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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
61/102

第61話 ネグロン頂上決戦

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

そしてあっという間にジョージとの決戦の日がやって来た。ネグロンの町最強と言われる元上級冒険者ジョージと、新進気鋭の若手冒険者アイラとユーゴの対戦とあって、噂はすぐに町中に広まった。


それを聞いたギルド職員のケイトは、対戦の場所をギルドの修練場にする事を提案した。本人が見たいのもそうだが、このレベルの闘いが人知れず行われる事は他の冒険者にとっても損失だと考えたのだ。


ジョージはあまり乗り気では無かったが、前回の模擬戦で店の壁が崩れた事からケイトの提案をしぶしぶ受け入れた。


「だいぶ大ごとになっちまったなあ、お前らの挑戦を受けたのは良いけど」


「まさか僕もこうなるとは思って無くて、ゴメンね」


「俺はともかく、お前らがそれだけ注目を集めるほど成長したって事だからまっ、良いんじゃねえか」


「ジョージさん、こないだみたいなのは無しだからねっ!」


「ん、アレかーっ!大丈夫だ。またバーバラに怒られたら敵わんからな、ハハハ」


「え、アレって?」


前回の勝負で壁に激突して伸びていたユーゴは、アイラに対して行われた羞恥プレイを知らない。


観客に向けて一応ルールの説明がなされた。勝負は一対二の変則マッチ。ジョージが刃を潰した模擬剣を使うのに対し、アイラとユーゴの二人は使い慣れた魔剣を使用する事。どちらか一方がギブアップをするか、戦闘続行不可能となった時点で勝敗を決するものとする。


「はい、張った張ったーっ!現在オッズは〈蒼天の槍〉ジョージが1.1倍、ルーキーの〈ジ・オッド・カップル〉の二人が15倍だよーっ!」


「ガストンの野郎……恥ずかしい二つ名を思い出させやがって。後でシメてやるっ」


「僕らの二つ名〈おかしな2人〉ってそのままじゃん!酷い」


勝手に賭けを仕切り始めたガストンが、試合後にジョージにきっちり詰められたのは言うまでも無い。


ジョージを中心にアイラとユーゴがそれを挟み込む立ち位置は前回の模擬戦と同様だ。パッと見明らかにジョージが不利なこの態勢にギャラリーがざわつき始める。


「それでは、はじめっ!」


普段全く存在感のないギルドマスターの掛け声で勝負は始まった。


アイラとユーゴの今回の作戦は、小細工なしの真っ向勝負だ。全ての戦闘能力で負けている以上、二人が勝利出来るただ一つの可能性は、唯一ジョージと同じステータスの〈素早さ〉だけであった。


アイラとユーゴは躊躇無く同時に斬りかかる。ジョージは上体だけでは躱しきれないとみると、一方の攻撃を躱し、もう一方の攻撃は剣で弾くか受け流すという作戦をとった。


「なっ!コイツらクソ速えっ、躱しきれん」


アイラとユーゴはジョージに剣を使わせた事に、微かな手応えを感じていた。攻撃は常に躱すか弾かれているものの、ジョージに反撃の隙を一切与えない。王都まで一日半で駆け抜ける二人のスタミナは普通では無く、波状攻撃は一向に収まる様子を見せない。


ブンブンブンブンブンッ


カキカキカキカキカキンッ


ギャラリーには三人の剣筋はほとんど見えていない。剣の残像が描く二つの球がジョージを挟み込む様に動いているだけだ。辺りには空振りする剣とぶつかり合う剣の音だけが、恐ろしく早いリズムで殆ど同時に響きわたる。


(コイツらアホかっ!どんだけスタミナあんだよくそっ、しゃあねえアレをやるか……)


ジョージは埒が明かないとみると、少しずつ二人には分からない程度に力の加減を変えていく。すると先に変化に気が付いたのはギャラリーだった。ジョージを取り囲む二つの球状の軌跡が徐々にだが、互いに吸い寄せられるように距離を縮めていく。


ーーーチチンッ


近づいて行く二つの球の境界がほんの僅かに重なった瞬間、触れた剣先から火花が飛ぶ。アイラとユーゴは誘導させられていた事にハッと気が付くと、即座にその状況を理解し戦法を変える。瞬発力に勝るアイラが上に跳躍すると同時にユーゴは下から横薙ぎの剣を叩き込んだ。


ジョージは二人の攻撃を読んでいた、何故ならそう仕向けたからだ。アイラを凌駕するカンストした〈瞬発力〉を発動させると、上下から迫る二人の鋭い剣を同時に迎撃する。


(ーーー【龍の顎】ドラゴンファングっっ!!)


ジョージは上と下から殆ど同時と言える剣速で二回ずつ斬撃を打ち込む。さながら四つの牙を持つ龍がその顎を閉じるかの様な絶技は、冒険者時代のジョージの切り札だ。


その瞬間。辺りに爆風が巻き起こり、激しい金属音が一瞬遅れて到着する。恐らくギャラリーにはその音すら一緒くたにしか聞こえていない。


ガガガガギンッ


アイラとユーゴはジョージの斬撃を辛うじて二発ずつ受け止めたが、二人とも折り重なる様に身体ごと吹き飛ばされた。


「「ぐはぁっ」」


壁まで吹き飛ばされたものの幸いまだ意識はある。素早く体勢を立て直した二人は左右に弾ける様に飛び退くと再び剣を構えた。と、その時。


「ーーー参った!俺の負けだ」


まだ少し土埃が舞う修練場の中央を見やると、そこには両手をホールドアップし、お手上げとばかりに首を横に振るジョージの姿があった。


「そこまでっ!勝者アイラ・バーレイ、ユーゴ・エジリ!!」


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