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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第二部

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268/272

266:カード


翌日の13時半。アンジールの宝石店に向かうと扉を開ける。


「……後ろの連中は何だ?」

「あ、仲間です」


アンジールに言われ振り返ると各々手を挙げる。


「ルリです」

「シンジュだ」

「オニキスと言います」

「クォーツだ」

「オパールと申します」

「セト」


それからアンジールを見ると肩を竦められた。


「大所帯だ」

「いいじゃないですか。ホベレス侯爵閣下は?」

「予定より過ぎて、14時半に来るそうだ」


どんだけ忙しんだよ。まあ貴族だしいいか。


「待たせてもらってもいいですか?」

「来賓室が空いているよ、そこにいろ」

「はーい」


案内された部屋に入るとそこは重厚なかつ煌びやかな雰囲気な部屋だった。

ベルベットの上に乗るダイヤモンド、彫刻されたルビー、床に置かれた巨大なアメジストの晶洞。

ケースの中には宝石でできた短剣が置かれている。


「わあ」


すげえや。


「カークはああいうの好きなんですか?」

「なんで?」


オニキスの問いにそう答えるとキョトンとした顔を見せる。


「だって、僕たちの名前、宝石ですよね?」

「ああ、そう言うこと?違うよ、ああ、うーん。宝石は好きだけど、科学的には知らないし」

「かがく」


ソファに座りながら続ける。


「うん。どうやってそう言う宝石になるかとか知らないし」

「なんか、特殊な条件とかあるんですか?」


隣にオニキスが座り、俺はその頭を撫でる。


「例えばオパールは時間をかけて骨とか木とか貝が宝石になるんだよ」


オニキスをはそれを聞いてオパールをまじまじと見る。


「いつか、オパールになるんですか?」

「ご主人様が望むなら」

「望まない、望まない。まあとにかく、詳しくはない」


店主のアンジールが紅茶を人数分持ってきて全員に座るように言う。


「座れよ」

「ああ、皆座って」


各々座り、紅茶が配られるとアンジールは溜息を吐く。


「まあ、一時間待っててくれ……」

「あ、はい」



時間が来て、その瞬間にばんと扉が開かれて全員が扉の方を見た。


「……どれがカークかね?」


現れたのは老年の執事と瑞々しい若さを持つ濃く青い腰まである長い髪、胸が空いた服、その胸元にはサファイアが輝いている。


「俺です、ホベレス侯爵閣下」


挙手して立ち上がるとほかの仲間も立つ。


「君かね?あの素晴らしいミッドナイトブルーサファイアを持ってきたのは?」

「はい」


慌ててホベレス卿のそばに寄り胸に手を当てお辞儀をした。


「ふむ、鉱夫ではないのか。礼儀正しい。ただそれは、ロイノーネ陽王国の礼儀だな?」

「仰る通りです、閣下。俺はロイノーネ陽王国の冒険者です」


ひとり座り用のソファにホベレス卿は座り、全員の顔を見渡す。


「ふむ、で?いくら欲しい?」

「実は」


俺は踏み込むことにした。


「オークションの会員権が欲しいのです」

「ほう。大きく出たな。どのオークショニアが出るオークションかね?」


俺は困った。酷く困った。そんなんわかるか。


「ゼノグエント様が出入りするオークションです」

「……そうか、高くつくぞ?」

「追加で宝石をご用意できます」

「ほーう。では、パパラチア。300カラット」


俺はポーチに手を当てそこから魔法でパパラチアを作り出し、それをホベレス卿の目の前に出す。


「……!?」

「どうでしょう?」


桃色と橙色の間の宝石を手に取りホベレス卿は目を見開く。


「……なんと、嘘だろう?どんな宝石でも持っているというのか?」


パパラチアサファイアは希少宝石だ。微妙な色合いでパパラチアとは認められないことが多い。


「ふむ……」


ホベレス卿はそれを老執事に渡し、それからカードを一枚渡してくる。


「これが、アカラッチャオークションの会員証だ。さて、魔法の理由を教えてくれないか」

「なに、なんですって?」

「ここまで大きなパパラチアは魔法で作るほかない。だが、ヒトの魔法では作れない、となると君は神代魔法を扱えるということだ」


うわ、まじか。


「君の事は他言しない。君も命が惜しければそんな魔法が使えるということは内緒にした方がいい」

「はい」

「このパパラチアは貰っても問題ないか?」

「勿論です、閣下」

「ふふ、皇帝陛下が喜ぶだろうな」

「そうですか」


興味ない。そんなことより、


「次のオークションはいつですか?」

「今日の21時。場所はカードの裏に書いてある」

「はい、ありがとうございます」

「21時開始だからな?20時には会場入りしていないといけない」

「はい」


注意を受け頷くと全員立ち上がる。勿論、ホベレス卿もだ。


「裏の商品を取り扱っている以上、下手な口出しはご法度だ。そのカードで入れるのは3人まで。選別をしろ」

「だって」


そう言って仲間を見るとセトが前に進み出る。


「俺は行きたい。古竜を見分けられるしな」

「えっ私はカークと離れたくないです」

「僕も!僕、竜人、古竜を見分けられます」

「ご主人様は私を置いて行ったりしませんよね?」

「カーク卿。私は役に立つと思うが」

「俺は半竜人だしなあ。見分けはつかん」


なら、セトとオニキスかな。


「セトとオニキス。一緒に来てくれるか」

「よろこんで!」

「よっしゃあ!」


がっくりと項垂れる4人に頭を下げる。


「宿屋で待っててくれ」

「はいはい」


クォーツの投げやりな態度に不安を覚えつつ、俺はホベレス卿にお辞儀をした。


「ありがとうございます」

「いい、冒険者の顔つなぎだと思えばな。ふふ、若い頃を思い出す。あの頃はいつも輝いていた。共振もよくしていて、楽しかった」

「きょうしん?」

「ああー……難しいんだ。晶竜人はお互いにお互いの宝石を共鳴で鳴らすことができる。それでコミニケーションをとったり、言い表せないんだが、まあ、うん、心地いいんだ」

「へえー」

「花竜人で言うところの花を合わせるみたいな、そんな感覚」


もっと分からん。


「まあ、オークションを楽しんでくれ。ゼノグエント様がいらっしゃるかは、運しだいだ」

「はい。それでは失礼いたします」

「ああ」


扉から出て行くとアンジールがこちらを見た。


「どうだった?いくらで売れた?」

「内緒です」

「そうか……まあ、いいサファイアだったからなあ、高額だろうな。定期的にうちに卸してくれないか?」

「忙しいんで、無理ですね」

「そうか……そうか。また気が向いたら来てくれ」

「はい。ありがとうございます」


アンジールの店を後にして宿屋に向かい、各々の部屋に戻ると俺は深く溜息を吐く。


「はあ」


そうか、魔法で物を作れるのは神代魔法なのか。道理で以前は出来なかったことが出来るようになったわけだ。

杖を作ったりとか、平然としてやっていたが、あれはヒトではありえないのか。

金貨の増産でも考えたが、ばれたらあとが怖い。不死牢行きになりかねん。

宝石を大量生産してもどうせ値崩れを起こす。

それくらい借金は膨大なのだ。

ゼノグエントを捕まえたいが運次第。後ろ向きになりかけるが、大きく一歩を踏み出せたと喜ぶべきだ。


俺は、溜息を飲み込んで燕尾服を用意した。



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― 新着の感想 ―
現世でも人工宝石の方が天然より品質が高いなんて事も出てきてますしね。値段は天然の方が当然高いから偽物も多く出回ってるとか。
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