第93話 緊張と緩和
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「なんか最後は私がジエリに抱かれるまで、みたいな話になっちゃったけど大体そんな感じ」
「コリーさんにもそんな壮絶な過去があったんだね……」
アイラは悲しそうな顔をしていた。
「あれ、二人ともなんかしんみりさせちゃった?ほら言っても300年以上前の昔話だからね、今更なんとも思ってないし」
「僕らは寿命が短いんであんまりピンと来ませんけどね」
昔の話をした所為かコリーの雰囲気と口調が若干若返っていた。
「とにかく、私と一緒にいた頃のジエリは無茶苦茶だったわ。四六時中一緒にいたわけじゃ無いから分からないけど、他にも女はいっぱいいたしね。
トマス商会が直系って事になってるけど、他所にも子供は千人以上いるんじゃ無いかな、絶倫だったから」
「あの爺さん、とんでもないチャラ男だったんですね」
「私もそのうち愛想をつかしてさ、結局十年くらいで別れたって訳。まあずっと感謝はしてるし嫌いにもならなかったんだけどね。突然姿を見せなくなったのはジエリが百歳くらいの時かな?あの時も見た目はまだ四十代だったけど」
「コリーさんの話には出て来ませんでしたけど、クラウドさんが言ってた魔王っていうのは?」
「ああ、ビーストテイマーの〈ムツーゴロ〉の件ね。魔物を使役するのが得意な子がいてね、ジエリが面白半分でステータスを上げまくったらしいのよ。そしたら魔物の国を作るとか言い出して、自らを魔王とか言っちゃってね」
「ム、ムツーゴロ王国ですか……」
「ジエリはもうその子の事すら忘れてたみたいだけど、それから五十年もしたら本当に初代サヴァラン王国に魔物を引き連れて攻め込んできてね。当時私はSランク冒険者だったもんだから強制召集で駆り出されたって訳。
あの時は〈ファイアドラゴン〉とか〈ヴァンパイアロード〉とかまでいたから、かなりヤバかったわ、滅茶苦茶死人も出たからねえ。
ちなみにこの初代サヴァラン王もジエリの舎弟みたいな子で、ステータスはやたら高かったから百五十歳くらいまで生きたんじゃ無いかなあ?だってまだ今の〈賢王〉で確か七代目だもんね」
「色々無茶苦茶ですね、創造神が怒るのも無理は無いかと……ってか逆にそれと比べれば僕なんて何もしてないに等しくないですか!?」
「まあ、そう言われたらそうよね。ともかくクラウドが創造神の関係者だというのは間違い無いわ。今後奴がどう出てくるのかは私にすら想像も付かないけど」
「でもあの全盛期のジエリさんが、あっさり本に封印されたって言うんじゃあ、もう戦うっていう選択肢はぶっちゃけ無いですよね?コリーさんですらああなっちゃった訳ですから」
「アンタ意外と諦めが早いって言うか、結構傷付くことズバズバ言うのね……」
「あっ、なんかごめんなさい。決して悪気はないんです」
「分かってるわよ。まあ何かあったら私に声を掛けて、なるべく力にはなるわ」
「その時はお世話になりますっ」
「さて、ジョージにはなんて言ったら良いもんかしらねえ」
「父さんに伝えても結局は心配させるだけだと思うので、今回は僕に任せてもらっても良いですか?」
「息子のアンタがそう言うなら、私から何も言う事は無いわ」
「すいません、ありがとうございますっ」
コリーはそう言うとそのまま飲まずに帰って行った。ユーゴ達もなんだかドッと疲れてしまい、まだ大分時間は早かったのだが今日はもう店仕舞いにする事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
その日の晩、既に一戦交えたユーゴは布団の中で今日の出来事を思い返していた。
「どうしたのユーゴ、考え事?」
ユーゴの腕の中で一糸まとわぬアイラが優しい声で尋ねた。その間アイラの手はユーゴのスベスベした肌をくすぐるかの様に撫でている。
「うん、次クラウドさんに会ったらどうしようかなあって。闘って勝てない以上、話し合いで納得してもらうしか無いんですよね」
「ふーん、やっぱ私の事考えてたんじゃ無かったのね」
アイラの手は徐々に降りて行き、ユーゴの敏感なところにそっと触れる。
「はうっ。で、でも万が一の時のために二人の赤ちゃんが早く欲しいっていうのは、あ、あります」
「ふーんそうなんだあ、じゃあまだまだ眠れないよね〜」
アイラは布団の中にモゾモゾと潜り込むと、ネグロンの町を出る時にバーバラがこっそり耳元で教えてくれた絶技を、初めてユーゴに試してみる。
「◎△$♪×¥●&%#!?」
ビクンっ
ユーゴは思わずのけぞってしまう。初めて経験するアイラの絶技にユーゴは完全に骨抜きにされてしまう。もはやそれに抗いながら考え事をする事など不可能であった。
さっきまでクラウドの事でいっぱいだった筈のユーゴの頭の中は、完全にアイラで埋め尽くされる。そして二人は再び朝まで愛し合ったのであった。
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