆笑するタイプだと何故か断言できる。まあ、邪悪は言い過ぎかもしれない。性格は悪いが。

そんな事を考えてギルドに向かっていると前方から噂をしたせいか悪目立ちする豪奢な白のコートと華やかな花葉色の長髪を揺らす絶句するほど美しい少女が歩いてくる。相変わらず美しすぎて現実味がない。

そして、その傍らに2人の人物が付き従っている。

片方の少女は知っている。白金の髪をツインテールにしたハーフエルフのシャルローゼだ。

もう片方の人懐っこい柴犬の様な笑顔を浮かべる茶髪の男は知らない。


「ん!泥くんじゃないか!?奇遇だね」


見つかった。

カークは顔を引き攣らせて必死に笑顔を向ける。

この間しこたま叩きつけられたことを忘れてないぞ。と威嚇したいが金を貰っているので強くは出られない。

必死に笑顔を作っていると彼女は何かを思いついたようにこちらを指さし、ニヤリと12歳くらいの少女がするとは思えない程に邪悪に笑う。


(うわ、綺麗な顔してても邪悪だと分かる笑みを浮かべられるの凄いな)


「君に頼もう、そうしよう」

「は?」


素っ頓狂な声を出すカークを連れてくるように傍らの男に指示を出した彼女は悠々とギルドの扉をくぐり、騒がしいギルド内を気にも留めず平然と壁際のテーブルに着く。

そこに座らされたカークと付いてきたルリは相手の言葉を待った。もう連れてこられた時点でどんな内容の事だったとしても断れる気がしないのはなぜだろうか。


「・・・・・・実は知り合いに会うんだけど、直ぐに青鹿の角が欲しいんだ。いや、本当は角とってから話を聞きに行く予定だったんだけど早く来るように言われてさ、断り辛いじゃん?いや、いや、いや、別に兄ちゃんと喧嘩したわけじゃないよ。怒られたけど」

「・・・・・・つまり、お兄さんに角を上げたいってこと?」

「そうそう、喧嘩したわけじゃないよ。怒られただけ・・・・・・でもちょっと様子を窺ってくれると嬉しい」


御機嫌取りに青鹿の角が必要な兄というのも少々怖いがそう言うこともあるだろう。

ただ、カークは胡乱気な目を彼女に向ける。


「悪い事をしたなら素直に謝った方が良いぞ」


彼女は口を尖らせる。


「謝ったよ。でも、僕そんなに悪くない。君に強要したわけじゃないし約束は破ってないって言ったら怒っちゃって」


俺に関係あるのかと頭を抱えたカークは呻く。いったいいつ何を自分にしたのか見当もつかない。恐る恐る聞く。


「俺には心当たりがないんだけど」

「君と試合をしたでしょ?あれが怒られたの」

「・・・・・・なんで君のお兄さんが怒るんだ?」


確かにあれは痛かったしムカついたが見ず知らずの他人が怒るような事じゃないだろう。

もしかして自分には生き別れの兄でもいたかとドキドキしながら聞くと彼女は顔を歪めて言う。


「兄ちゃんは慎重派でさ、新しい泥(きみ)が僕の玩具にならないように心配してるんだよ」


そんなの酷いよねーと宣う少女にカークは信じられないものを見る目を向ける。

こいつ、俺を玩具にしようとしてたのか、と。

ヒトの事なんだと持ってんだ倫理観崩壊してんのか、と。

だが、そんな視線も何のその彼女は続ける。


「でもでも、考えたらさあ!君から兄ちゃんに“大丈夫!”って言ってくれたら、僕は怒られないし完璧だと思わない!?」


熱弁されても冷めた目を向けざるを得ない。カークには全くと言っていい程、利益が無いのだ。

カークだって鬼ではない。困っている人がいたら基本的には手を差し伸べるタイプだと自負しているが、自分が無理してでも助ける気はないし、ましてやこの少女にはいい思い出が無い。助けようという気にならないのは無理からぬことだろう。


「いやだ。そもそも俺じゃあ青鹿を狩るのは難しい」

「えー!?あんなのちょちょいのちょいでしょ?ぬー・・・・・・仕方ないシャルローゼを貸す」

「シャルローゼが狩ればいいじゃないか」

「そ、そんなことしたら、君が角を持って行かなくてよくなっちゃうだろ!?ちゃんと考えて発言して」


こいつどんだけ自分本位なんだ?と顔を歪ませる。


「考えて発言した。じゃあな」


席を立つと茶髪の男が笑顔のまま無言でカークの腕を掴んで離さない。


「離せ」

「エメディリル様の話が終わっていない。座るんだ」


(・・・・・・そんな名前だったのか)


