第63話 開店準備①
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ユーゴらは再び王都へと戻って来た。行きと同様に不眠不休で一日半で駆け抜けて来たわけだが、馬車より速いスピードで峠を駆け抜ける二人は、盗賊達の間でもちょっとした噂になっていた。
『うん、アレは絶対に関わっちゃいけない輩だ』と。
二人はまずノースへと向かう、建設中の秘密の酒場に顔を出すと早速マリーが出迎えてくれた。
「あらーっ、お帰りなさい二人とも。久しぶりの実家は楽しかった?」
「うん、母さんやお爺ちゃんの事も父さんに話して来たよ。あっ、それで僕たちネグロンの実家を出る事にしたんだ」
「あら、王都に住むの?じゃあうちの実家に来る?」
「いや、せっかくだけどここの二階に住もうと思って」
秘密の酒場がある建物は二階建だ。ユーゴは一階をBARに、二階を住居にしようと考えていた。勿論アイラも一緒に住む予定だ。
「そう、残念ね。まあいつでも遊びに来なさい。それじゃあ後は二人に任せて私はお店に戻るわよ、お父さんから新製品の試作を頼まれてるからね」
「うん、ありがとう助かったよ。また遊びに行くね」
「アイラちゃんもまたねー」
「はい、また遊びに行きます」
店舗の内装はユーゴのオーダー通りにほぼ出来上がっていた。流石は親方だ、仕事が早い。もう明日にでもコールドテーブルを搬入出来そうだ。二階は元々住居にする予定だったので既に完成しており、今晩から泊まることが出来る。
ユーゴはバックバーに並べる酒類を仕入れる為、ヴィクターズに向かった。
「ユーゴさん、アイラさんお帰りなさいっ!お待ちしておりましたよ」
相変わらずヴィクターズは盛況のようだった。ヴィクターはまだ小規模ながらも、コーヒー豆製造の目処が立ったらしく、来週くらいから商品として店頭に並べる予定らしい。ユーゴの念願のモーニングコーヒーがようやく実現するのだ。〈アイリッシュコーヒー〉や〈エスプレッソマティーニ〉が現実のものになると思うと、ユーゴは既にワクワクして来た。
ひと通りの酒を仕入れると5ケース程の量になったが全てアイテムボックスへと仕舞いこむ。餞別にジョージがプレゼントしてくれたのだが、これを一度使うと手放せないのも良く分かる。
「良いですよねえアイテムボックス。私もいずれは手に入れたいんですけど、まだとてもとても」
「えっ、アイテムボックスってそんなに高いんですか?」
「何と言ってもアーティファクトですからねー。トマス商会に幾つか在庫があるそうですが、一番容量の小さい物でも大金貨100枚はしますから。アイテムボックス持ちは一流の商人の証なんですが、普通冒険者で持っている人なんていませんよ。
お話を聞いている限りではかなりの容量があるみたいですから、最低でも大金貨200枚はするでしょうね。それをぽんっとくれるなんて、ジョージさんはとんでもない太っ腹ですよ」
(大金貨200枚……2億円!?父さんとんでもないものをサラッとくれたな、ありがたや〜)
「そ、そこまでするとは思いませんでした。今度から気を付けます」
「ハハハ、お二人の腕前なら追い剥ぎにあう事も無いでしょうけど、あまり見せびらかさない方が宜しいかも知れませんね」
「私たちも金貨なら今100枚以上持ってるけど、全然足りないやっ」
「すいませんアイラさん。僕がお酒を大量に仕入れちゃったから、大分減っちゃいましたね」
アイラはお金に執着がないので、お金の管理はユーゴが担当している。実際ヴィクターズでの酒の仕入れだけで、金貨60枚以上は使ってしまった。まだまだ酒は高級品なのだ。
「ううん、また直ぐに増えるよっ」
次にユーゴらが向かったのはサウスにあるバギーの鍛冶屋だ。この世界にはBARが無い為、当然バーツールを作るところから始めなくてはならない。
「ごめん下さーい!」
「今手が放せねえ!客ならちょっと待っててくんな!」
相変わらずのバギーであった。二人はしばらく店内を見ながら時間を潰していた。
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「ふう、待たせたな。ってユーゴとアイラじゃねえか!帰ってたのか」
「はい、今日帰って来ました。あと今度王都に住む事になりまして、今日はご挨拶とちょっとご相談に」
ユーゴは手土産にヴィクターズで仕入れた火酒を一本渡すと、紙に絵を描いて細かくオーダーをする。今回頼むのは炭酸などを保管するスイングトップ瓶の蓋のはり金部分だ。
これが完成すれば自作した炭酸やトニックウォーターを保管できるのだ。現代でも一部のオランダビールやベルギービールの瓶に採用されている。
「炭酸か、聞いたことはあるな。コレがあれば気が抜けないように保管できるわけか?面白え、二日もあればなんとかなるだろう」
「ありがとうございますっ!あと実は、こういうのも欲しいんですけど……」
「なんだまだあんのか?コイツは……スプーンとカップか?これだったら俺が作るまでもねえ、知り合いの食器屋に頼んでおいてやるよ。取り敢えず試作させるから触ってみて好みを言えば良い」
「ホントですか!ありがとうございますっ」
こうして異世界初となるBARの開店準備は着実に進んでいくのであった。
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