表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
53/102

第53話 冷蔵庫革命①

この回からググッとBAR開業に向けて加速します!


誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

マリーの父親、つまりはユーゴの祖父である《ウィリアム・ケイプ》は世界で初となる魔導冷蔵庫を考案した人物だ。幼い頃から魔法の才に溢れ、王都の魔法学校まで卒業したウィルは、期せずして急に他界した父親の魔導具屋を継ぐ事になる。


既存の魔導具は既にどれも完成度が高く、傾きかけた経営を建て直すためにウィルは新製品の開発を余儀なくされた。そんな折に苦労の末産み出されたのが業界初となる魔導冷蔵庫だった。


それまでは肉や魚は腐る前にすぐ食べるか、塩蔵や加熱処理をして保存性を高めたものしか出回っていなかった。ところが冷蔵庫の発明により、鮮度の良い生の肉や魚を多くの人々が手にすることが可能になったのだ。ウィルはこの世界の料理に革命をもたらした功労者と言っても過言では無い。


ジョージの元を去ったマリーはネグロンの町から出て行った。当然心配をしたジョージは当時何度もスター・ケイプまで足を運んでいたのだが、その度門前払いをされ続けた。


奇しくもジョージのお陰でマリーの破局を知ったウィルは、王都をくまなく探させたが遂に見つける事は叶わなかった。まさか娘がノースに潜伏しているなどとは夢にも思わなかったのだ。


我がままに育った一人娘がたった独りで生きていけるわけが無い。正直もう諦めかけていた、そんな時にユーゴがマリーと共に現れたのである。ウィルはこれまでの事を思い出しならが自室で一人お茶を飲んでいた。


「ユーゴとか言ったなあの子は、生意気なところは父親譲りか。しかしまだ若いのにマリーの様に魔法の才能があると言うし、よく見れば私の若い頃にそっくりじゃないか」


スター・ケイプには男の後継がいなかった。しかしマリーが戻って来た事により、孫のユーゴに家業を継がせる目が出て来たのだ。ウィルはユーゴを追い返してしまった事を徐々に後悔し始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


冷蔵庫に限らず全ての魔導具を動かしているのは魔石と魔法陣だ。内部には魔法陣が電子回路のように描かれているのだが、その塗料は細かく砕いた魔石の粉末と樹液から作られる。


その為、魔導具造りには魔法陣を描く専門の職人の存在が欠かせなかった。マリーは父親譲りなのか絵の才能もあった為、魔法使いにして魔導具まで製作するというとんでもない才の持ち主であった。


「それで私は何をすれば良い訳?」


マリーとユーゴはそのままショールームで堂々と打ち合わせをしていた。


「魔導冷蔵庫は確かに素晴らしい発明なんだけど、問題なのはそのままサイズと値段だと思うんだ」


「でもどうしても氷の魔法陣が複雑すぎて、あれ以上は小さく出来ないわ。それだって常に予約待ち状態で売れてる訳だし、何も問題なんて無いんじゃないの?」


「そうだね、それは上流階級だけを相手にしている今だからさ。上流階級の人口は今後も増えない。これからは中流階級以下の人達も相手にしていかないと、数年後に商売が先細りしていくのは目に見えているよね」


「流石はユーゴ坊ちゃまっ!旦那様と同じ事を仰るなんて。これでスター・ケイプも将来安泰ですな」


「ちょっとハンズさん、僕は後を継ぐなんて一言も……」


「まあまあ、それはともかく具体的にはどうするのよ。魔法陣は私がいれば幾らでも描けるけど」


「例えばさ、魔法陣をこう二枚重ねたらどうなる?」


「へえー変わってるわね、やった事はないけど効果は二倍以上になるんじゃないかしら。でも魔法陣のサイズは小さくならないわよ?」


「いや、使うのは氷魔法じゃなくて、水魔法と風魔法さ。この二つなら魔法陣のサイズはかなり小さく出来るだろう?


ちょっと実験してみようか、僕が水魔法を使うから母さんはそれを風魔法で乾かしてみて」


ユーゴはそう言うと辺りに細かい水の粒子を発生させる。マリーは言われるままにそれに風を当てて気化させていく。するとどうだろう、辺りの気温が僅かだが明らかに下がったのだ。


「えっ、何これ?凄く涼しいんだけど……」


マリーはびっくりした様子だ。今では当たり前だがこれは夏に玄関先に撒く打ち水と同じで、いわゆる気化熱という奴だ。


「うーん簡単に説明すると、水は乾く時に周りの熱を奪うんだよね。それを応用すれば空気を簡単に冷やす事が出来るんだよ」


「「えーーーーーーっ!!!」」


「ユ、ユーゴお坊ちゃまっ、も、もしそれが本当ならば、その技術は冷蔵庫業界に新たな革命をもたらしますぞっ!」


「え、そうなの!?しかもこれの良いところは初級魔法の魔法陣でも製造が可能な所なんだよ、そうすれば小さくて安いものが作れるでしょ」


「アンタさらっととんでもない事言ってる自覚ある?やってみないと分からないけど、多分クローゼットの半分くらいのサイズまで小さく出来るわよ……」


それはBARでよく使われる1200×600mmのコールドテーブルと同じくらいのサイズだ。ユーゴは皆と全然違うところで一人テンションが上がっていた。


「じゃあ試作の方は極秘で進めておいてね。あとノースで建築中の家なんだけど、良かったら僕の方で買い取っても良い?どうせ母さんがあそこに住むのは許してもらえないでしょ?」


「せっかくの親方達の気持ちだけど多分そうなるかなあ、ユーゴが買い取るって言うなら誰も反対はしないと思うわ。でも、あそこは今でこそ落ち着いてるけどノースよ、大丈夫?」


「うん、僕ももう立派な冒険者だからね。それにアイラさんは僕より強いし大丈夫でしょ」


ユーゴはなにもボランティアで建物を買おうとしてる訳では無かった。実は煉瓦を貼っている最中に気が付いたのだが、ノースはニューヨーク近郊のブルックリンの様な佇まいがある。


この煉瓦の建物を、外からは一見BARとわからない様に改装したら面白いんじゃ無いかと閃いたのだ。かくしてユーゴの「スピークイージー」なBAR開業計画は、突如なんの前触れもなく始まる事になったのだった。

ご愛読ありがとうございます。 よければブックマーク、

評価していただけると嬉しいです。


画面下にお好きな星を入れて頂けると、

毎日更新を頑張れます。


☆☆☆☆☆→★★★★★


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