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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
54/102

第54話 冷蔵庫革命②

日曜日ですので本日は23時にもう一話アップします!


誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

それから一週間が経った。マリーの借家を引き払ったユーゴは、建築中の建物の工事を一時中断し親方に細かいオーダーを出した。敢えて古い街並みに溶け込む様に綺麗な煉瓦造りではなく、わざとモルタルで補強したり塗り直したりして、いわゆる〈ブルックリンスタイル〉に仕上げたのだ。


「兄ちゃんに買い取って貰ったのはこちらとしても助かるけど、こんな中途半端な仕上げで良かったのかい?」


「はい、この使い古されて補修した感じが良いんですよ。まさか中に秘密の酒場があるとはだれも思わないでしょ?」


「確かにそうだが、それじゃあ客が誰も来ねえじゃねえか?若え奴の考える事は俺には分かんねえな〜」


「まあまあ、それは後のお楽しみという事で」


ユーゴはその仕上がりに満足していた。現場監督の傍ら、空いている時間は昼はアイラと剣術の稽古、夜は他の属性の魔法や魔法陣を描く練習をしながら過ごした。もちろんほぼ寝てない為、ポーションが大活躍した。


そうこうしている内にマリーから、遂に〈魔導コールドテーブル初号機〉の完成に漕ぎ着けた、との一報が入ったのであった。


連絡を受けたユーゴらは、店舗裏の製品搬入口に来ていた。ここは倉庫件、商品開発の工房も兼ねているのだ。そこには完成したばかりの魔導コールドテーブル初号機が鎮座していた。


「うわーこれは凄いね、ほぼ僕のイメージしてた通りの仕上がりだよ」


寸法はユーゴのオーダー通り、高さ800 幅1200 奥行600mmの正にコールドテーブルサイズだ。木製ではあるが表面に薄い鉄板を貼り付けて、拭き上げもしやすくなっている。しかも省エネ設計の為、ゴブリンサイズの魔石で約二ヶ月も動かす事が出来るのだ。


仮に量産体制が整えば、金貨5枚程度の値段で発売出来るのでは無いだろうか。このノウハウがもし他の商会の手に渡ったら天下のスター・ケイプが廃業に追い込まれる事は、火を見るよりも明らかだった。


「造った私が言うのもなんだけど、恐ろしい物を完成させちゃったわね……いったいユーゴはこれをどうする気?」


「意固地なお爺ちゃんに見せびらかして、もし先日の一件について謝らなかったら、トマス商会にノウハウを売るんだぁ」


「ア、アンタ結構悪魔ね……間違いなくうち潰れるわよっ」


その時だった、ハンズに呼び出された意固地なお爺ちゃんこと、会頭のウィルが工房にやって来た。ユーゴの来訪を聞いたウィルは内心とても喜んでいた。自分から謝らないまでも上手いこと言って、先日の件を手打ちにしようと考えていた。やはり初孫はジョージの子とはいえ可愛いのだ。


「おお、ユーゴでは無いか。今日は先日の件を謝りにでも来たのかな?お主に謝罪する気持ちがあるのならば、私もいつまでも目くじらを立てているほど狭量な男ではないぞ」


(あれ?この爺さん自分から謝る気が全然無いな、ちょっと懲らしめてやるか……)


「僕も先日はちょっと言いすぎたかなと思って、今日はお爺ちゃんにある物を見せに来ました」


(お、お爺ちゃん。私をお爺ちゃんと呼んでくれるのか、なんと言う甘美な響きなのだ……)


「ほ、ほう、それはその鉄の箱の事かね?」


流石はウィリアム察しが良い。ただしウィルが考案した最新鋭の小型冷蔵庫の八分の一程度のサイズしかないコールドテーブルが、まさか魔導冷蔵庫だとは気付くはずも無かった。


「はい、すぐに気が付くなんて流石ですね。僕が考えた超小型魔導冷蔵庫です」


(おお、まさかユーゴが既にこの商売に興味を持ってくれているとは。しかしこんな鉄の箱を魔導冷蔵庫だとは、やはりまだ子供は子供だな)


「なかなか面白い趣向だな、もちろんちゃんと冷えるのかね?」


「はい、ここにゴブリンの魔石をはめて見て下さい」


(仕方ない、仲良くなるためにここは孫のおママごとに付き合ってやるかな)


「やれやれ、ここで良いかね」


ウィルはおもむろに魔石を窪みにはめ込んだ。するとちゃんと魔力がコールドテーブルに流れ出したではないか。


(ほう、ちゃんと魔法陣が描かれているのか。しかしこのサイズじゃ初級魔法が良いところ、中級以上の氷魔法の事はまだ当然知らんのだろうな)


「開き戸になっているので、その取手を引っ張って開けて見てください」


「ふむ、これかね?」


ウィルは言われるがままに扉を開けてみる。と次の瞬間、中から冷蔵庫特有の冷たい風が噴き出して来たのだ。


「うわっ何だこの冷たい風は!?え、まさか……いやあり得んっ」


「はい、そのまさかです。正真正銘ちゃんと冷える小型魔導冷蔵庫です」


「ば、馬鹿なっ!!あり得ない。何かズルをしているに違いないっ」


ウィルはコールドテーブルの中に頭を突っ込んで、隅から隅まで調べ出した。その無様な格好はとても冷蔵庫に革命をもたらした偉人のものではなかった。


「無い、無いぞっ、氷魔法の魔法陣が何処にも無いっ!くそっ、一体なにをしたんだユーゴ!!教えろっ、教えてくれぃ!」


小一時間ほど血眼でコールドテーブルを調べていたウィルは、我を忘れて五十歳近くも年下のユーゴに掴み掛からんばかりに詰め寄る。


「お爺ちゃん、そう言えばこないだの件ってまだ謝って貰って無いよね?」


「あ、あれはお前が悪いっ、くっ」


「あ、そうだ。この魔導冷蔵庫の作り方、トマス商会に教えてあげたらトマスさんきっと喜ぶだろうなー(棒)」


「ユ、ユーゴーっ!わ、私が全面的に悪かったっ。だからそれだけは頼むからやめてくれ、頼むっ!この通りだあーーーっ!!」


ウィルは涙と鼻水を流しながら何度も謝罪した。ユーゴはちょっとやり過ぎたかなと思ったが、まあ良い薬になっただろう。そこに立ち会った全ての関係者が、悪魔の如きユーゴをジト目で見ていたのは言うまでも無い。かくしてスター・ケイプのお家騒動は丸く?治まったのであった。

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