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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第二部

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254/272

252:対エメディリル 1

吹雪く遠目からでも判るほどそこは荒れていた(寒いので途中で指輪をつけた)。

吹雪の中、時折爆発が起こりちらほらとヒトが飛ぶ。


「ひぇ」

「あれがエメディリルがいる場所だ」


そう言われるや否やぽいと投げられ、俺は飛翔する。

ああ、風が生ぬるい。本当は極寒なんだろうなあ。


「ぐえああああああああああああああああああ」


重力に逆らわず爆発が起こる地面に向かって落ちて行くと何の抵抗もなく、否、カークは抵抗したが、意味もなく吹雪の中地面がへこんだ雪原にずんと落ちた。


「ん?」


エメディリルの声がして俺は雪の中から起き上がり積もった雪からあたりを見渡した。


「カーク?カーク!」


わああ!!っと大声を上げてエメディリルがこちらに走ってくると俺の首に抱き着いた。


「カーク!!どこ行ってたの!?心配したんだよ!!」

「メディ、ごめんな」


エメディリルを抱えて背後を振り返ると憮然とした顔のゼスティレイルが立っていた。


「エメディリル。もういいだろう」

「カークが戻って来るならもういいよー」


呻き声がたまに聞こえる空間で俺は平然とエメディリルを降ろす。

ゼスティレイルが悲鳴交じりに叫ぶ。


「カークに損害賠償を請求したいくらいだっ!!」

「あっはっはっは。ヒトが死んだくらいで」


エメディリルの攻撃威力は凄いが死んだのはヒトだけ。

こんなの軽微な損傷じゃないか?

エメディリルは怪訝そうな目でこちらを見上げゼスティレイルも心底驚いた目でこちらを見ている。


「君、どうした?」

「え?」


何を驚いているのだろうか。何を言われているのだろうか。


「カーク?ゼスティレイルに何かされた?」

「ん?なんでだ?」


エメディリルに聞くと彼は俺の腕を叩く。


「あんなに愚かしいほど優しくて、ヒト寄りの性格だったのに。どうしたの?」

「え、あ……」


本当だ。なんで、ヒトが死んでもどうでもいい感覚だったんだ?

ゼスティレイルが顎に手を当ていう。


「神になった弊害か……感覚がおかしくなっているんだ」

「神?ああ、目が金色だね。邪神になったの?」


エメディリルに覗き込まれた目を瞬かせ俺は笑う。


「蛮神になったんだ」

「ばんしん。どうやって?」

「邪神の神性を持っていて、善神の加護を得た者が成れるもの。それが蛮神」

「泥の神性とあと善神の加護って何を持ってたの?」

知識(ダアト)のセフィラだったから……」

「ああ、それが加護判定だったんだね」


エメディリルはぱちんとウィンクする。


「ね、ヒトを特別視するのって難しいでしょ?矮小なんだよ。基本弱くてつまんない奴ばっかだし」

「ああ……そうか、こんな感覚だったんだなぁ」


辺りを見渡して、転がっている凄惨な死体を見ても蟻の死骸が転がっているのとあまり変わらない感覚。

それを何とか、ヒトだった時に戻そうと努力したが、上手くいかない。

今仲間に会っても、果たして、以前通りの仲でいられるだろうか。


「ね、強くなったの?」

「え?どうだろう」


エメディリルは下がり戦鎚を振り、こちらを見上げた。

おっと嫌な予感。


「おい、もういいんじゃないのか?」

「だって気になるじゃーん」


ゼスティレイルが制するがエメディリルは戦鎚を振り上げた。

お遊び程度の速度。だが、それは明確な殺意を持って振り上げられたのだ。

咄嗟に半歩下がって避けるとエメディリルはその美貌に嬉しそうな笑みをうかべる。


「うおいぃ!?」

「ほらほら!!」


エメディリルは純白の翼を2対出して速度を上げて突進してくる。

ゼスティレイルは咄嗟に逃げたが俺はそれを正面から受け、振り下ろされた戦鎚を掴んだ。


「ふーん」

「本気、出すか?」


エメディリルの速度についていける。これはいけるのでは?

