第82話 カンストの弊害?
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肉体のステータスがカンストした若い男女が本能の赴くままに身体を重ねる、二人はその意味を全く分かっていなかった。
馬車で五日の道のりを、一睡もせずに一日で走り抜けるスタミナを誇るユーゴとアイラだ。結局二人はその日朝から晩まで何度も愛し合い、ついに家から一歩も出る事は無かった。
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次の日の朝、家の外から聞こえるヴィクターの大声でユーゴは目を覚ます。
「ううん……」
「すいませーん、ユーゴさーん、いらっしゃいますかーっ!すいませーん、ユーゴさーん!」
ユーゴは慌てて一階に駆け降りると、施錠を解いて扉を開ける。
「いらっしゃいます、いたーーっ!!」
「お、おはようございます、ヴィクターさんっ」
「一体全体昨日はどちらにいらしたんですかっ?例の件で相談したいってお伝えしてたのに……何処を探しても全然見当たらなくて」
「申し訳ありません。伯爵用のカクテルの試作をしていたら、旅の疲れが出てしまったようで、結局朝まで爆睡してしまいましたっ、本当にごめんなさい!」
「本当心配しましたよー、ユーゴさんが家から一歩も出ない事なんて今まで一度もありませんでしたからね。あれっ、でも爆睡していた割にはお顔がやつれている様な……」
「あれ、おかしいなー。まだ疲れが抜けてないのかなあ、アハハ。ちょっと顔を洗って出直して来ますね、一時間後にヴィクターズで良いですか?」
「は、はあ……分かりました、ではお店の方でお待ちしてますね」
ヴィクターも商人である前に一人の男である。何となくではあるが事情を察して素直に帰ってくれた。
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部屋に戻ると既にアイラは起きていた。シーツに包まり熱っぽい目でユーゴを見つめている。
「……」
「おはよう、アイラさん。コ、コーヒーでも淹れようか」
危うくユーゴは再びアイラの魅力に溺れかける。ヴィクターに会って現実に引き戻されていなければ完全にヤバかった。
コーヒーを五分ほどで二杯淹れて、再び二階に戻るとアイラが今度はジト目でユーゴを見ている。
「……」
「お待たせしましたーっ」
ユーゴはコーヒーカップをトレーごと、サイドテーブルの上に乗せる。
「昨日は一日中家に引きこもっていたから、今日はやる事がいっぱいですねーっ」
「……」
「あれっアイラさん?どうしたの?」
アイラはコーヒーに伸ばしかけたその手を戻すとプイっ、と小動物の様に再びシーツの中に潜り込んでしまった。
(えーーっ!僕なんか怒らせちゃった!?)
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〈アイラ目線〉
その日は朝起きるとユーゴが何やらBARでお酒を作っていた。軽く挨拶しただけのつもりが、いつの間にかカクテルの試飲をする事に。好みの味だったのでつい二杯も飲んでしまった、後から思えばそれがそもそものきっかけだった。
普段はなるべくそういう雰囲気にならない様に心がけているのだが、肉体のステータスをカンストしてからというもの、ユーゴはアイラで無くとも好きになってしまうくらい、生物学的にとても魅力的な雄に成長していた。
寝起きで下着を付けていなかった為、ユーゴの視線が胸の辺りに降りた時に、アイラも急になんだか恥ずかしくなってしまう。
そのまま求められるがままにそっと唇を重ねた。
キスをしてからのアイラは自分でも信じられないくらい大胆だった。そのままキスをしながらユーゴに覆いかぶさる様にして、二階のベッドへと連れて行かれる。
その後は無我夢中であまり覚えていない。ただひたすらに本能のまま互いに何度も求め合った。明日この世界が滅びても別に構わない、二人は本気でそう思っていた。
気が付いた時には次の日の朝だった。
隣を見るとユーゴはいなかった。ベッドの惨状を見て、昨日の出来事が夢ではなかった事をアイラは理解した。少し思い出しただけでも頭の中がユーゴで一杯になり、身体の芯が熱くなって来るのを感じる。
何処かに行っていたのかユーゴが部屋に戻って来た。今すぐにキスをして欲しいのにユーゴは呑気にコーヒーを入れてくるという。全く女心を分かっていない。
しまいには、昨日の余韻にまだ浸っていたいアイラを突き放す様な発言をぶっ込んで来た。昨日あんなにも愛し合ったというのに冷た過ぎる。ふてくされたアイラは再びシーツに潜り込んだのだった。
(やっぱユーゴはジョージさんと一緒で、お前が勝手に好きになったんだろ?的な感じなのかな……私はこんなにもユーゴの事が好きなのにーっ)
リア充の父の所為で、息子のユーゴまでとんだとばっちりである。
王都最強クラスの女戦士は、その日は完全にただの女の子になっていた。その後ユーゴはアイラの機嫌を直すのに丸一日かかったのであった。
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