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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
55/102

第55話 血塗れのマリー

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

従来のスター・ケイプの冷蔵庫は一番小型の物でもそもそも運べる物では無く、受注生産だった為在庫が無かったのが幸いした。大量の負の遺産を抱え込まずに済んだのである。ウィルはマリーを筆頭に、魔導コールドテーブルの量産体制を整える準備を早速始めた。


「しかしユーゴは私に似て、いや私以上の天才だな。これも一重にマリーがあの子を産んでくれたお陰だよ」


ウィルはすっかりユーゴの発明を、我がことの様に喜んでいた。流石にマリーもそれには呆れ顔だ。


「呆れた。父さんあれだけユーゴにこてんぱんにやられたのに、流石は商売人ね」


「ユーゴがトマスさんと懇意にしてると聞いた時には流石に驚いたが、我々の身内で本当に良かったと思うよ」


「それは本当にそうね、それに魔法陣の重ね合わせっていうやり方も、まだ誰もやっていない新技術よ。この方法を使えばすべての生活魔導具のシェアをスター・ケイプが奪うことすら夢じゃ無いわ」


確かにそうだった。事実ウィルは直ぐにハンズに命じて、早速魔法陣の重ね合わせ技術のパテントを取るために動いていた。


これにより数年後、スター・ケイプはこの国有数の魔導具メーカーにまで急成長するのだが、それはまた別の話である。


ーーーーーーーーーーーーーーー


一方でウィリアムからキッチリと謝罪と孫認定を貰ったユーゴは、早速例の秘密の酒場の内装工事に取り掛かっていた。


「ここにその一枚板を渡して貰って、お客さんが寛げるカウンターにします。あ、厨房の入口は冷蔵庫が入るから開口部は少し広めに開けといて貰って……」


ユーゴは初めての店舗の設計に取り組んでいた。BAR に限らず飲食店の設計というのは素人には中々に難しい。スタッフの動線を意識しなくてはならない為、飲食店で働いた事が無い者が作ると、必ずと言って良いほど後から不都合が生じる。実際に作ってみたらもの凄く使いづらいという店舗が、現実世界には無数に溢れている。


この物件に関わる様になってからというもの、ユーゴは夢中になり過ぎて実際に寝るのを忘れていた。その為アイテムボックスに大量に入っているとはいえ、ポーションの在庫が底をつき始めていた。


「不味いな、ポーションの残りが心許ない。かと言って自分で作れる物をわざわざ買うってのもなー。ん?待てよ……」


休憩をしていたユーゴは何か閃くと、アイテムボックスから使用済みポーションの空瓶を取り出す。それを水魔法でよく洗ってから中に再び水を満たして蓋をした。更にもう一本未使用の〈高品質〉ポーションを取り出すと、ある実験をしてみる。


「錬金術って、金より価値の低いものから金を作る技術だよな。って事は水をポーションにする事も出来るのでは……?」


ユーゴは左手に持ったポーションの複製を作るイメージで、右手に持った瓶の水に魔力を注ぎ込む。すると中の水が金色に光り輝き、光が収まった時にはそこに薄緑色の液体が出来上がっていた。


「えっ、成功っぽい?」


早速鑑定をしてみると


【ヒールポーション】〈普通〉


と、表示された。


「あれっ、こっちは普通品質だ。何だよー下位互換かー、でもこれって結構凄くないっ!?」


ユーゴはアイテムボックスから以前ヴィクターから貰った普通品質のお酒〈ヴェルムト〉を取り出し、同じように複製をしてみた。するとそこには


【ヴェルムト】〈低品質〉


の文字が。試しに味見をしてみると不味くは無いが、やはり普通品質ほどの感動は無かった。


「これは凄いな、高品質の物さえ一度手に入れたら、ずっと普通品質には困らない訳か。お酒は庶民には高過ぎて手が出ないから、原価を抑える手段としてはかなり有効だな……」


ユーゴは錬金術スキルのチートっぷりに改めて驚いたのであった。朝から何も食べて無かったユーゴは、アイラを誘ってガベッジサンドを食べる事にした。


「うんまっ!〈ハミッシュ〉さん、ここのサンドは相変わらず美味しいねっ」


「お、アイラちゃん嬉しい事言ってくれるねえ」


ハミッシュとは屋台の親父の名前だ。ユーゴが以前ネグロンカラシーナをプレゼントしてからと言うもの、ガベッジサンドのクオリティは更に上がっていた。側でちょこまかと娘のシャーリーがお手伝いをしていて、その姿にほっこりする。


「そう言えばこの前、マフィア連中が母さんの事〈血塗ちまみれのマリー〉って呼んでるっていう話だったけど、当時何があったの?」


「ああ、アレか……」


ハミッシュは遠い目をしていた。何か不味いことを聞いてしまっただろうか。


「マリー様がマフィアの根城を魔法で吹き飛ばした話は知ってるよな?あの時にたまたま俺は魔物の臓物を搬入してたんだよ、勿論まだ掃除もしていない血だらけの奴をさ。


その時、吹き飛んだ建物から飛んできた破片でマリー様は頭を怪我されてな、すぐポーションで治したらしいけど結構な流血で顔面真っ赤だったのよ。


そこにたまたま出くわしちまった俺が、腰を抜かして内臓が入ったバケツを足元にぶちまけちまってよー、血だらけの内臓が足元に転がるわ血まみれの魔女が立ってるわで、辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図みたいになっちゃったんだよな〜。


あの事件では奇跡的に死人は出なかったらしいんだけどよ、その地獄絵図を見たマフィアがマリー様に付けたあだ名が〈血塗ちまみれのマリー〉って訳さ」


「「おいおい」」


マリーの性格からはおよそらしく無いあだ名だなと思っていたら、完全に屋台の親父ハミッシュのとばっちりであった。

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