第98話 事故物件②
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ブリーに貢がせた事故物件はサウスにある高級住宅街にあった。ハウスキーパーがいないと管理しきれないくらいの広さが有り、築数百年の割にはしっかりと手入れがなされておりかなり状態も良い。
「かなり立派なお屋敷なんですね、事故物件じゃなければ僕には一体幾らの値が付くのか見当もつきませんよ」
「王都でも一等地ですからね、恐らく大金貨150枚は下らないかと……」
「取り敢えず中に入って見ましょうか」
ハインがブリーから貰った鍵で一行は中に入ってみた。中に入るとセンサーでも付いているのか、真っ暗だった建物の中は、手前から奥に掛けて徐々にランタンで灯されていく。
「うわあ、凄く立派な大広間ですね」
「うんっ、これは格好良いっ」
入ってすぐの大広間はちょっとしたホテルのロビーの様になっており、両サイドからは中央へカーブを描きながら豪奢な階段が二階へと続いている。二階部分は吹き抜けになっており、天井からは水晶の様に輝く煌びやかなシャンデリアが吊り下げられていた。
とそこへ突然、吹き抜けの二階部分から禍々しい黒いオーラに身を包んだ男?が、飛び降りるでもなくゆっくりと舞い降りて来た。
『貴様ら誰の許可を得てここにいる、ここは私の屋敷じゃ……早々に立ち去るが良い』
脳に直接語りかけるようなその声は、明らかに人間のものでは無い。ローブの下から見えるその瞳は虚空であり、その顔には一切の肉が無かった。
「ユーゴ不味いわ〈リッチ〉よ!それも恐らく元はかなりの魔法の使い手だわ」
ユーゴらよりも経験の長いハインが咄嗟に叫んだ。普通のリッチでは通常この様な会話は出来ない、その時点で上位種の〈エルダーリッチ〉である可能性が高く、それだけこの世への執着が強い事を意味していた。
ハインはヴィクターの手を引き、入口の扉まで素早く飛び退いた。こう見えて冒険者としてもDランク以上の素質は持っているのだ。
一方でユーゴとアイラは特に逃げるでも無く、エルダーリッチと普通に対峙していた。
「あのー、つかぬ事をお伺いしますが、ここの税金ってちゃんとご自分で払ってますか?」
『何だと……?税金など払っておらんわ、そもそも請求など来ておらんっ!』
ユーゴはあろう事かエルダーリッチと普通に会話をしていた。普通の人間であれば会話をするだけで発狂してしまうエルダーリッチとである。
「税金を払ってないんじゃあ、あなたのやっている事は単なる不法占拠ですから、即刻出て行って貰うしかありませんねえ」
『ほう、戦士風情に何が出来る。このワシを追い出すだと?出来るもんならやってみ……熱っっ!!!』
ユーゴはアイテムボックスから取り出したポーションを、無造作にぶっ掛けた。ヒールポーションはアンデッドにとっては聖水の様なものである。
「もう避けないで下さいよー、勿体ないから」
バシャっ
『何を、熱っ!熱いっっっ!!!き、貴様ぁぁっっ!ジエリ様の十二番弟子であるこの大魔法使い〈サゼラック〉を舐めるなよっ』
サゼラックと名乗るエルダーリッチは屋敷内だというのに、あろう事か火魔法を盛大にぶっ放した。
『私にたてついた事をあの世で詫びろおっっ!!【極炎の嵐】ファイアストームっ!!!』
「火魔法か、じゃあー氷魔法の【永久凍土】アイスワールドっ!!」
『な、なにいっ!?氷の上位魔法だとおっ!!!』
ゴオオォォォ……ピキピキピキ、ピッキーーンッ
エルダーリッチの火魔法は完全に打ち消され、ユーゴの目の前の物全てが凍り付いていた。もちろんエルダーリッチごとである。
「ああっ、ちょっとやり過ぎちゃいました」
「うん、指輪してるもんね」
「ユーゴ、あなたいつの間にそんな魔法を……!?」
「あ、やっぱりこうなるんですね……私はもう驚きませんけどね」
「どうせ氷魔法では死なないでしょうから、ポーションをたっぷりかけておきましょう。流石にぼくも光魔法は覚えて無いので」
ユーゴは凍り付いているエルダーリッチの頭の部分を火魔法で少しだけ溶かした。
『ぷはぁーっ。待ってくれ!い、命だけは助けてくれっ』
「いや、あなたもう既に死んでるでしょ……」
『いや、魂だけは助けて下さい!何でもしますからっ、お願いします!!』
「ハインさん、こう言ってますけどどうしますか?」
「もう好きにして頂戴。エルダーリッチに命乞いされるとか聞いた事無いわよ……」
「ま、いっか。良かったですね!サゼラックさん。あ、そうだちょっと聞きたい事があるんですけど」
『はいっ!何なりと仰って下さいユーゴ様』
「はぁ、次回ブリーさんとお会いするの、私めっちゃ気まずいんですけど……」
かくして、ヴィクターの心労などお構いなしに、ブリーの事故物件はユーゴの活躍によりタダ同然でハインの手に渡ったのであった。
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