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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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144:作ってくれるってよ

暑くて更新が遅れました。誠に申し訳ございません。

暑いです。皆さんも体調には何卒お気を付けください。

夏の間は更新が遅れることが多々あります。

誠に申し訳ございません。


「刃の幅は6cmで長さは90cm。薄さは0.6㎜。それを4本頼む」


無茶苦茶な注文を始めたレラにカークは瞠目したが、鍛冶屋の男は違った。

それを聞いて、何か合点が言ったかのように頷き、息をつく。


「そりゃ儂にしかできん。そんで素材はどうするだん」


くるり、とレラはカークを振り返った。


「どれだけ金を積んでくれる?」

「何とも堂々とした要求だなあ」


レラの隠さない姿勢に苦笑しながら、チームの財産と出せる限界の金額を考えた。

滞在期間は分からず、冒険者業というのはその日暮らし。

全財産を費やすことは流石にできない。


「金貨1000枚で4本分買える素材ってありますか」

「豪気じゃん。妥当なのはオリハルコン。ただ、強度に不安が出るでね、どうせなら錬金鍛冶にして鱗を使うかん」

「錬金鍛冶、ですか」


聞いたことのない単語に首を傾げると男は説明をしてくれた。


「錬金術で素材を溶かすんだわ。今回はティユレイの鱗。そんで、溶かした溶液を固めて鍛冶に使うじゃんね」

「錬金術の応用という事ですか」

「そうそう。まあ、どんな素材でも鍛冶に使えるっちゃあ聞こえはいいけど、強度に問題が出るでね。あんません」


強度に問題が出るというのは、どの程度なのだろうか?

カークは悩みながらも疑問を口にした。


「どれくらい差が出るものなんですか?」

「そうだねえー」


男はうーんと悩みながらカウンターの裏にあるアーチをくぐり、「この辺にしまったら!?」などと叫びながらばたばたと動き始め、数分もすると剣を2本持って現れた。


「こっちが普通に打った剣。こっちの薄く模様の浮いている方が錬金鍛冶で打った方だね。どっちも同じ鋼を使っとる」


まずは普通に打ったと言う剣を受け取る。鋼で出来た剣は重く、頑丈そうだ。

もう一本の剣を受け取る。同じくらいの重さだ。

きょとんとしながらカークは鍛冶屋の男に剣を返す。


「錬金術で溶かした方は少し軽くなる。そんで、魔法伝導率も良くなって、同じ素材を使っとってもよりいい付与魔法を付けれるようになるじゃんね。だもんで、強度が下がっても意外と需要があるんだわ」

「あー強度が下がっても【頑強】の付与魔法をかければ解決って事ですか」

「ん」


カークは一通りの説明を聞いてレラを振り返った。

レラはどうともいえない表情を浮かべており、錬金鍛冶に反対なのかと思ったが、次いで紡がれた言葉に納得した。


「素材がな。ティユレイの鱗だから」

「ん?違うのがいいか?」


鱗は嫌かと問うと彼は曖昧に笑い、覚悟を決めたように鍛冶屋の男に言う。


鉄葉(クルオ・リーフェ)より上はないか?」

「冗談だら?鉄葉より上なんてうちにゃおいとらんわ。あれより上なんてクィニャーゼ聖鉄でも探しとるだかん」

「テヘレジェイ煌金ほどじゃないだろ」

「・・・・・・どれくらい凄いんだ?」


まったく話についていけなくなったカークは額に手を当てて考え込む。

レラが振り返り、口を開く。


「鉄葉は俺に支給されてた剣の素材だ。クィニャーゼ聖鉄は緋緋色金(ヒヒイロカネ)やロアンド剛銀に匹敵する希少金属」


それでもピンとこないカークに鍛冶屋の男が続ける。


「LVでいえば鉄葉は90。クィニャーゼ聖鉄と緋緋色金は100。ロアンド剛銀は120。テヘレジェイ煌金は150だね。希少金属の上、扱える鍛冶屋も職人も少ないでね。陽王国じゃ、うちくらいだわ」

「え?え?ウソだろ?あの剣そんなに凄い物だったのか??」


カークが驚いてレラに言うとレラは何処か自慢げに笑う。


「あらゆる国には特産品がある。花竜帝国は植物系の素材の宝庫だ」

「ひええ・・・・・・」


カークが肝を冷やしていると鍛冶屋の男が顔を顰める。


「ティユレイの鱗が不満なら、後は迷宮でクィニャーゼ聖鉄クラスの鉱物を採ってくるか・・・・・・晶竜帝国で買い付けてくるかしかないに」

「晶竜帝国か」


晶竜帝国がどれだけ遠いか分からずカークは首を傾げた。


「遠いのか?」

「遠い。陽王国の北の海を1ヵ月で越えるか、陸地から行くなら円王国経由で漣王国、亥王国を継いで2ヵ月かけて目指すかだ。お前の魔法があっても、目印がない上に計測できる者がいない状態ではあたら迷うだけだしな・・・・・・」


確かに。花竜帝国での旅ではノアがノホルグラ山脈を見て距離をおおよそで測っていた。

その案内役がいない状態では、方向が分からなくなるだろう。


「とりあえずティユレイの鱗で錬金鍛冶をしたらどうだん」

「ティユレイの鱗で剣を作ってもな・・・・・・」

「生体素材はLVに依存しとるでね。鑑定させるけど、パッと見では前回よりLVは高そうだし最低でもLV85は確実だに?そうそう困らんら」


レラは鍛冶屋の男の説明、説得を聞きカークを見た。

カークは肩を竦めた。武器の良さというのは本人の納得によるものも大きい。


「鋼で作るよりは軽いだろうし、ティユレイの鱗で作ってもらって、素材が手に入ったらそれで追加で作ってもらうのもありだろ?どの道、剣はないんだし」

「まあ、それは、そうか。だが」


とレラは困った様に眉を下げて変な顔をして見せる。


「LV85以上の素材を使った武器に魔法付与が出来る人物に心当たりがない」


確かに。カークにも心当たりはない。全くない。


「LV84のティユレイの角のナイフも魔法付与をしてないしなあ。確か、魔法付与:Ⅳ以上かLV40以上の魔法付与師じゃないと無理なんだったっけ」


頷くレラに鍛冶屋の男が鱗を箱に移しながら口を挟む。


「そいだったら、おるに?確実にひとり」

「え?いるんですか?」


LV40以上の存在などカークからしたら伝説レベルだ。いや目の前にはLV85以上のティユレイの素材があるので、何ともありがたみもないが。


「ラナンティア様がしてくれるに。まあ、値段は張るがね」

「ラ、ラナンティアさんは何でもできるんですね」

「そりゃなあ。あの方は特別な方だ」

「へえー」


感心しているとレラが口を開いた。


「それなら、ティユレイの鱗で作ってくれ」

「ん。任せりん。そんで料金だけど1本金貨100枚で作るでね。4本で金貨400枚。お買い得だに」


お買い得なのだろうか?値段が高くて正直感覚がマヒしている。

ただ、彼が嘘つきではないことはよく分かっているので、カークは値段に苦笑しつつも頷く。


「なら、それでよろしくお願いします」

「任された。3日で出来るでね明々後日にとりにこりんね」

「はい」




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