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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第四章
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第68話 ウィスキー事業

誤字、脱字、御指摘、特に感想 等もらえると嬉しいです。

翌日、昨晩の興奮がまだ覚めやらないヴィクターとユーゴは朝からヴィクターズで打ち合わせをしていた。ヴィクターの図らいでスタッフがモーニングコーヒーを運んで来る。ヴィクターはドリップ用の布フィルター〈ネル〉の商品化にも既に成功しており、上級貴族を中心にコーヒーは流行り始めていた。当然その価格は一杯で大銀貨1枚と大変高価ではあったが。


「まだ貴重なコーヒーをわざわざありがとうございますっ」


「昨晩のカクテルやウィスキーの感動に比べれば、これくらいはお安い御用ですよ。しかし私も毎朝飲んでますが、もの凄く常習性のある飲み物ですよねコーヒーは。正直もう朝はこれが無いと」


慣れないBARの接客でアイラはまだ爆睡していたが、ユーゴは昨日のうちにヴィクターと朝から打ち合わせの約束を取り付けていた。


「確かにそうですね。それで火酒の仕入れの事なんですけど、一度現地に僕らも行きたいんですけどどうでしょうかね?」


「王都から北に馬車で六日ほどの距離ですからね、この忙しいタイミングで往復約二週間近くもユーゴさんに付き添って貰うのは正直気が引けますよ」


「確か専属の護衛を雇われてるんですよね?だったら僕とアイラさんで後から走って追いかけようかな。それなら往復でも四日くらいだし」


「そ、そんな手がありましたかっ!?ハハハ、流石にそこには気付かなかったです」


「実際にドワーフの火酒職人達に熟成したウィスキーのサンプルを飲んでもらいたいんですよね、それに材料の麦芽の乾燥方法をちょっとアレンジした奴も今後は作ってみたいので。


あと樽の保管なんですけど、出来れば王都より涼しいドワーフの里で寝かせた方がウィスキーは美味しくなる筈なんです。熟成にはかなり時間が掛かりますから、今回は僕もアイテムボックスで樽を運ぶつもりですよ」


「本来は全て私がやるべき事なのに、何から何まですいません」


「いえいえとんでも無いです、元々僕が頼んだ事ですからね」


「しかし火酒というのは木の樽で寝かせるだけで、あんなに美味しくて綺麗な琥珀色になる物なんですねえ」


「あ、そう言えばまだお見せして無かったですけど、実際は真っ黒焦げになるまで樽の内側を火魔法で焼いて使うんですよ」


ウィスキーを飲まない人にはあまり知られていないが、ただ樽の中で寝かせただけでは蒸留酒は美味しくはならない。


生の樽材の樹液が滲み出してしまう為、樽の内側を炭化するまで〈チャー〉してから使うのが普通だ。ワニの皮の様にバキバキに割れるくらい焼いた物を〈アリゲーター・チャー〉などと呼んだりする。


実際ウィスキーの熟成は若いものでも三年、長いものだと三十年は熟成させるので、樽の在庫はあればあるだけ良かった。アイテムボックスが無ければそれこそ何往復もするところだ。


「でもウィスキーをはじめとする蒸留酒の熟成事業は資金回収までに長い年月が掛かりますから、それまでにコーヒーの量産体制を整える事も絶対に忘れないで下さいね」


「まさかユーゴさんはそこまでの事を見通して?このヴィクター感服致しましたっ。今後もユーゴさんに一生付いて参りますっ!」


「やめて下さいよ〜、実際に形にしたのはヴィクターさんの力なんですから。あ、そうだ。昨日トマスさんから炭酸飲料の事業は是非ウチにやらせてくれって強く言われちゃって……別に良いですよね?」


「ええ正直私の方も手一杯ですし、少しはトマスさんにも恩を売っておいた方が良いと思います。昨日酔ったトマスさんからジト目で見られた時には、流石に肝を冷やしましたよ、ハハハ」


実際に瓶詰めする技術が無かっただけで、この世界でも炭酸泉というものは既に発見されていた。恐らくトマスはそこに目を付けたのであろう。


後でトニックウォーターやレモネードの製造方法もマニュアル化して渡しておけば、ひとまずはトマスの溜飲も下がるであろう。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ユーゴは一旦ノースの家に戻ると、ようやく起きてきたアイラと少し遅い朝食をとった。


「という訳で、今度ドワーフの里にウィスキーの買付けに行く事になったんですよ。勿論アイラさんも行きますよね?」


「うん行くっ!ドワーフの町は初めてだね、楽しみー」


「バギーさんの故郷ですからね、僕は本当に〈グレン〉さんばっかりなのかが気になりますよ」


「ふーん、そうなんだ」


現代のスコッチウィスキーの銘柄を知らないアイラには当然の反応だった。グレンとはゲール語の場合〈谷〉を表す言葉なので、もしかしたらドワーフの里が山間部にある事と何かしら関係しているのかも知れない。


「あ、そうだ!後で御礼方々コリーさんの所にも顔出さなきゃ。そう言えばケイトさんからもギルドに行くように言われてたの忘れてましたっ」


「冒険者ランクが上がるのは別に良いんだけど、強制召集があるのは面倒だよねー」


「まあ、この国の為ですからね。滅多に無いとは思いますけど」


二人はブランチをゆっくり食べ終えると、昼前にはギルド本部へと顔を出したのだった。


ギルド本部は相変わらずの賑わいを見せていた。昼時という事もあり、酒場では食事を摂っている者も多い。本部ではいつの間にかユーゴ担当になりつつあるフーダックが、二人の来店に気が付いた。


「おおっユーゴさん、アイラさんお待ちしておりました!さっきうちのマスターに、そろそろお二人が来るから、来たら奥に通せって言われたんですよ。なんで分かったんですかね?」


「流石はコリーさん、動物並みの探知スキルですね……特に約束もしてなかったんですが」


「ハハハ、もう今更あの人が何をやっても驚きませんけどねっ、ささっ奥へどうぞ」


奥にあるコリーの執務室に通されると、そこには初めて見る仕事姿のコリーがいた。普段何も仕事をしていない様に見えるが、書類の最終チェックは当然ギルドマスターの仕事なのだ。


「マスター、お連れしましたよ」


「もう終わるからちょっと待ってな」


「自分で呼ぶ様に言ったのになんかすいません、少しお待ちくださいね。では私は仕事に戻りますのでごゆっくり」


「いえ、フーダックさんありがとうございます」


二人はコリーの仕事がひと段落するまで、ただひたすら待たされるのであった。


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