第44話 念願の食べ放題
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久しぶりにネグロン近郊の森で薬草採取をしたユーゴらは冒険者ギルドに来ていた。
ハイポーションの材料は以前行った〈西の森〉では無く、町の南に位置する〈迷いの森〉にしか生えていない。ハインにはやや危険が伴う為、ユーゴとアイラの二人で出掛けたのだった。
「やっほーケイト久しぶり〜。買取お願いねー」
「あら、二人ともお久しぶり。冒険者カードを預かるわ。あれっ?ちょっとアイラ……そしてユーゴも!何でいつの間にかランクアップしてるのよ!?」
「あーそれ?この間王都に行った時にコリーさんが勝手に決めて、ランク上げてくれたんだよねー」
「コリーさん?ってまさか伝説のギルドマスター〈エイダ・コールマン〉の事!?何回も本部に行っている私だって一度も会ったこと無いのに……」
「うん、なんか成り行きで勝負したんだ。二人共秒殺だったけど、アハハ」
「アンタたち本当大概にしなさいよっ、やっぱあのジョージさんの弟子だけの事はあるわ、はぁー」
「直ぐに来れれば良かったんですけど、中々忙しくしててすいません」
「まあ良いわ。で、今日は何の買取?」
「取り敢えずここに有るのは魔石だけなんだけどっ」
アイラはそう言ってカウンターの上に革袋を逆さまに開けると、中から鶏の卵大の魔石がごろごろと出て来た。
「ちょっと見せて貰える?」
ケイトはいつもの様に魔石を光にかざしたり、掌で軽く転がしている。地方のギルド職員で鑑定のスキルまで持っているものは稀にであり、多くの者は経験で判別するのだ。
「ちょっとこれオークの魔石でしょ?しかも八個も。肝心の肉の方はどうしたのよ、誰かに依頼したのっ!?」
ケイトが慌てるのも無理はない。オークの魔石は大銀貨2枚、約2万円程度の買取だが、オークの肉は状態が良ければ一体で金貨2枚、約20万円にもなるのだ。
100キロくらいの物なら持ち上げてしまう冒険者とはいえ、体重200キロを超えるオークを普通に担いでくるのは流石に無理で、馬車の荷台や台車に載せて運ぶのが一般的だ。
「えーっとそれなんですけどー、ちょっとお耳を」
ゴニョゴニョゴニョ……
「アンタたちもう無茶苦茶ね……でもそれが本当なら此処じゃ不味いわねっ。一旦裏の搬入口に回ってくれる?」
ユーゴらは馬車が横付け出来るような、ギルド裏の大型搬入口に歩いてやって来た。ここに来るのは以前ジョージに魔物解体の手解きをしてもらった時以来だ。
「〈アブ〉さーん!ちょっとお願い出来ますかーっ!」
「おお、ケイト。それに、いつぞやのジョージの息子じゃねえかっ!どうした、今日も見学か?」
現れたのは筋骨隆々で身長2mを超える、一見熊の様な見た目の男、解体部門のチーフギルド職員だ。魔物のなめし革で作った自作エプロンを首からさげている。ユーゴは初めて会った時、本当に熊かと思ったくらいだ。
レストラン等では肉の解体担当を〈ブッチャー〉と呼ぶが、アブドールの名前を初めて聞いた時、なんてピッタリな名前なんだとユーゴが思ったのは余談である。
「この子達がオークを討伐したらしいんだけど、なんでも今此処に持って来てるみたいなんですよー」
「お前ら小さいのに二人で凄えなっ!良いぞ、どんどん持って来いよ」
「良いですか?それでは遠慮なく……」
ドスンっ!
「うおぉぉっ!?今何処から出したーっ?」
王都から帰ったユーゴは、半人前を卒業したという名目でジョージから無期限でアイテムボックスを貸して貰えることになったのだ。もっとも事ある毎にハインに貸し出すよりは、自分の息子に持たせた方が良いという打算もあったのだろう。
「なんでもジョージさんのアイテムボックスらしいんですよっ、わたしも本物は初めて見ました!」
「お前ら無茶苦茶だな……」
一人でオークの死体を持ち上げながら喋っているアブドールの方が、ある意味滅茶苦茶なのだが。
「でっ?何体あるんだ。全部出しでみろ」
「あ、はい」
ドドドドドドドスーンっ!!
辺りにホコリが舞った。
「あのなあ……加減っつーもんがあんだろっ!」
「あ、何かすいません……」
そこには組体操のピラミッドの様に、オークの死体がシュールに積み重なっていた。
流石に八体全部をアブドール一人で捌くのは時間が掛かる為、他の解体スタッフ二名も応援に駆けつける。ユーゴも解体は嫌いではないので手伝う事にした。
流石に解体専門のスタッフだ。ユーゴもかなり上達したのだが、一体辺り15分とスピードが全然違う。結局四人がかりで30分ほどでオークの解体が終了。ユーゴは返り血をいつもの様に水魔法で綺麗にするのであった。
「皆さんお疲れ様、じゃあ二人は表に回って。買取を終わらせちゃいましょう」
「アブさんまたーっ、勉強になりましたーっ!」
「おう、ユーゴ。いつでも遊びに来いやあー」
かくして二人はオークの肉から金貨16枚と、オークの魔石の大銀貨16枚を手にしたのだった。
ちなみに本来の目的である、ハインからの依頼品の薬草の買取額は金貨1枚と大銀貨2枚。アイテムボックスがある冒険者にとっては正にオークさまさまである。
もっとも、たった二人で八体のオークを殲滅出来てしまう冒険者にまで成長した事が、今回の冒険での一番の成果だろう。
「ね〜ユーゴ、今日何食べよっかー?やっぱオークだよねえっ?」
「以前話してた、食べ放題の夢が叶いましたね。ハハハ」
血まみれの解体現場帰りなのにも関わらず、相変わらず食いしん坊なアイラにほっこりするユーゴであった。
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