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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第四章
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第79話 グランドオープン①

誤字、脱字、御指摘、特に感想 等もらえると嬉しいです。

ケイトからアースドラゴンより高ランクの素材は、地方ギルドでは買い取れないと注意をされた二人は、少しだけしょんぼりしながら王都へと帰って行った。しかも僅か一日で……


次の日、ネグロンの冒険者ギルドにドラゴンの素材が持ち込まれた噂が町中に広まる事になる。当然ジョージの元にもその噂は流れて来た。


「たぶんアイツらの仕業だな……しかし我が子ながら末恐ろしい才能だぜ。今度王都に行った時にでもちょっと顔出してやるか?」


普段ネグロンから一歩も出ないジョージが、珍しく王都に出掛けるという。その理由をユーゴが知るのはもう少しだけ後の話である。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ヴィクター達が無事王都に帰って来た。ユーゴはそれを受けてBARの開店を二日後に決めた。秘密の酒場というコンセプトなので、レセプションなどは行わない。狭い店なので招待客と連れのゲストですぐ満席になってしまうのだ。


そしていよいよオープン当日。十八時きっかりに開店すると、最初にやって来たのはトマスとウィリアムだった。二人は、先日の炭酸ブランドの立ち上げ以来すっかり仲良くなっていた。それぞれにスバスとハンズを伴っておりもう一人、初めて見る如何にも社会的地位の高そうな紳士を同伴していた。


「こんばんはユーゴさん、本日はおめでとうございます。今日はウィリアムさんと一緒に来ましたよ」


「あれ以来すっかり仲良くなってな、ユーゴの店が開いたら一番乗りで行こうと話してたんだよ」


「そうだったんですね、二人ともお祝いまで頂いて却ってすいません」


既にスバスとハンズからそれぞれ革袋に入ったお祝い金を貰っていた。中身は確認してないが恐らく相当な額が入っていると思われる。


「お客様は初めてですよね?」


恐らく佇まいから上級貴族だと見て取れるその紳士に、普通に話しかけられるアイラのメンタルを少しは見習いたい。


「ええ、今日はお忍びという事で〈ブリー〉とでも名乗っておきますかな、素敵なお嬢さん」


「まあ、お客様ったらお上手ですね」


ダンディな紳士を相手にアイラのキャラが変わっていた……


「今日はコールドテーブルの性能もさることながら、炭酸飲料を使ったカクテルを飲んで頂こうと思って、お連れしたんだよ」


「なるほど、それじゃあ皆さん乾杯は炭酸系で宜しいですかね?」


ユーゴは自家製のジンに、搾りたてのレモンジュース、そして自家製のシュガーシロップで甘味を調整すると、3ピースシェイカーで五杯分を二回に分けてシェイクする。グラスと氷の隙間に炭酸を注ぎ軽く混ぜたら〈ジンフィズ〉の完成だ。


「な、何から何まで初めて見る物ばかりですな、あの小さな箱が氷や液体を冷やして保管できるなんて、目の前で見ても未だに信じられません……」


「まあまあブリーさん。我々も初めて来たときは似たような感じでしたよ。まま、せっかくですから冷たいうちに乾杯しましょう」


「そ、そうですね私とした事が」


「それでは開店おめでとう、乾杯!」


「「「乾杯!!!」」」


それぞれが目線に掲げたカクテルを口に運ぶ。


「これは初めて飲むけどジントニックに負けないくらい美味しいですね!レモンの爽やかさが際立ちますなあ。ブリーさん如何ですか?」


トマスがブリーに尋ねる。


「世界中のあらゆる酒を飲んできた自負がありましたが、こんな美味しいお酒は飲んだ事がありません……トマスさんウィリアムさん、本日はお招き頂いて本当にありがとうございます」


「これ以上ないお褒めの言葉ありがとうございます。しかしユーゴの作るカクテルはまだまだこんなものではありませんぞ」


「お客様……あまり先にハードルを上げるのやめて頂いて宜しいでしょうか?」


「おお、すまんすまん。つい我が事のように調子に乗ってしまった」


「まあ、それくらい自慢の孫と言う事なんでしょうな。ハハハ」


「もう、トマスさんまで」


と、そこへ。


誰かコインを持つメンバーが外の隙間にコインを入れたのだろう。コインに込めたユーゴの魔力がドアに伝わり扉の鍵が開くと、新たな客が一名入店して来た。ちなみに回収されたコインはお帰りの際に返却される。


「おめでとうございますユーゴさん!遅くなりましたっ。いやー聞いてくださいよ実は……」


慌ただしく入店して来たヴィクターは、一瞬自分の目を疑った。目の前にいる紳士は一度見たら忘れることの出来ない、とある人物だったのだ。


「いらっしゃいませヴィクターさん、先ずは一杯どうですか。喉も乾いたでしょうから」


ユーゴは手早くジンフィズを仕上げるとヴィクターへと差し出す。


「ジンフィズというカクテルです。こちらのブリーさんも大変気に入ってくれたんですよ」


「初めましてブリーと申します、素敵なお店ですね」


「ヴ、ヴィクター・バージェスと申します。先程は騒がしくしてしまい、大変失礼致しましたっ!」


「いえいえお互い様です。ここではその様なお気遣いは無用ですよ」


「ブリーさん、このお店にあるお酒はほとんどヴィクターさんが、その足で探して来たものばかりなんですよ」


ユーゴがさりげなくフォローを入れる。


「なるほど貴方があの有名なヴィクターズの代表の方でしたか。トマスさんから聞いてますよ、まだ若いのにとても商才があると」


「お見知り置き頂いて大変光栄です!」


「まあまあ、ヴィクターさん。ブリーさんもああ言っておられますしどうぞリラックスして下さい」


笑いかけるトマスに、どうしても引きつった笑顔で返すしかないヴィクターなのであった。どうやらヴィクターはブリーの事を一方的に知っているようである。

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