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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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242/272

240:〈展覧〉 3

10階層目の廊下は何も展示されていなかった。


「ん?竜がいるんじゃないのか?」

「飛竜と地竜がいるはずですよね」


オニキスがそう言い、廊下の先を見る。

そして地響きがなる。


「なななななに!?」

「地竜が走ってきます!」


ルリが構え、シンジュが矢を放つ。

それでも構わず鱗を煌めかせた鹿の地竜が真っ直ぐ走ってくる。


「キュイイイイ」


意外と鳴き声可愛い、なんて思う間もなく地竜の巨体がカークを襲う。

が、剣で角を押し返す。


「ちょっとこれ、狭くないか」

「頑張れ」


オニキスが魔法を唱えクォーツは応援してくれる。


「【棘槍Ⅳ】」


ひゅんと4本のとげとげの槍が勢いよく地竜に突き刺さる。


「ギュイイ!!」


その叫び声に呼応するように羽ばたくような音がする。

上を見ると、飛竜が口を開けて炎を口にためる。


「うわまじか」


魔法の盾を発生させて頭を守ると次の瞬間、頭上に炎が広がる。

熱さは感じなかったが精神的に威圧感はある。

羽ばたく飛竜は火炎が効かなかったことに苛立たしさを感じたのか突進してくる。


「100LVか。肩借りるぞ」


クォーツはカークの左肩を踏んで跳躍し飛竜の頭を切り落とす。


「【着火】」


オニキスの一言で地竜に刺さっていた棘の槍が燃え地竜が燃え盛る。

が、鱗に傷ひとつなく、つるりとしている。

しかしながらダメージはあったようだ、足がふらつき角のちからが衰えた。

横に落ちている飛竜を横目に斬撃を飛ばす。

真っ二つになった地竜はばたりと両側に落ちる。

内臓が覗くグロテスクな光景に辟易しながらも剣をしまう。


「そっちの鱗剥いでくれるか」

「はい」


ルリとクォーツが飛竜の方へ行き、角を切り落とし、牙を抜き、鱗を剥がす。

それを眺める間もなく地竜の方をひっくり返す。

ぐしゃりと内臓が潰れる音を聞いて鼻にしわを作る。

血の匂いが濃い中で鱗を剥がす。

オニキスが角を断ち、シンジュが牙を抜く。

バリバリと鱗を剥いでいき、反対側の体をひっくり返す前にオニキスとシンジュを見る。


「ひっくり返していいか?」

「こっち側の牙は抜きました」

「じゃあ、ひっくり返すな」


よいしょといいながら右側の体をひっくり返す。

鱗をバリバリと剥がしきらきら煌めく黄金の鱗は綺麗だった。

飛竜の方は銀色だった。


「何枚かなー」

「こっちは46枚だ」

「こちらは40枚ですね」

「綺麗に剥げたのがでかいな。よしよし、まとめて売ろうかな」

「〈展覧〉の鱗の依頼があったよな」

「でも受けてないし」

「確かに」


まあどうなるか知らんが、冒険者ギルドがどうにかするだろう。

高く売れるといいなあと思いつつ皮を剥ぐ。

茶色の皮を2枚ポーチにしまい、飛竜の白の皮もしまう。

纏めて剥いで一仕事終えると全員で奥に進む。

魔法陣と水晶が浮かぶテレポート場所に到達すると全員で触れる。

次の瞬間、白い部屋に通される。


「あ、え?」


周りを見渡し、テーブルの向こうで椅子の背もたれに手を置く風刻(ふうこく)の君が立っている。


「風刻の君?なんで?」

「そこの、彼に呼ばれた」

「は?」


くるりと振り返るとクォーツが立っていた。


「なんで!」

「……神性が欲しかった。けど地哭(ちこく)の君は信頼できない。それなら、陛下と同じ神性ならと考えてた」

「危険なんだって!!」

「だが、このままじゃお前を守れない」

