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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第四章
80/102

第80話 グランドオープン②

誤字、脱字、御指摘、特に感想 等もらえると嬉しいです。

ブリーは名残を惜しむように、チューリップグラスに少しだけ残ったウィスキーの香りを嗅ぐと、それをグイッと飲み干した。


「いやあー、本日は堪能させて頂きました。私は特に最後に頂いたスモーキーなウィスキーが忘れられませんねえ」


「あのウィスキーの良さが分かって頂けるなんて嬉しいです、ブリーさんはかなりの通ですね」


「いえいえとんでもないです、ただの呑助ですよ。是非また友人を連れてお伺いしても宜しいでしょうか?」


「勿論です、ブリーさんならいつでも大歓迎ですよ。会員の方だけに渡しているこの特製のコインをお渡ししておきますので、使い方はトマスさんに聞いてみて下さい」


「おおーこれが例のコインですな、有難うございます」


ブリーが先に帰ると言うので、トマスとウィルも御見送りをする。トマスは歩きながら入り口付近でコインの使い方を丁寧にブリーに説明する。店内でのフランクな喋り方ではなく明らかに目上の人間に対する言葉使いだ。店外では王都一の商人トマスと言えども、上級貴族にタメ口で話すのは不敬罪に当たる。一流の商人であるトマスは当然その事をよく心得ている。ユーゴとアイラも入り口まで見送りに行くと、外には立派な紋章の付いた豪奢な馬車がブリーの帰りを待っていた。


何故か御者がメイドの格好をしているが、隙のない佇まいからかなりの実力者である事が伺える。恐らく護衛も兼ねているのであろう。


ブリーが馬車に乗り込むと、トマスとウィリアムは先程までとは違い深々と頭を下げ馬車を見送る。結局馬車が見えなくなるまで二人が頭を上げることは無かった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「いやあ、ヴィクターさんの驚いた顔ったら無かったですな。くくく」


ウィルとトマスがからかう。


「もぉーやめて下さいよ〜。本当心臓に悪いったらないですよー」


「ヴィクターはブリーさんがどんな人か知ってたの?」


アイラが素直な質問をぶつけた。


「ええーっ!まさかお二人ともブリーさんの素性を知らずに接客してたんですか?」


「ええまあ、とても立場が高い方なのは直ぐに分かりましたけど」


「はぁ、トマスさんとウィリアムさんも人が悪い…」


「あ、そう言えば!慌てて店に入って来ましたけど何かあったんですか?」


「ああそうだっ!えーっと、今ここにいるメンバーなら問題ないですね。実は……」


ヴィクターズの看板商品と言えば、酒以外の食料品関連で〈カラシーナ〉と〈コーヒー〉が挙げられるが、特に〈ネグロン・カラシーナ〉はオープン当初からのヒット商品である。


ネグロンの名前を冠している以上、商品の人気が出れば当然ネグロン伯爵の耳にした入る訳だが、カラシーナの発明でネグロンの町を一躍有名にした立役者のヴィクターに、その伯爵が会いたいと言って来たらしい。


本来ならばこちらから出向かねばならない所を、伯爵がたまたま王都に来る用事があるからという事で、先方自らヴィクターズを訪れるという話らしい。しかもその予定は三日後だ。


「ネグロン伯爵と言えば先の戦争の功労者ですな。なんでもジョージ殿がネグロンの町に居を構えたのも伯爵の勧めがあったとか……おっとウィリアムさんの前では〈蒼天〉の名前は禁物でしたかな」


流石はトマス、一流の商人だけあって情報通である。


「いえいえ、今となってはこんな素晴らしい孫を育ててくれて寧ろ感謝してますよ。もっとももう中々会う機会も無いでしょうがね」


「そんな方が来るとなるとやっぱ緊張しちゃいますよ、あっそうだ!伯爵をこちらに連れて来ても良いですか?接待をするなら、ここ以上の店は存在しませんからね」


「はい、ヴィクターさんが連れて来られる方ならどなたでも大歓迎ですよ。僕も一度ネグロン伯爵にはご挨拶しておきたかったですし」


「ああ良かった、ユーゴさんありがとうございます!それにしても伯爵どころか、既に宰相の〈ブリード〉公爵まで来てるなんて本当とんでもない店ですよね此処は」


「ブリード…?えーっ、ブリーさんってもしかしてこの国の宰相だったのっ?」


「まさかそこまで大物だったとは、先に知らなくて良かったですよ」


「王都で《ブリード・モー》公爵を知らない人なんて逆にほとんどいませんよ、実質この国のナンバー2ですからね」


「まあ、この店では一切の身分を持ち込まないという条件でお連れしましたからね。プライドばかり高い田舎の貧乏貴族では中々こうはいきませんでしたよ。おっと今のは聞かなかった事に……」


「相変わらずトマスさんは毒舌ですなあ、アッハッハ」


「えーっ、ウィリアムさんだってそう仰ってたじゃ無いですか」


「まあまあ、知らない誰かの悪口はそのくらいで。じゃあヴィクターさん、伯爵が来る日はお席を三つくらい空けといた方が無難ですね」


「はいっ。すいません、そうして頂けると助かります」


「狭い店ですからな。ヴィクターさん、私らはその日は遠慮しましょう」


「トマスさんウィリアムさん、お気遣いありがとうございますっ」


かくしてヴィクターの要望により、ユーゴの地元ネグロンの領主が、BARアヴィエイションに来店する事が決まったのだった。

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