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エルデン・グライプ~「不滅者」は混沌の世界を狂気と踊る~  作者: 津崎獅洸
第一部

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103:狂乱


カークは飛行する竜に難なく近づくと剣を振りぬき竜に突き立てた。


「っぐぎゃああ!?」


悲鳴を上げながらも飛行を続ける竜。


「『暴れるのうざぁあい』」


剣を持つ片手とは逆、左手でカークは竜のその灰銀の鱗を無慈悲に剥がし始めた。


「『おっ!ちょっと楽しいじゃーん?』」

「ぎがっぎゃぎっ!」


竜はとうとうその巨体を地面と激突させる。

幸い、城壁の内部ではなかったが農村部へと直撃した。畑が抉られて土煙を上げる様は農民にとって絶望を表するに相応しい。

土に塗れながら恨みがましく竜は怒鳴る。


「離れろウジ虫が!」

「『あ、言葉遣いがなってなーい。減点!』」


鱗が、強固で堅牢なその鱗がヒト如きのその細い指で腕で難なくばりばりと剥がされる。

まるでニワトリの羽毛でも毟るように。


「ひぎゃああああ!!」


痛みに耐えかねて竜は悲鳴を上げてのたうつ。

それでもカークは止めなかった。

ばきばき、ばりばりと鱗を剥いで回る。

そして、悲鳴さえ上がらなくなったところで飽きたのかカークは剣を抜いて竜の上から降りると剣を腹へと突きたてた。


「ぴぃぃぃいぎゃあああああ!」

「『痛い?』」

「いだ、いだぃ。やべでぐれ!!」


竜の懇願にカークは満面の笑みを浮かべて頷く。


「『分かった』」


剣はそうして抜かれたが、ぼたぼたと血が溢れる。

それを見て、カークは涎を垂らした。


「『あー美味しそう』」


そして、激痛に見悶える竜の傷に口を近づけて血を啜る。

魂を削り取るような啜り取る様な冒涜的な音が辺りに響く。竜の藻掻きはだんだんと小さくなり暴れていた尻尾も静かになって行く。

この間ほんの30秒。

30秒血を啜られて、竜はその巨体に見合わずに力を喪っていた。

竜程の巨体であれば血の量は尋常ではない。だというのに、たった30秒啜られただけでこれほど力を喪う事があるだろうか。


「『うーん。まあまあ』」


口に付いた血を拭い、竜から離れる。

ぐったりと力を喪い竜は黒々とした目を虚空へと向けている。

それを見てカークは肩を落とす。


「『はあ。虫程度じゃ楽しくないや』」

「『なら、彼から出て行ってくれるとありがたいわね』」


振り返ると黒髪の女が立っていた。目立った容姿ではないがその目は黄金に輝き、雰囲気は妖艶そのものだ。


「『折角の泥の神性を遊びで壊されると困るのよ“地哭(ちこく)の君”』」

「『ああ、そんな、壊すだなんて!義姉(ねえ)さん。こんなのはお遊びじゃないか』」


心外だと抗議すれば彼女は首を傾けた。


「『“時虹公(じこうこう)”がこちらに目を向けているわ。わたくしは構わないけど、あなた、不味いのではなくて?』」


時虹公(じこうこう)”と言う言葉にカークは顔を歪める。

苦手な相手だし、頭が上がらないひとだ。怒らせるのはナンセンスだろう。

だが、我慢できなかったのだ。久しぶりの“泥の神性”。これを見過ごす手はない。


「『分かるだろう?“纏穣公(てんじょうこう)”。貴女だって遊びたいだろう?』」


子どもの悪戯に困った様に彼女は首を傾げて頬に手を当てる。酷く煽情的な仕草だった。


「『あらあら・・・・・・どの道もう、零れる頃でしょう。お止めなさい』」


彼女の声色から説得できない事を感じ取り、カークは口を尖らせる。


「『はーい。今回は、これくらいにしとくよ。僕の慈悲に感謝!!』」

「『少なくとも彼は感謝しているわ』」


彼女が微笑むとカークも微笑む。


「『そうだとも。それじゃあ、また』」

「『ええ、また』」


瞬間、カークの体は崩れた。

なんの比喩でもない。

肉塊にも及ばない、“泥”になり果てたのだ。


「『・・・・・・』」


その汚らしい泥を見下ろし、彼女は愛おし気に慈悲深く微笑んで、頭を下げた。


「『ああ、素晴らしいわ。貴方のおかげ。貴方のおかげなのよ』」


感嘆し、彼女はその泥の前で膝を付き汚泥へと口付けを落した。

優しく甘い恋人に向けるような口付けだ。


「『貴方の生末に栄光と混沌があらんことを』」


そうして口を離すと彼女は瞬き、目の色が緑へと変わる。


「はへ・・・・・・“纏穣公(てんじょうこう)”?」


口の中の砂利と血の匂いに辟易しながら女は辺りを見渡した。

動かない竜を見つけてびくりと身を竦ませて、それから困惑したように竜を突いたりしていると、背後から数人の足音が聞こえてくる。


「ひ、ひえ?」


竜が倒れているのだ、そりゃ、ヒトも来るだろと女はどうしようかと考える。

ここにいても出来ることは無い。

纏穣公(てんじょうこう)”に身体を貸している間の記憶など無いのだから。


「どうしよう・・・・・・」


だが、悩んでいる間に彼らは走って来た。

緑の髪の青年2人と赤い髪の青年、青い髪の女性と白い髪の少女、黒い髪の少年。

黒髪の少年をみて眉を顰めた。

この国でハーフエルフのように耳が少し長い者でかつ目が赤い者は、特別な徴であり、皇族かと思うが、こんなところにうろついているわけがない。

首を傾げていると、彼らのうち、赤い髪の青年と青い髪の女性が辺りを見渡しながら叫ぶ。


「カークさん!!」

「カーク!?」






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