「守る必要なんかない!エルデン・グライプだ!死んだって生き返る!」

「イレジュナはどうだった!」


都市の名前を言われて平和な街の光景がフラッシュバックする。

クォーツはたたらを踏むカークの肩を掴む。


「俺だって軍人だった。けど、前線より向こうに行ったことはない。殺してきたのは軍人ばかりだ。同期はそれでも、心を壊した」


息を吐くクォーツは怒りを耐えている様だった。


「戦争で一般人を殺すことは稀だ。だがないわけじゃない」

「俺は、平気だ。大丈夫」

「無理をさせたいわけじゃない。もう限界だ。これから先、薙王国や鳴王国の戦功を聞く貴族も現れる。他国から従軍するよう言われる可能性もある。その時、罪をひとりで被る必要はない」


カークは閉口した。


「でも、誰かに押し付けるものでもないだろう」

「一人で背負いきれなかっただろ」

「うぐ」


壊れかけた事実を突きつけられると強くは言えないが、それでも戦争の苦痛を味合わせたいとは思えない。


「神性を受け取る。その後でLVをよこせ」

「それはだめだ。危険が」

「危険を渡ってこそだ。神性を深めれば、200LVを超えられるんだってな」

「オニキスがそうだったし、エイボンもそうだった」


唸っている間にクォーツは風刻の君に手を差し出した。


「神性を受け取ることにリスクはあるぞ。いいんだな?」


風刻の君の警告にクォーツは頷く。


「そうか」


風刻の君はクォーツの手を握る。

ぱっと離され、風刻の君は冷淡にクォーツを見た。


「分かるか。私たちの神性は重い」

「……はい」

「慎重に神性を深めろ」

「はい。ありがとうございます」


クォーツが頭を下げると白い部屋が霧散し草原の青白い小さな城にでる。

カークは頭を抱えてクォーツを見る。


「LVいるか?」

「もらえるか」

「え、何かありました?」


オニキスとルリが不思議そうにそう言う。

カークは言葉を選んだ。


「クォーツが風刻の君の神性を受け取った」

「めでたいことですね」

「うーん」


まあルリはそもそも水獄の君の創造物だし、忌避感はないのだろう。

だから曖昧な返事をしてしまう。


「だがこれで全員神性持ちになった。かなり有利に立ち回れる」


シンジュも塊屍候の神性持ちか。確かにシンジュは塊屍候の創造物だ。


「じゃあ、LV分けるか」


クォーツの影に立ち、能力表を左手に出す。

職業(クラス)の欄を覗き、スクロールした。


「軽戦士とかは?」

「いいんじゃないか」

「じゃあ、軽戦士100LVと」


さらにスクロールし何かいい職業はないかと探す。


「これは?」

「ん?」

「竜騎士」

「いや取れるかな?」


前提職業がわからん。

そこで、夕焼けの中で本を取り出しパラパラ捲る。


「なんだそれ」

「ニヒジェケスさんがくれた。円王陛下の本」

「……とんでもないな」

「なんかもういらないからいいんだって。竜騎士、竜騎士……前提が剣士か戦士50LV、技能は……特にないかな」


ぱたんと本を閉じて、首をかしげる。


「でも軽戦士とか軽剣士は騎士職になれないんだよな?」

「竜騎士は別なんじゃないか?」

「特に取れなくなる職は書いてなかったんだよな」

「じゃあ、竜騎士取るか?」

「いいのか?」

「ああ」

「剣士100LV、軽戦士100LV、軽剣士100LV、竜騎士100LV」


全部念じて能力表の数字が減るとクォーツは自身の能力表を出す。


「確かに。できればもっとLVが欲しい所だが」

「でも、なあ。危ない橋はわたりたくないしな」

「慎重に神性を深めるように言われたしな」

「今日はこれくらいにしよう」


そう言って夕焼けの中、王都への道を走る。



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