そんな事に驚く間もなく強制的に席に戻されると目の前のエメディリルは満面の笑みを向けてくる。一発殴りたい。


「どうしたら、角とってきてくれるの?」


綺麗な笑みだ。無機質にも思える人形のように整いすぎて不気味でもある美貌からの笑みはそれだけで破壊力がある。その美貌をもってすれば大抵の老若男女は彼女の思うままに動いてくれるだろう。

だが、そこにカークは含まれない。冷徹に彼女を見て口を開く。


「正直言って関わりたくない」

「いやいや、一緒に遊んだ仲じゃないか。あ、金貨2枚で受けてくれる?」

「はっはっは、他の冒険者に当たってくれ。じゃあな」


そう言って席を立つも再び腕を掴まれる。どうにか抜け出せないかと必死に抵抗して結構本気を出して抵抗してなお、駄目だった。馬鹿力め!


「座れ」

「くそっ」


力で叶わないのはこれほどまでに悲しいのか。力なきカークは項垂れた。

こいついつか必ず殴ってやると心に誓う。

目の前の美貌を湛える少女は何か思いついたように悪戯っぽく笑った。


「指輪買い取っちゃおうかなー」

「それ、よく考えたらラナンティアさんに言いつけていいってことですよね」

「ぐあ!?兄ちゃんに言いつけるなんて卑怯だ!!」

「・・・・・・お兄さんってラナンティアさんの事?」

「見たらわかるでしょ」


髪の色も目の色も顔立ちも雰囲気も何一つ似ていない。

わっかんねえよ。心の中で呻き、ため息を吐く。

上品を体現する彼の妹とは思えない程自分勝手で我儘で邪悪なのはどうしてなのか。


「ああ、そう、兄妹(きょうだい)なんだ」

「うん、そう、義兄弟(きょうだい)


突っ込んでいいのかは知らないが、ラナンティアはエルフだった。それに対して妹であるエメディリルは耳が丸く、人間の特徴を持っている。

どういうことなのか、気にならないと言えば嘘になるがそこまで深くこの少女に関わりたくないのが本音だ。

つまり、スルーすることにした。


「自業自得だ。自分で解決しろ」

「ええー・・・・・・じゃあじゃあ!なんか欲しいもの買ってあげるよ。指輪とかどう?」


得気にこれなら断れないだろうと笑みすら浮かべる顔に向かってカークは鼻で笑う。


「ゆっくりの返済で構わないと言われている。急いでない」

「ぬー・・・・・・この手は使いたくなかったけど、しかたない」


そう言うと少女は掌をカークの顔に向けて何か唱え始める。


「君は僕の言う事を聞きたくなーる、聞きたくなーる」


カークは肩の力を抜いて、脱力した。どっと疲れたのだ。

なんでこんなところで無駄に時間を消費しているのだろう?

