第70話 戦いの余韻
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拮抗していたはずの勝負は一瞬でついた。壁まで一撃で吹き飛ばされたユーゴとアイラは未だにうずくまったままだ。
衝撃的な結末に誰もが声を出せないでいたが、暫くして一人の冒険者が不意に呟いた。
「す、スゲえ……」
その声を皮切りに、ギャラリーからは次々に歓声と地鳴りがうねりを上げて巻き起こった。
「はは、次回は流石にもう無手は無理かねえ」
コリーは嬉しそうにひとりごちる。
その地鳴りで目を覚ましたユーゴは、自分が一瞬気を失っていた事に気が付く。胸を中心に体中に激しい痛みがあった為すぐさまポーションを飲んだ。自分の事よりも気になるのはアイラの安否だ、修練場の反対側にその姿を見つけたユーゴはすぐさまアイラの元へと駆けつける。
アイラも同じ様に酷い状態ではあったが、幸いにして命に別状はない様だ。意識がない為口移しでポーションを飲ませる。もはやギャラリーの視線など気にしてられない。
「う、うーん」
ユーゴの〈高品質〉ポーションによりすぐに回復したとは言え、二人とも肋骨が数本折れるほどの大怪我であった。
「ア、アイラさん、大丈夫ですかっ?」
「うんなんとか……ありがとう。最後は上手い事やられちゃったね〜」
ユーゴとアイラはコリーの方へと歩み寄る。その足下はコリーを中心にまるでクレーターの様に陥没しており、二人は最後に喰らった技の凄まじさを改めて感じたのであった。
「あら、もうラブシーンは終わり?」
「悔しいですけど完敗です……」
「もうちょいで、イケると思ったんですけどねえー」
「はんっ、私相手に少しでも勝てる気でいた時点でアンタら十分普通じゃ無いわよ。肋骨の数本は叩き折った筈なんだけど、もうピンピンしてるしね……」
実際、最後に見せた技はコリーの体術に於いても〈絶技〉と呼べる技であり、一撃で相手を死に至らしめる威力を持つ。二人の身体が頑丈だった事が幸いした。もっともコリーがその掌底に魔力を乗せていたら二人の命はとうに無かったであろう。
「それに……」
コリーが左の頬を触るとそこにはうっすらとだが、わずかに血が滲んでいた。二人の剣のどちらかが恐らく掠ったのだった。
「ユーゴ、私は約束はちゃんと守る女よ。ぶっちゃけアイラじゃちょっと物足りないんじゃ無いの?」
「えっ、えーーーっと」
「ちょ、コリーさん!ユーゴを誘惑するのやめて下さいっ」
「アイラにも良かったら手取り足取り色々教えてあげるわよ?それこそユーゴが一生離れられなくなるくらいの奴をね」
二人は色々と想像して思わず赤面してしまう。もはや先ほどまで命のやり取りをしていた相手とは思えない。
「ちょっと、ユーゴも断りなさいよっ!!」
ユーゴの頭にアイラの拳骨が落とされる。
「アハハ、冗談よ。まあ必要な時はいつでもおいで。おいフーダーック!二人の冒険者カードを更新しておきな、二人ともとっくにBランクだ」
戦闘前とは違いコリーが茶目っ毛たっぷりに二人をからかうと、先ほど呼ばれたフーダックが向こうから急いで駆けて来た。
「もうマスターは本当に人使いが荒いですね、それに修練場もボコボコにしちゃってー。結構直すの大変なんですよっ!もう」
フーダックは思わず愚痴を溢すが実際はもう慣れたものだ。気を利かせたユーゴが土魔法で陥没を元通りに直してあげると、ギャラリーからどよめきが起こった。
「えっ!?フーダックさんって魔法使えたの?」
「いや、今のはユーゴが何かした様に見えたが……」
「そんな馬鹿な、魔法が使える戦士なんてエルフじゃあるまいしっ」
「そうだよな、じゃあやっぱコリーさんの仕業か。魔法も使えるなんて最強過ぎるぜっ」
ギャラリーは口々にまた好き勝手な事を言っていた。実際にギルド本部の冒険者にも〈魔法戦士〉という職業の登録者はいなかった。
「呆れたね、アンタ土魔法も使えるのかいっ。戦闘中に使われてたら初見じゃ防げなかったかも?よし、今からもう一回戦やってみよう」
「せっかく直ったのにやめて下さいっ!あっ、ユーゴさん修復ありがとうございますっ」
ユーゴは戦闘中は魔法の事などすっかり忘れていた。確かに急に地面が陥没したら、コリーとて少しはバランスを崩すだろう。それにしても今からもう一回戦とは、流石はバトルジャンキーだ。
「とんでもないです、フーダックさんにはお世話になってますからね。それと今日はもう流石にやめておきましょう」
「そうだね、奥の手はその時まで取っておかなくちゃね〜、もうコリーさんにはバレちゃったけど」
「残念だねえ、じゃあせいぜいその時までに対策を練っておくとするわ」
かくしてユーゴとアイラは王都ギルド本部に於いても、一躍時の人となったのであった。
その時ギャラリーの中で模擬戦を見物していた一人の男が呟く。それはかつてジョージと共にコリーの元で修行をしていた弟弟子であった。
「へぇ、やるもんだねえ〜あの二人。あの〈エイダ・コールマン〉に絶技まで使わせるなんて」
二人の知らない所で運命の歯車は少しずつ軋みを増していく。
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