第46話 魔導冷蔵庫
日曜日なので頑張って二話アップします!
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ヴィクターズ開店の準備がひと段落し、少し手の空いたユーゴはギルドの解体部門に来ていた。BARの必需品である冷蔵庫の研究をする為だ。
この世界の冷蔵庫はいわゆる魔石を動力とした魔導冷蔵庫なのだが、ほとんどが大型でウォークイン出来るのでむしろ冷蔵室と言っても良い。ギルドの冷蔵室はさながら倉庫と呼べる大きさだった。
ちなみに飛空亭の場合は地下室が冷蔵室になっている。厨房側がもっとも冷えていて4°Cくらい、ホール側はエールに合わせて13°Cくらいまでと温度帯が幅広い。
「アブさん、中まで見せて貰ってありがとうございましたっ!」
「おうユーゴ、お前さんならいつでも大歓迎だぜ。また遊びに来な!」
革エプロン姿のアブドールが、魔物の血がついた包丁を持ちながら手を振る。ホッケーマスクを被らせたらさながら◯ェイソンだ。
魔導冷蔵庫もとい冷蔵室は、王都の〈スター・ケイプ〉と言うメーカーしかノウハウを持っていないらしく、ギルドの冷蔵室もわざわざ呼び寄せて設置をして貰ったそうだ。
魔導具の動力である魔石は、魔力を蓄えた電池みたいな物だ。例えばゴブリンの魔石に蓄えられた魔力を1とすると、オークの魔石に蓄えられた魔力は8と言った感じだ。
魔導具には電気回路の様に特殊な顔料で魔法陣が描かれており、電池の代わりに魔石をはめることによって動かす事が出来る。
また、魔導コンロがそれほど大きく無いのに、一方で魔導冷蔵庫はどれもサイズが馬鹿デカいことも不思議であった。こればっかりは魔法陣に詳しい人物に聞いてみるしか無い。
(飛空亭には魔導コンロもあるし、今度父さんに相談してみるか?)
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次の日、ユーゴはたまたまシフトが一緒になったバーバラに聞いてみた。以前プレゼントした髪留めを使ってくれている様で嬉しい。
「バーバラさんってウチではもう長いですよねー?」
「そうね」
「飛空亭の魔導コンロって何処の業者さんかご存知ですか?」
「ジョージはなんて?」
「あ、これから聞こうかなと思ってるんですよ」
「そう、じゃあ私が聞いといてあげる」
「えっ、バーバラさんが?」
「多分その方が良いわ、任せて」
「分かりました、ではお願いしますっ!」
珍しくバーバラからの申し出なので断る理由も無かったが、この時ユーゴは何か変だな?とは思ったもののすぐに忘れてしまった。
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その晩。珍しくつまみを食べながらエールを飲んでいるジョージに、バーバラが声を掛けた。
「あら、あなたがつまみなんて珍しい」
「まあな、お前と初めて会った時も木の実を食べてたっけ」
「ちょっと話良い?」
「ん、どした?」
ジョージの最近のお気に入りは〈ネグロン・カラシーナ〉をたっぷり添えた田舎風パテだ。エールやワインのつまみにはぴったりである。
「今日ユーゴに聞かれたのよ」
「ほう、何をだ」
「魔導コンロの業者は何処だって」
パテを食べていたジョージのフォークが止まる。
「ふーん、それで?」
「私から聞いとくって言っといたわ」
「そっか」
「そっかってどうするの?」
「俺から説明すべきだろうな」
「あら、意外ね」
「ユーゴももうガキじゃ無いしな」
「そ、頑張ってね」
バーバラは最後の一欠片を横取りすると、パクっと口に放り込む。
「あー、俺の最後の一欠片食べやがったっ!」
「コレいけるわね」
「ったく。ユーゴが留守の間は頼むぜっ」
「あら、それが人に物を頼む態度かしら?」
「くっ、分かった悪かったよ。わざわざ気を使ってくれてありがとな」
「それで宜しい」
バーバラは軽口こそ叩いたが、この件に関してジョージがナーバスになるだろう事は予想していた。
魔導コンロの業者を調べれば自ずと王都の〈スター・ケイプ〉にたどり着く。恐らく今のユーゴは自ら業者を訪問するであろう。
「ま、自分で撒いた種だしね」
「ぐっ、いつでも謝る準備は出来てる」
それから一週間後。ジョージから許しをもらったユーゴは、アイラと共に再び王都へと出発した。目的はヴィクターの酒店の視察と、魔導冷蔵庫の業者〈スター・ケイプ〉への訪問である。
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