第59話 生存本能
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出掛けに恐ろしい体験をした二人であったが、そのステータスはやはり人間離れしていた。睡眠も取らずノンストップで走り続けた結果、二人はこれまでの新記録一日半でネグロンまで辿り着いたのだった。
「「ただいまーっ!」」
二人は約二週間ぶりにネグロンの町に帰って来た。王都も楽しかったけどやはり地元はいつ帰っても落ち着くものだ。ユーゴらは飛空亭に着くと直ぐにジョージの元を訪れた。
「おう、早かったなお前ら」
ジョージはどうだったとは聞かない。恐らくユーゴが何かしらマリーの件で傷付いたのでは無いかと思ったからだ。
「あ、母さんに会ったよ。元気そうだった」
「うん、お爺ちゃんのウィルさんも良くしてくれたしねー」
「ああ、そうか……って何ぃっっ!?」
ユーゴはこの十日ほどの出来事をジョージに話した。マリーがネグロンの町に帰ってくる事は無いだろうが、実質スター・ケイプとの確執はすでに解消されたと言っても過言では無かった。
「あの堅物のウィリアムさんがお前を孫として認めるとは、まあ何にせよ良かった…今まで黙ってて悪かったなユーゴ」
「ううん、母さんも本当は自分の所為だって言ってたし。寧ろ父さんは自ら悪者になったんでしょ?僕がもう少し早く魔法に興味を持ってれば良かったのにね」
「まあ、今更たらればだがな。あと、俺に気を使わないで向こうの家にはいつでも遊びに行って良いからな」
「あ、それで相談なんだけど……」
ユーゴは一旦飛空亭を辞めて、王都で暮らしたい旨をジョージに伝える。言わば親元を離れた完全な一人暮らしだ。
将来ジョージの後を継ぎたい気持ちは今も変わらないが、若い時には今しか出来ない事がある。ユーゴ自身も断腸の思いであった。ジョージはしばらく目を瞑り思い悩んでいる様子だったが、
「まっ、いつかはそんな日が来るとは思ってたけどな……よし、お前の独立を認めよう」
ユーゴの独立を遂には認めてくれたのだった。この一年で逞しく成長した我が子を誇らしく思うジョージ、だが一方でもう一つ残る気掛かりはアイラだ。
「でっ、アイラはどうするんだ?」
二人の間では特に何も打ち合わせはしていない。互いに好意を持っているしライバルでもある二人は、ただ息を吸うように自然と行動を共にしていた。改めて聞かれるとユーゴはアイラの気持ちを確認していない事に気が付いた。
「私もユーゴに付いて行こうかなーって思ってる。ジョージさんやユーゴのお陰で、バイトしなくても食べていけるようになったし」
「でもお前ら付き合ってねえんだろ。ユーゴが王都で他の女に目移りしたらどうすんだ〜?」
「ぶっ飛ばすっ!!ってのは冗談だけど、将来はユーゴと結婚したいんだー、私」
「こりゃあ一緒になったら尻に敷かれそうだな、ユーゴ!ハハハ」
「ア、アイラさん本当に僕なんかで良いのっ?」
「何、ユーゴは嫌なの?」
アイラがギロリと睨んだ。
「は、はい喜んでーーーーっ!」
「ちょっとふざけてんのー、もうっ!」
「「アハハハハハ」」
その日はジョージの勧めもあって、二人は飛空亭で皆からもてなしを受けた後、夜はアイラも空いていた客室に泊めて貰える事になった。
そしてその日の晩、絶対的な死の恐怖が生存本能を刺激したのだろうか。二人はどちらからともなく求め合い、初めて一つになった。そして遂にユーゴは自身のステータスを全てアイラに開示したのである。
ーーーーーーーーーーーーーーー
次の日の朝、キッチンで静かに朝食をとる二人。つやっつやになった二人を見たジョージが朝から一言。
「ーーーお前ら昨日ヤッたろ?」
ブホォッ
ブホォッ
二人は壮大にスープを噴き出して、耳の先まで真っ赤になる。それを見たジョージはゲラゲラ笑っていた。
ちなみにアイラが言いつけた事により、ジョージがバーバラから後でゲンコツを貰ったのは言うまでもない…。
王都への出発を一週間後に決めた二人は、最後にどうしても成し遂げたい事があった。それはジョージから剣で一本を取る事だ。
その為にはジョージの強さを知る必要があった。ユーゴはアイラにジョージのステータスを見せる事を決めた。
「僕のレベルも結構上がったから、多分今なら詳細が見られると思うんだよねー」
ユーゴはそう言うと、以前調べた事のあるジョージのステータスページを開いた。
【ジョージ・エジリ】(46)男 LV10ーーーーーー
竜騎士 SP30
-体力
体力5
疲労回復5
異常回復4
-魔力
-筋力
筋力5
-技術
上級剣術3
上級槍術3
竜騎術4
体術5
投擲5
探知4
料理4
-防御力
防御4
回避5
-知力
読解力1
-素早さ
素早さ4
瞬発力5
-運
悪運4
-特殊
魅了4
「何これっ、凄っ!」
「職業、竜騎士って……」
「しかも剣術と槍術が上級っ!?」
「父さんがモテるのはこの魅了スキルの所為か」
「間違っても一人ずつじゃ無理だよね……」
二人がジョージと一対一で闘うことを諦めた瞬間だった。
そのあと油断したユーゴは、転生して直ぐの頃の黒歴史である、こっそり覗いていたハインのステータスページをうっかりアイラに見られてしまう。ああ、痛恨の誤爆…。
当然王都に出発するまでの一週間、アイラからストーカーだの変態だのスケベだのと罵られる事になるのだった…。
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