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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第三章
45/102

第45話 ヴィクターズ

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

ハインの薬屋のカフェテラスに、ヴィクターが久し振りに遊びに来ていた。ユーゴと待ち合わせをする為である。


「お待たせしましたー、ヴィクターさんお久しぶりですっ!」


「ユーゴさんもお元気そうでなりよりです」


二人は笑顔で固い握手を交わす。


今日会ったのは他でもない、先日のマスタードの打ち合わせをする為だ。ユーゴは陶器の瓶に詰めた二種類のマスタードを持参した。一つは先日のディジョンマスタード〈もどき〉、もう一つはいわゆる粒マスタードだ。


早速それぞれの味見をして貰う。


「こっちの粒々は普通のカラシナの酢漬けですか?」


ヴィクターはひと口食べてみる。


「これは美味しいですねっ、私が今まで食べた物の中ではダントツですよ」


「ブドウ酢だけだとただ酸っぱいだけなので、未完熟のぶどうジュースも混ぜたんです」


「たったそれだけでこんなに変わるんですねー、という事はこっちの黄色いペーストは……ん、あまり辛くない!?しかもクリーミーですっ!こ、こっちはいったい?」


ユーゴは〈もどき〉の方も詳しく作り方を説明する。その製法の違いとアイデアにヴィクターはとても感心した様子だった。


「それでこの二種類を、是非商品化出来ないかなーっと思いまして。例えばブランド名は《ヴィクターズ》とかどうです?それで粒の方は前からあるので〈粒カラシーナ〉ペーストの方は僕のオリジナルなんで町の名前から〈ネグロン・カラシーナ〉とか?」


「えーっ、本当にヴィクターズで良いんですかっ?あとその〈カラシーナ〉っていう響き良いですねえ」


「あっ、カラシーナはただの駄洒落です。カラシナよりも響きが可愛いかなあと思って」


本当はマスタードが良いのだが、突拍子もなさ過ぎて説明に困るので音の感じだけ真似したのだ。


「これは絶対に売れると思います、早速商品化に取り掛かりましょう!あ、そうだ。今日は私からもご報告がありまして、実は先日アイデアをいただいた酒屋がついにオープン出来そうなんです」


「えっ、本当ですか!」


もし酒屋が出来ればわざわざ自分で商品を探す手間が省ける。ユーゴのテンションは一気に上がるのだった。


「はい、それで今日はサンプルとして全ての商品をお持ちしたので、是非ユーゴさんに味を見てもらおうかと」


「わーっ、ありがとうございますっ!」


まさかの全ての試飲ができるらしい。流石はヴィクターである。


ヴィクターは馬車から木箱を幾つか持ってくると、ハインの許可を取ってテーブルにお酒の瓶を並べ始めた。


今回の酒屋開業に当たって、ヴィクターは全てのコネを使い各地の酒を集めていた。トマス商会はもちろんのこと教会に寄付をして情報を集めたり、ドワーフのバギーやここにいるエルフのハインにも紹介状などを書いて貰ったのだ。


「さてどれから行きましょうか?」


ユーゴはここぞとばかりに鑑定スキルを発動する。先ずは教会系の薬草酒あたりが面白そうだ。



【ヴェルムト】(甘味果実酒)品質:普通ーー

ー入手難易度Cー

・白ワインにヴェルムト、ゲンチアナ、ドワーフネイル等、各種ハーブ、スパイスを漬け込んだ、ヴェルムト修道会の秘薬。



(こ、これはもしやベルモットでは無いのかっ!)


「ヴィクターさんこれは?」


「お目が高いですね、それはヴェルムト修道会の秘薬です。門外不出と言いながら、袖の下を渡したらすんなり売ってくれましたよ」


ユーゴは早速飲んでみる。ハーブや柑橘の爽快感の後に複雑な甘味と苦味の余韻が心地良い。ユーゴの記憶が確かならば、これは前世で飲んだスイートベルモットに間違いなかった。


「もしかしてこれの辛口とかも有ったりします?」


「はい、これは別の修道会の物ですが色もかなり澄んでいて味もシャープです」


飲んでみると確かに、どこぞメーカーの味と似たドライベルモットの味である。この時ユーゴは確信した、この世界でも〈マティーニ〉と〈マンハッタン〉が作れると。


「ヴィクターさんっ!!」


ユーゴはヴィクターの手を取って腕をブンブン振って握手した。ヴィクターはあまりのユーゴの豹変ぶりに、ただビックリして苦笑いをするしか無かった。


ユーゴが全てのテイスティングを終えた結果、かなり現代の酒と酷似した物が多い事が判明する。


そして今さらだがトマス爺の言っていた通り、創造神の手抜きっぷりに感謝せざるを得ないユーゴなのであった。


それから二人は酒屋オープンに関しての打ち合わせを始めた。お酒だけだと商品ラインナップが乏しいことから、ユーゴはリカーショップの様に調味料なども置くことを勧める。そこでカラシーナも一気に宣伝するという寸法だ。


結局、酒屋の名前はカラシーナのブランド名と統一して《ヴィクターズ》に決まった。そしてその後ヴィクターズ・ブランドは貴族や上流階級の間で瞬く間に噂になっていくのであった。

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