第62話 大団円
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それまでシーンとしていたギルドの修練場内に、凄まじい怒号と歓声が沸き起こる。
当然、アイラとユーゴの二人は状況がすぐに理解出来ないでいた。まだ身体は動かせているが殆ど気力だけで立ち上がった様なものだ。
何よりジョージの絶技を一人で受けていたらその時点で勝負はついている、二人が呆けているとジョージの方から声を掛けてきた。
「馬鹿やろう、得物がコレじゃあ勝負にならねえよ」
そこには根元からボッキリ折れた模擬剣があった。ジョージの絶技に耐えられなかったのだ。
「今のお前ら相手に無手で挑むほど俺も馬鹿じゃねえ。アレを防いだ時点でお前らの勝ちだよ」
ジョージはユーゴの肩をポンと叩くと、ギャラリーの方へと去って行った。ついでにアイラもお尻をパシンと叩かれる。
恐らく全財産を賭けたであろう一部の冒険者が、なだれ込むようにジョージに詰め寄っていくが、全員子供をあしらう様に返り討ちにあっていた。
テーブル席にどっかと腰を下ろしたジョージはエールを注文すると、美味しそうに喉を鳴らして飲んだ。ジョージの隣には美女二人が笑顔で佇む、バーバラとハインだ。
「お前らホント性格悪いのなっ」
「あら、私はジョージを応援してたわよ」
「よく言うぜっ」
ハインはジョージを応援はしていたが、ちゃっかりユーゴ達に金貨10枚を賭けていた。
「あの子達、あなたにアレを出させるとはね」
「流石に見えてたか……しかも二人とは言えアレを塞ぎやがったぞアイツら」
「そうね、フフフ」
珍しく笑顔のバーバラも、応援する意味でユーゴ達に金貨10枚を賭けていた。もっともジョージが勝つものと思ってはいたが、こちらも棚ぼただった。
なんとこの二人以外のギャラリーが全員ジョージに賭けていた為、二人の取り分は15倍オッズの金貨150枚であった。
ちなみに、ジョージに見つかりヘッドロックを決められている胴元のガストンは、しっかりと金貨5枚を抜いていたのであった。
ユーゴとアイラはしばらくの間ギャラリーから揉みくちゃになって祝福を受けていた。
「あのジョージさんに勝つなんてオマエら最高だぜっ!」
「アイラちゃんは可愛いのにこんなに強いなんて、一緒にいるユーゴの野郎が羨ましいぃっっ!」
「金は全部擦っちまったがまあ飲め飲め!今日は俺の奢りだっ、ツケだけど……」
皆それぞれに好き勝手な事を言って盛り上がっている、結局は飲む口実が欲しいのだ。
この日は飛空亭の宿泊客も全て観戦に来ている事をバーバラは知っていた。ジョージも上機嫌だし、今日ぐらいは羽目を外しても良いだろうと一計を案じた。
「みんなー、今日は私とハインの奢りよーっ!何でも好きな物じゃんじゃん頼んで頂戴!」
「マジかっ!?」
「やったーーっ!!」
「流石バーバラさんっ」
「ちょ、えーーーーーーーっ!!!」
突然のバーバラの宣言に一人だけ違った意味でびっくりしたハインだったが、何せ二人勝ちなのでどうにもならない。そのままこの日はギルドの酒場で大宴会となり、ハインはバーバラと割り勘で一人金貨15枚を支払う羽目になるのだった…。
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翌朝。飛空亭の前には宿のスタッフやギルド職員をはじめ、多くの人々が集まっていた。二人の旅立ちを見送るためだ。
「お前らの実家はここにある、いつでも帰って来て良いからな」
ジョージは二人と固い握手を交わす。
「またすぐに会えると思うけど、気をつけていってらっしゃい」
と、優しく微笑むのは昨日二人に賭けて大勝ちしたハインだ。
何故か泣きながら見送るガストンや、ケイトを始めとするギルドの受付職員、アブドールやブッチャー達の姿も見える。その他宿のスタッフや常連客の冒険者に至るまで、中には餞別をくれる者さえいた。
特にバーバラは革袋にごっそり入った金貨を、餞別としてアイラに渡すと何やらこっそり耳打ちをした。
次の瞬間、アイラの顔が真っ赤になる。ユーゴをはじめとする男性陣は、その耳打ちの内容が気になって仕方が無かった。
「それじゃあ行ってきますっ!また必ず戻って来るので宜しくお願いします」
「じゃあ、みんなまたねー!」
二人は皆に挨拶をすると、何度も振り返り手を振りながら走り去って行った。
「「「速っ!」」」
二人のあまりの足の速さに、その場にいた殆どの者が口をあんぐりしていたのだった。
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参考価格
観戦していたギャラリーは約150人ほどで一人平均で金貨2枚、約20万円を賭けていた事になる。
その後の大宴会で一人平均で大銀貨2枚、約2万円飲み食いされたと言うお話でした。
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