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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
57/102

第57話 樽職人

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

アイラは入り口近くの一人に声を掛ける。


「すぐに戻るからみんなちゃんとここにいてね、もし逃げてたら……次は殺すからね」


「は、はひっ」


アイラは今回別に相手を殺すのが嫌だった訳ではないのだが、何となく生かしておいた方が良い気がしていた。というのも敵の約半数には元より殺気が無かったからだ。


「ユーゴーっ!ちょっと大変、今すぐ来てーっ」


「ちょ、アイラさん!そんなに慌ててどうしたのっ?」


ユーゴは手を引かれるがままに先ほどの倉庫へと連れて行かれた。するとそこには、おびただしい数の男達が血を流しながら横たわっていたのだ。


「こ、これは一体……」


「何だかこの辺を縄張りにしてた例のマフィアらしいんだけど、路地裏で私を拐って乱暴しようとしたから全員ぶちのめしてやったのっ」


「えーーーーっ!?」


一応嘘は言っていない。


「何人かは本気で私の事殺すつもりだったみたいだから、別にやっちゃっても良かったんだけどさ。ユーゴなら何か名案があるんじゃ無いかと思って。ギルドに突き出すとか」


「そ、そうですね、生かしておけば犯罪奴隷にも出来ますし。寧ろハインさんならそうするでしょうね」


こんな身近な倉庫がマフィアのアジトになっていたとは驚きだった。中には様々なサイズの樽が無造作に積まれている。ユーゴはその樽を見てある事に気が付いた、アイラそっちのけである。


(あれっ?この世界には樽が既にあるのにウィスキーが無いっていうのは、もしかしてまだ樽内でお酒を保管する習慣が無いのかっ!?)


「あのーすいません、あそこの樽は皆さんの物ですか?」


ユーゴはマフィアにしてはあまり悪そうに見えない、比較的軽傷の男に尋ねてみる。


「は、はいそうですっ」


「一体何に使ってるんですか?」


「元々私共は樽の製造で商いをしていたんですが、積み重ねが出来る四角い箱の方が運ぶのに便利だとかで仕事が激減しましてね。ちょっと前に廃業しちまったんです」


詳しく話を聞いてみると、当時の親方が業務の方向転換をせず頑なに伝統的な樽製造にこだわり続けた結果、競争力を失い廃業してしまったそうだ。


食うに困った親方はあろう事かマフィアの仕事を手伝う様になっていった。職人たちを食わせていく為とは言え馬鹿な選択をしたものだ。


結果、親方はマフィアにこの土地を奪われた挙句殺されてしまった。職人達も足抜けが出来ずにそのままマフィアの手下になり下ったという訳らしい。


「へー、この中に当時の職人さんはどれ位いるんですか?」


「私を入れて十人くらいでさあ、全員盗みはやりましたが殺しだけはやって無いです!どうか犯罪奴隷にだけはっ」


「て、てめえらだけ助かろうったってそうはいかねえぞ!お前らはもうファミリーなんだからな」


先程アイラを誘拐した男の一人が、腕を押さえてうずくまりながらも元職人らを脅す。


「あっ、こいつは私を殺そうとしたからギルドに引き渡そう。あとアンタ、私が気を失ったフリしてる時におっぱいとお尻触ったよね?覚えてるわよ。


元樽職人の人達からは殺意も感じられなかったから、私は許してあげても良いけど」


「な、なにぃーーーっっ、貴様ぁ!僕だってまだ直接は触った事無いのにっ!!あっ、ゲフンゲフン。


ともかくっ!ボスとその部下たちはギルドに引き渡して、残りの人達の身柄は僕が引き取りましょう」


「そんなの汚ねえぞっ。俺も心を入れ替えるから頼むっ、見逃してくれ!」


「俺もっ」


「俺もだっ!」


みんな我先に助かろうと弁明してくるが、時すでに遅し。殺意を持って挑んできたものは全てアイラに骨折させられている為、言い逃れは出来なかった。そしてユーゴのジェラシーが絶対にそれを許すはずはなかった。


ーーーーーーーーーーーーー


後日ギルド職員から聞いて判明したのだが、アルデヒド一家はCランクの賞金首だったらしく、アイラはなんと今回金貨120枚の報酬を手にしたのだった。


一方でユーゴ作の普通品質ポーションですっかり元気になった樽職人達は、心を入れ替えて早速倉庫の掃除から始めていた。中でもリーダー格の《ホグス》は憑物が落ちたかの様に生き生きと働いていた。


「こんにちはホグスさん、精が出ますねー」


「こ、これはユーゴさんっ!この度は私ども何とお礼を言って良いか分かりません」


「いえいえ、僕の方もこれから皆さんにお世話になりますので。早速ですが皆さんには今まで通り樽を作って欲しいんですが、従来の物よりも気密性を更に上げて欲しいんです。というのもここにお酒を入れたいんですよね」


「え、お酒ですか?それは初めて聞きますね。確かに塩や穀物と違って樽の精度が低いと洩れそうですが……」


「実際は木がお酒を吸って膨張するので大体大丈夫なんですけど、横にして保管したいので溢れない工夫と強度が必要ですね」


とそこへ、今や押しも押されぬ勢いの商人ヴィクターがやって来た。


「お待たせしましたユーゴさん!おお、ここが例の樽倉庫ですね。確か私の仕事と言うのはこの樽に入れてドワーフとエルフの火酒を仕入れてくる、という事で宜しかったでしょうか?」


「はい、その通りです。そして恐らく樽の中で熟成させた火酒は、今後ヴィクターズの看板商品に育っていく事になると思いますよ」


まだまだ数年先の話ではあるがユーゴの予言通り、後にヴィクターは樽熟成の火酒で更なる富と名声を得る事になる。そしてこれを機にホグス達は、ユーゴに勧められヴィクター商会の火酒部門スタッフとして活躍をしていく事になるのだった。

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