98:おめめぱっちり
とんとんとんとん
音が聞こえてカークは身構えた。
目を開けたが暗闇が広がるだけで先はない。
どうしてだったか。ここは夢の中か?
寝ぼけた頭で必死に考えている内に音のした方から声が聞こえた。
「カーク?朝ですが、まだ寝ていますか?」
ルリの声だ。
ああ!そうだ、目玉を取られたので目が見えないのだった。
「それだけ言うとなんかおかしな感じだな」
だが、痛みが無いのでそう言う感想にもなる。
「ルリ!すまないが、部屋に入ってきてくれるか?」
言われてルリは数度ノブを回したが扉が開くことは無かった。
「カギがかかっています」
どうしますかと問われて、それはそうかとカークは気付く。
寝るときに鍵を閉めていたのだからそうなる。
「ちょっと待っていてくれ」
苦笑しながらカークはベッドから降り、床に手をついた。
部屋の構造はいたってシンプルだ。ベッドがあって、窓側に机があり反対側に扉がある。それだけだ。
なので、ベッドから降りて床を這い、壁を伝って扉に辿り着くと手探りで鍵を探す。
「あったあった」
がちゃりと鍵を開けて扉も開くと目を閉じたままそこにいるであろう、ルリに話しかけた。
「おはよう、ルリ」
「おはようございます。今日は随分ゆっくりでしたが、どこか体調が悪いのでしょうか」
素直な心配にカークは微笑みを浮かべそれから、ルリに事情を説明した。
「“地哭の君”にあったよ。それで、助けてもらった対価に目を取られちゃって」
「・・・・・・え?」
ルリの戸惑いはどちらに向けてだろうか。
地哭の君にあったという事に対する戸惑いか、それとも、助けられたという事に対する戸惑いか。
「それで、ルリに治して欲しいんだ」
「私の力で治りますか?」
彼女は心配そうにそう言うが、彼女力は折り紙付きだ。十分な実力を持っている。
カークは自信をもって頷き、促した。
「君なら大丈夫。頼んだよ」
「はい、わかりました」
彼女は納得したのかそれともお願いごとに弱い質なのか、カークの言葉に魔法を発動させてぱしゃりと水の玉を創り出してそれをカークに放った。
沁み込む、水の音と水。その中でカークは瞬いた。
瞬時に光が戻り、世界を見ることが叶うとカークは喜んでルリに抱き着いた。
「ああ!ありがとう、ルリ!!」
「っ!っ!カーク!これくらいなら私は幾らでもお役に立ちます!」
見るとルリは顔を真っ赤にして耳をぴこぴこと動かし、ふわふわの尻尾が暴れ散らしている。
はっとなって年頃の娘にはしたない真似をしたことに気づき、カークは慌てて離れて、謝罪した。
「ご、ごめん。ちょっと興奮して」
「いえ・・・・・・いいんです」
そっと離れてからちょっと待っていて欲しいと告げて直ぐに身支度を整えると取って返す。
「ええっと、朝食?」
「はい。皆さんは食べ終えてますが」
と言うことはルリは食べずに待っていてくれたのか。
「ああ、そっか・・・・・・悪いことしちゃったな」
「お気になさらず」
ルリの優しい凛とした笑みに救われながら廊下を歩いた。
「おはようございます、カークさん」
「おはようございます。遅くなってすみませんでした」
ゼトの言葉にカークも返事をして、席につくと颯爽と現れたウェイトレスに簡単な食事を注文した。
しかし、隣に座っていたレラはカークの顔をじっと見て訝し気な顔を見せる。
「それはいいが、なんだか目が」
「え?」
ゴミでも付いていたかと思って擦るが、レラは首を傾げてこちらを見たままだった。
「そんな色だったか?」
「緑だろ?」
生憎手元に鏡が無いのでわからないが、カークの目は緑だ。普通の葉っぱ色。
首を傾げるカークにレラも首を傾げた。そしてゼトも同時に首を傾げる。
三人で首を傾げているとカークの視線に気づいたオニキスが、苦笑した。
「僕にはちょっとわからないです」
次いでシンジュとルリにも目線を送る。
しかし、ふたりとも首を振るだけだった。
レラは首は何度も傾げて口を開く。
「なんだか黄味がかかって見えるんだがなあ・・・・・・」
「光の加減だろ?店内はあまり明るくないし、魔法光の下ではうまく見えないものだよ」
カークがそう言うとレラは納得したのかしてないのか分からない曖昧な顔でカークの料理が届くのを見ていた。




