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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第四章
75/102

第75話 屋台革命

誤字、脱字、御指摘、特に感想 等もらえると嬉しいです。

ドワーフ王国は平地が少ない為、町は山間を沿う様にうねうねと細長く伸びており、その一番奥に岩をくり抜く様にして造られた王宮が鎮座している。これならば初めて来る町でもそうそう迷子にはならない。


ユーゴらは火酒の蒸溜所をさらに下る様にして町へと繰り出した。住んでいる住民は当然の事ながら殆どがドワーフで、女性もがっちりはしているが決して髭などは生やしていない。


町の中ほどまで下ると一気に華やかになる。恐らくこの辺りが繁華街なのだろう。商店は勿論、食べ物の屋台も沢山出ている様だ。


「ちょっとお腹空いたねー、何か食べようよ」


「そうですね、王都とはまた違った食べ物がありそうですし」


ユーゴは鑑定を使い、幾つかの屋台を物色する。王都にあるのと似た様な屋台も多い中、他所ではまだ見た事の無い焼き魚を売る屋台があった。


「あの店が面白そうですよ」


「うん、ユーゴに任せるよー」


「すいませーん、この魚の串焼き二本下さーい」


「あいよー」


ユーゴは棒にグルグル巻きになって焼かれた魚を二本買うとアイラとそれを頬張る。食べてみて分かったがその味は殆ど鮭であった。近くに湖があると言うので恐らくそこで捕れたものだろう。


味付けはシンプルに塩のみ。品質は〈普通〉で決して不味く無いのだが、ユーゴには不満が残った。


「あのーすいません、この魚って皮はどうしてるんですか?」


「アンタら〈スランジサーモン〉を喰うのは初めてかい?こいつの皮は硬くてヌメヌメしてるから捨てちまうんだよ」


(な、なにーっ!なんて勿体無い事を!これはこの国の人にとって物凄い損失だ、余計なお節介だが看過出来んっ……)


「因みにその魚ってまだ捌いてない奴ありますか?」


「変な事聞くんだな、まあ一気に捌いちまうと悪くなるから、頭とハラワタだけ落としたのがあるぜ」


ユーゴは店主と交渉の末、魚を皮付きのまま串打ちして焼いてもらう事にした。元々の売値は一本当たり銀貨1枚。もし皮付の方が美味しく無かったら、魚一匹分全て買い取ると言ったら店主は渋々了承してくれた。


「アンタ変わってるねえ、そこまでしてこんな臭くて硬そうな皮を食べたいのかねえ?」


店主は半ば呆れ顔だ。


「さっき僕は塩で擦りましたけど、タワシなどでよく擦ればヌメヌメは取れるんですよっ。ヌメヌメさえ取れれば全然臭く無いですからねー」


こちらも味付けはシンプルに塩のみ。皮目を外側にして焼いてもらっている為、余分な脂は落ちていくが外はパリパリ、中はミディアムレアに仕上がると言う寸法だ。


「ほれ焼けたぜ。いくら臭く無いったって、こんな蛇みたいな見た目の焼き方じゃ売れる訳がねえよ。これだから素人は、ハハハ」


ユーゴはアイテムボックスに常備しているレモンを取り出すと四つ割りにした。


「これ〈レムの実〉って言うんですけど、おじさんも是非絞って食べてみて下さい」


店主にも一応薦めてみたが、見た目のグロさからあまり食べたく無いようだ。


「美味しそー、いただきまーす!」


飲み食いに関してはユーゴに200%の信頼を置いているアイラが早速かぶりつく。


バリバリっ、ムシャムシャ、モグモグモグ……


「何これっ!?さっきと全然違うよっ。さっきのバサバサした感じと違って、もの凄いジューシーだし、何よりも皮がパリパリで美味しいよ!」


ユーゴもさっそくかぶりついて見ると、その味わいはやはり予想していた通りだった。鮭は皮の下にたっぷり脂が乗っている為、やはりこの食べ方が正解だと思った。身と皮の食感のコントラスト、シンプルな塩とレモンの酸味との対比が丁度良い。


「すいません、あと四本貰って良いですかっ!」


二人のあまりの食い付きっぷりに店主も恐る恐る口にしてみると……


「な、何じゃこりゃあーー!?同じ食いもんとは思えん美味さだっ!お、俺の十年間は一体……」


「ねえ、おじさん早く焼いてよーっ」


「あ、はい!すいません。ただちに焼かせていただきますっ!」


さっきまでタメ口だった店主は、何故か急に敬語になっていた。そして皮から焼け落ちる脂の香りに誘われて、気付くとユーゴらの後ろには行列が出来ていた。


「何いっ!行列が出来たのなんて開店以来初めてだ……くそっ折角のチャンスなのに一人じゃとても間に合わねえ」


若干涙目になっている店主。見かねたユーゴが手伝いを申し出る。


「僕が後ろで魚をどんどん串打ちしていくので、おじさんはジャンジャン焼いて下さい!レムの実もまだたっぷりあるのでお譲りしますよっ」


「えっ!見ず知らずの私の為に、そこまでして頂いてよろしいんですかっ?ありがとうございます!このご恩一生忘れませんっ」


「まあこうなったのも半分は僕の所為ですからね、ハハハ。アイラさんはお客さんの誘導をお願いしますっ!」


「しょうが無いなあもう。はい皆さーん最後尾はこちらでーす!」


ユーゴらの手伝いもあってか、その日一日分のスランジサーモンは僅か一時間で完売した。以後この屋台には行列が絶えなかったと言う。かくして、ドワーフ王国名物〈サーモンのジャンジャン焼き〉が誕生したのであった。

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