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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
52/102

第52話 頑固な祖父

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

翌日、ユーゴとアイラはマリーと共に、スター・ケイプのお店の近くまで来ていた。


「たぶん僕らが行くとまた門前払いされちゃうと思うんだ。先に母さんが顔を出して、後から僕らがフォローする感じで行こうか」


「大丈夫かしら?」


「さすがのお爺ちゃんも一人娘の事は心配だと思うよ、それに孫は子供以上に可愛いって言うしね」


「アンタ自分でそれ言うっ?」


「ハハハ、まあともかくしれっと顔出して見なよ」


「うん、ユーゴがそう言うなら……」


ユーゴとアイラは建物の陰からマリーの様子を見守る。フードを脱いだマリーがおどおどしながら近付いていく、すると。


「いらっしゃいま……マ、マリー様ーーーっ!?お帰りなさいませっ、私ずーっと心配しておりました……」


昨日の店員は涙を流して喜んでいた。マリーを知っている事からも恐らく古株なのだろう。


「旦那様も近頃はすっかり元気が無くなられて、でもきっとマリー様の顔を見たらすぐにお元気になられるかと」


マリーが向こうからユーゴらを手で招く、二人は昨日の事もあるので恐る恐る近づいた。


「お前達は昨日の!まさか今度はマリー様をっ」


「いえハンズさん違うのよ、この子は私の息子のユーゴよ。あとお友達のアイラちゃんね」


「お友達……」


マリーの小さなボディブローがアイラに突き刺さる。


「左様でございましたか!そうとは知らずこのハンズ、昨日は大変失礼いたしました」


ハンス、ではなくハンズはユーゴらに昨日の件を謝罪した。店員の名前を知ったユーゴは心の中でひとりごちる。


(惜しいっ、何故濁るっ。東◯ハンズ……)


「ささ、マリー様お疲れでしょうから中へどうぞ。皆さんも是非ご一緒に、きっと旦那様もお喜びになると思います」


ーーーーーーーーーーーーーーー


ユーゴらはひとまず応接室に通される。流石は魔導冷蔵庫で名を馳せたスター・ケイプだ。トマス商会ほどではないものの調度品は一流の物ばかりだった。


程なくして奥から先ほどのハンズに続いて、細身で白髪の気難しそうな男性が現れた。まさかの男の第一声はこうだった。


「ふん。よくもうちの敷居が跨げたもんだな、マリー」


「ゴメンなさい……父さん」


(ちょっとユーゴ!めっちゃ怒ってるじゃないっ)


「そしてユーゴ君だったかね?私はジョージ・エジリという男とは何の縁もゆかりも無い、したがって君とは赤の他人だ」


(うわーこの爺さん相当の偏屈だぞ。しかし、いきなりこの塩対応はちょっとムカつくな)


「初めましてユーゴ・エジリと申します。御社のご高名は田舎町のネグロンにまで響き渡っております。しかしながら天下のスター・ケイプのご代表ともあろうお方が、行方不明の一人娘を探し出した初対面の赤の他人に、自分の名前も名乗らずあまつさえお礼の言葉の一つも言えないんですね。あービックリしたー (棒)」


ユーゴは反射的につい喧嘩を売ってしまう。


「ちょっとユーゴ、父さんに対してなんて失礼な事をっ」


「いえ、僕は事実を述べたまでです。母を送り届けに来ただけですので、それでは失礼します」


「なっ、何という失礼な小僧だっ。ハンズ、その二人にはお引き取り願いなさい!」


ユーゴはアイラに目配せをすると、そのまま二人とも応接室から出て行った。


「ユーゴ、ちょっと待ちなさいってば」


マリーとハンズは慌てていたが、こちらとしてもここは引く訳にはいかない。


(うん、母さんのフォローに徹しようと思ったけど無理っ!あんな偏屈じいさんもう知らないっ)


ユーゴは全く話にならないと見るや、ひとまず自分が悪者になる事で、母に対しての溜飲を下げる作戦に切り替えたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「もうー、急にユーゴが怒り出したからびっくりしちゃった!でもお爺ちゃんもあんなに意固地にならなくてもね〜」


とは一緒にいたアイラの談。二人は北ブロックの建築現場まで戻って来ていた。


親方達に、もしかしたらマリーがここには戻って来れない可能性を伝えたが、自分達が好きでやってる事だから構わないとの返事だった。


それを聞いたユーゴはようやく気持ちが落ち着いたのか、やりかけだった煉瓦造りを再び手伝う事にした。


単純作業を繰り返している内に、ユーゴはふとある事を思いつく。目には目を、冷蔵庫には冷蔵庫を。あの頑固な祖父を、もし魔導冷蔵庫の技術でギャフンと言わせたら、少しは聞く耳を持つのではないか?そう思ったのである。


そうと決まれば善は急げだ。それにはまずマリーの協力が不可欠となる。ユーゴはスター・ケイプに再び戻ると、ハンズにお願いしてこっそりマリーを呼び出した。祖父は基本的に普段奥に引っ込んでいる様なので堂々と店先で密会する。


「もう、ユーゴったら急に怒り出すから私もどうして良いか分からなかったわよー。お陰で私はなんかすんなり許してもらえたっぽいけど」


「ごめんごめん、お爺ちゃんがあんまり頑固だからつい僕も熱くなっちゃって」


「それで、やっぱり謝りに来たの?」


「ううん、その逆!お爺ちゃんをギャフンと言わせる算段を思い付いたんだ」


「えーっ!?それっていったいどう言う事」


ユーゴは不敵な笑みを浮かべるのであった。

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