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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第四章
85/102

第85話 カミーロ伯爵③

誤字、脱字、御指摘、特に感想 等もらえると嬉しいです。

ネグロン・カラシーナの件で、カミーロから直接御礼を言われたユーゴはようやく安堵した。語呂が良いという理由だけでネグロンの名前を商品に付けた訳だが、裏ではそんな事態になっているとは夢にも思っていなかったのだ。


接待主であるヴィクターはカミーロの話をうんうんと聞いていたが、一方でジョージはいつの間にかコリーと二人で話し込んでいた。


それは、人生経験のまだ少ないユーゴから見ても、まるでかつての恋人が再会したかの様な雰囲気だった。


(やれやれ、結局美味しいところは全部ジョージが持っていくんだから全く敵わないよね)


カミーロは心の中でひとりごちる。


「あ、そうだ。今日はカミーロさんがいらっしゃると言う事で、特別にご用意したカクテルが有るんですよ」


「えっ、私にですか?それは楽しみですね、是非お願いします」


「ユーゴさん、それ私にも下さい」


カミーロを誘ったヴィクターも当然それを飲みたい。


「ユーゴ、こっちにはマールを二つ頂戴」


コリーは気にせずマイペースにいつものマールを二人分頼んだ。


ユーゴがネグロン領主カミーロの為に、カンパリまで自作して作りたかったカクテルは、実際に世界中のバーで最も人気のあるカクテルの一つ 《ネグローニ》だ。


ロックグラスに大きめの氷を入れ、ジンとカンパリとスウィートベルモットを全て同量で注ぎ入れ、冷えて馴染むまでバースプーンで良くステア(混ぜる)する。仕上げにオレンジの皮を絞りかけて飾ればネグローニの完成だ。


「お待たせ致しました、こちらが〈ネグローニ〉という名のカクテルです」


「面白い名前だね。同じカンパリでも〈アメリカーノ〉よりも澄んだ赤で美しいね」


カミーロは早速ひと口飲んでみる。


「これは美味しいですね……ジンとカンパリがこんなにも相性が良いなんて、アメリカーノよりも更に深い味わい。そしてダイダイの皮の香りがカクテルにとても合いますね。名前も僕にぴったりだし、出来れば毎晩寝酒に飲みたいくらいですよ」


「ありがとうございます、そこまで言って頂けると造った甲斐がありましたよ」


カミーロと会話をしながらも、コリーにマールを出す事も忘れない。


「はい、お二人にはマールをどうぞ」


チューリップグラスに入ったマールの香りを嗅ぎ、おもむろに口に運ぶジョージ。


「これがあのコリーの火酒と同じ!?コイツはヤベえな……」


ジョージは初めてマールを飲んだ時のコリー同様、黙りこくってマールを飲み始めた。それを見ているコリーはどこか満足そうだ。


ユーゴは締めのカクテルとして、マールを飲み終わったジョージにもネグローニを出した。父はこちらも気に入ってくれた様子だ。


その日は最後にカミーロにマールを出して、接待は終了となった。因みにマールだけはコリーの許可なしには誰にも提供しない、と言う暗黙のルールをユーゴは決めていた。


ヴィクターのコネクションを持ってしても手に入れる事が出来ない、特別な〈ダークエルフの火酒〉に対するユーゴなりのリスペクトである。


ーーーーーーーーーーーーーーー


全ての客が帰った後、店の片付けをしながらユーゴはアイラに今朝の事を謝る。


「アイラさん、今朝は本当にすいませんでした。今日のヴィクターさんの接待の事で気持ちに余裕が有りませんでした。


いえ、正直言えば本当はアイラさんのことで頭がいっぱいだったんですけど、無理矢理仕事モードに切り替えたんです、ごめんなさいっ」


「ううん、謝らないで、本当はユーゴが正しいのは分かってたんだ。仕事を優先したのはお客さんの期待を裏切らないって事だもん。バーテンダーとしてユーゴは正しい選択をしたんだよ。私の方こそ子供過ぎてゴメンね」


二人は仲直りをした。


その日の晩、二人は寝物語に今朝の出来事を思い出していた。


「あのときヴィクターさんが僕を起こしに来なかったらと思うと、ゾッとしますよね。多分僕は今日も仕事を放棄してアイラさんを激しく求めていたと思います。ヴィクターさんからの信用も全て無くしていたんだろうなって…」


「うん、実は私も今朝はまたユーゴとすぐに一つになりたかったからとても悲しかったんだ。嫌われちゃったのかと思って……はしたないよね」


「えーっ嫌いになんてなる訳無いじゃないですかっ!僕はアイラさんの為なら自分の命だって惜しく無いですよ!」


「ゴメン、本当は信用してるんだけどね。最近のユーゴがあまりにも格好良すぎて、不安になっちゃったのかも……?」


鍛え上げられたユーゴの二の腕と厚い胸板にアイラの双丘が柔らかくのしかかるが、今夜のユーゴはそれくらいで簡単にとち狂ったりはしない。お互いの気持ちが一つに繋がっていると言う安心感は、ある意味肉体の喜びをも超越するのだ。


ユーゴはアイラにそっとキスをした。その日はキスをしているだけで幸せな気持ちになり、二人はいつの間にか深い眠りに就いたのだった。


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