この少女についてきたのがそもそもの間違いだ。面倒くさい。

彼女の強欲に光る宝石のように美しい瞳を見返す。


「それで言うこと聞いたら、苦労しないだろ。もう行っていいか」

「はっ!?な、な、なんで、効かないの?」

「そりゃ効かないだろ。なんでそれで言うこと聞くと思えるんだ」


胡乱気な目を向けると本気で困惑している3対の目とかち合う。

なんでそんな目で見てくるんだ。子供に向けてやるならまだしも、成人した男にやって通用すると本気で思っていたのか。


「わ、分かった!なんか困ってることない?大抵のことは解決してあげる!」

「・・・・・・あー西の鐘のある迷宮に行きたいんだけど、実力が足りなくて困ってる。手伝ってくれるなら」


カークの言葉にエメディリルは無邪気に笑い、ぱちぱちと拍手をして見せた。

あの迷宮に早く行ってあの男から解放されたいという思いが故に口を突いて出た願いだったが、すんなり受け入れられた。


「手伝う、手伝う!じゃあ、青鹿の角を持って兄ちゃんの所に行って、“気にしてませんよー、大丈夫ですよー、仲良しですー”って言ってきてね!約束」

「何か増えてる気がするが・・・・・・まあ、うん。行ってくる」

「どっちか貸そうか?」


さも当然のように左右に指を向けて物でも貸す様に聞いてくる姿に恐怖すら抱きながら、首を振る。やっぱりコイツ倫理観崩壊してんな。


「いや、どうにかする」

「難しいって言ってなかった?」

「難しいだけで無理ではないぞ」


その言葉にエメディリルは得たりと邪悪に笑って見せる。


「はっはーん。強がっちゃって!シャルローゼを貸してあげよう。シャルローゼ、彼らと一緒に行ってきて」

「喜んで」


優雅にお辞儀する姿にカークは驚く。どう見ても華奢で戦いには向いていそうにない。

彼女に頼むにはあまりにも獲物がでかいのだ。


「え、でも」

「いた方が良いと思うけど。ぴかいち可愛いし、君より強いし、沢山荷物持てるし。最高でしょ」

「カーク。此処は素直に助けていただいたほうがよろしいかと」


背後でルリがやっと口を開いたかと思えばシャルローゼの手を借りるように言うのは驚いた。


「え、あ、うん。じゃあよろしく」

「よろしくお願いいたします」

「青鹿の角を2頭分よろしく。じゃ!」


ご機嫌を体現したように消えていく小さな背中を見て、カークは諦めたように笑う。


「1頭分じゃなかったんだな」


青鹿は別に希少な魔獣というわけではない。北に広がる平原の東西にある森の付近であれば意外と見つかるが、先に言え。いや、確認しなかったカークが悪いのだろうが、それを素直に認めるのが少々難しい。


「うん・・・・・・うん。行こうか」


返事を返す2人と共に街から出るべく、北側の門に向かった。




「それ、僕に関係ないよね」


花の香りが充満する部屋のソファに身を沈める華奢な彼は美しく嗤った。

相対する男は赤い瞳を泳がせた。

勿論、一筋縄ではいかないことは分かっていた。それでも、心のどこかでは簡単に事が進むと思っていたのだと今になって自覚した。


「僕はさー面白ければそれでいいの。君たちがどうなろうと知ったことじゃない」

「・・・・・・謝礼は十分にご用意します」


淀みない強欲に罪深く緑の瞳が細められる。

嘲笑だ。

心に湧き上がるのは不快感でも憤怒でもない、純然たる恐怖。

悍ましく、冒涜的な美しい化け物の感情を動かすことは勧められない。

それでも、この危うい道を、か細い糸を掴むしかないのだ。


「お金?うーん・・・・・・いまはお金あるんだよね。この間、若い竜を狩ってさ。鱗がいい値段付いたんだよ」


羨ましいでしょ。そう言って無邪気に笑う顔にどんな感情を向ければいいのか、クェルムは困った笑みを浮かべるしかない。

この美少年に若いとはいえ竜を狩るほどの今の姿では実力はない。

どれ程若くても竜を狩れるのは冒険者で言えばA級以上。相手によってはS級が相手をする。それほどまでに竜は他種族と隔絶した強さを持つ。

ではなぜ、この華奢な少年が竜狩りを出来たのか。その答えは少年の座るソファの後ろに控える茶髪の青年にある。

少年エメディリルの真価は戦闘能力にはない。彼の能力は他者を支援することによって発揮される。

だからこそ、茶髪の青年シディアを念入りに育てたのを知っている。


「それは、良かったですね」

「そうでしょ」


無邪気に笑う顔にクェルムは諦めてポーチから巨大な花を出す。異様な景色だった。小さな腰のポーチからヒトの顔程もある巨大な赤い花が出てきたのは誰もが驚嘆するだろう。

だが、この部屋にいる4人の内誰も驚いたりはしなかった。

ただ少年が笑みを深めただけだった。


「お!いいね、ロッアネッシェ!欲しかったんだよね~」


ご機嫌で彼はそれを持ち上げ背後に立つシディアに渡す。シディアもまた腰のポーチにその花を入れる。全く入る気配の無い光景だったが何の抵抗もなく、巨大な花はポーチに吸い込まれていった。


「それじゃ、何が聞きたいのかな?」


美しく微笑む顔にクェルムは祈りを込めて言葉を紡いだ。


シャルローゼ:白金色の髪をツインテールにした17歳くらいの少女。あまり笑わないが、怒っているわけではない。ラナンティアの店を良く手伝っている。辛い食べ物が好き。


シディア:ふわふわの茶髪の20代前半位の青年。柴犬みたいに穏やかで人懐っこい笑みを浮かべている。馬鹿力。

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