傲慢な慢心が胸を満たし、それを聞いたエメディリルはにたりと嗤った。


「いいねえ。でも半分くらいでやれそう」


ずずっとエメディリルの2対の翼が黒く染まる。

そして強欲な緑の目が爛々と輝く。


「そおぉれ!」


神速の戦鎚が鼻先をかすめる。

ロングソードを抜き踏み込む。

下段からの切り上げ。

それは神速に達し、エメディリルの頬を切る。

それに気づいたエメディリルは羽ばたいて後ろに下がり、腰を落とした。


「ふーん」


戦闘態勢が本気だ。

調子に乗ったなと冷汗をかく。


「神になったのは本当だけど、信仰が足りてない。神族の欠点だね。“賭け”してみる?」

「“賭け”」

「まて!殺す気か!?」

「神に成り上がったエルデン・グライプがこの程度で音を上げるわけないじゃない!!ゼレル煩い!」

「あのなあ!」


冷静なゼスティレイルと興奮気味のエメディリル。

俺はロングソードを構えて口を開いた。


「いいよ。“賭け”、しようか」

「ルールは?」

「教えてもらえるか?」


エメディリルはその体勢のままにこやかに答える。


「簡単だよ。自分が持っている、ダイスででかい目を出した方が勝ち。出した数字分を倍数にした数だけ能力値が伸びる」


あ、やば。

エメディリルは“賭け”の大罪。しかも第三世代の軍用人造人間。4800歳は超えているのだし戦い方は慣れている。その上で古竜の能力値。それに、かける?あまりにも無謀な戦いだとやっと気づいた。

今自分自身がどれだけの能力値を持っているかなど知らないのだ。神になったと言われても実感は、ほぼない。


「行くよ」


エメディリルが戦鎚を振り下ろし、合図する。

瞬間、脳裏に数字が浮かんだ。

その数字、“100”。

エメディリルの方を見るとその頭の上に88の数字が浮かんでいる。


「え、嘘だろっ!?100面ダイス!?低級の、成りたての、神族ごときが!?」


ゼスティレイルが悲鳴染みた声で叫ぶ。

一方でエメディリルはにんまりと嗤う。


「いいねえ!!いいねえ!!」


ぶわっと風を切って吹雪を裂いて空に舞い上がったエメディリルは一息に下降してくる。


「【三竜牙撃(バルティズ・パーナ)】」

「【聖犀桜重盾(イトンラト)】」


ガラスがひび割れる様な音が三度響き、展開した半透明の盾三か所に罅が入る。


「エメディリルの【三竜牙撃(バルティズ・パーナ)】を防いだ!?」


ゼスティレイルが叫ぶがそれにかかずらっている場合ではない。

羽ばたきながら空中でもう一度戦鎚を振り上げるエメディリルを認めるとこちらも攻めに賭ける。


「【闇燕椿斬撃(クラッノユレア)Ⅹ】」


闇色の斬撃が10個飛び、エメディリルが目を見開く。

その小さな体を斬撃が裂き、血が零れ、羽根をまき散らしながら地面に落ちる。


「あはっ!」


純白の雪原を赤く染め墜落したあと上がった声は哄笑だった。


「あははははは!!いいねえ!!半分じゃ足りないかなあ!?」


ばっとエメディリルが両手を広げると4対の漆黒の大翼がその身を大きく見せる。


「全力を見せてあげる!ほらほらほら!!【火の下で癒される(ラファエル)】!」


血だらけだった小さな体が癒されて、それと同時に戦鎚を手放すと空間から戦鎚を新しく取り出す。

あの時、ハデスと相対したときに使った戦鎚。


「【明けの明星(ルシフェル)Ⅹ】」


50mほどの巨大な光球が吹雪の中で眩い光を放って浮かび上がり、それが一瞬でバラバラになり俺に向かって一斉掃射される。

右目が熱い。

頭の後ろに片手を伸ばして眼帯の結び目を外して右目の眼帯を外し、その輝く目を晒す。

ちりりとした殺気がゼスティレイルの方から向けられる。

ゼスティレイルが叫ぶ。


「【幻聖の声を響かせよ(ガブリエル)Ⅴ】」


頭痛がするほどの大音声の讃美歌が響きわたり、それを押すように掃射された輝く弾丸がこちらに向かってくる。



俺はそれを見て、聞いて、貪欲に笑った。





※TRPGやってる身としては、100はファンブルな気がする……

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