第40話 麗しの我が家
今回はエッチな展開があります、苦手な方ゴメンなさい。
誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。
宿に戻るとヴィクターが興奮した様子で、身振り手振りを交えてコリーの話やギルドでの出来事をハインに説明する。
ハインはさもビックリした様な表情をしているが、ユーゴとアイラはそれをジト目で遠巻きに見ていた。お金になる事以外にはさほど興味のない、ハイン得意の嘘リアクションだ。
三者三様それぞれの思惑を持って臨んだ王都遠征であったが、各々が想像以上の成果を得られたのでは無かろうか。
明日は朝も早いと言うことで、今夜は軽めの食事で済ませる事にした。もっともユーゴとアイラの二人は買い食いだけでも相当な量を食べていたのだが。
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翌朝、ヴィクターに行きと同じ御者を手配してもらったユーゴら一行は、予定通り王都へと出発した。ヴィクターはしばらく王都でやる事があるとの事で、後日またネグロンの町での再会を固く約束して別れた。
今回の遠征は決して順風満帆では無かったものの、結果だけを見れば非常に実りのある旅だった。
王都に来るまでは、意外とこの世界の事を分かっている様で分かっていなかった。貴族や商人や冒険者でも無い限り、一般人は産まれた領地から外に出る事なく一生を終える。
ユーゴ達の住んでいる国、サヴァラン王国はいわゆる絶対王政で、現在は七代目の賢王 《ブリア・サヴァラン》が治めている。
ジョージが現役の頃はまだ暴君と言われた六代目先王の時代で、常に他国との紛争が絶えなかったらしい。ユーゴが生まれた年に永らく続いた戦争が終結し、それ以降は平和な世の中が続いている。
ハインからさわりだけ聞いた話だが、ジョージが引退をするきっかけになった膝の怪我も、実はこの戦争が原因であった。
ジョージはこの戦争でまさに獅子奮迅の活躍をし、怪我と引き換えに莫大な富を手に入れて引退したようだが、詳しくは本人に聞いてみないと分からない。
同じく戦争で活躍したネグロン伯爵の勧めもあって、伯爵領の首都ネグロンで宿屋をオープンさせる事になった。盗賊峠を通れば王都からネグロンまでは西に向かって馬車で五日の距離である。
帰りは荷物もほぼ無い上に、ユーゴとアイラの二人は常に馬車の脇を走っているものだから、一行は予定を大幅に短縮して四日でネグロンに到着したのであった。
もちろんその間も二人は剣の訓練を欠かさなかった。途中で出くわした魔狼の群れなどは一方的に蹂躙され、なんだか可愛そうな程であった。
というわけで無事にネグロンの町に帰って来たわけであるが、二人のペースに付き合わされたハインだけは、寝不足だしお尻が痛いとの事で一人不満そうであった。
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「「ただいまーっ!!」」
飛空亭にユーゴとアイラの声が響き渡る。すると奥からユーゴと入れ違いで下働きをするとこになった、元冒険者の〈ガストン〉が現れた。
「ユーゴさん、アイラの姐さん。長旅ご苦労様でございました!ささ、中へどうぞっ」
約二週間振りに見るガストンは完全に下働きとして馴染んでいた……二人がいない間の苦労が目に浮かぶようである。すると厨房からジョージが二人に気が付き出迎えてくれた。
「おお、お前達無事帰って来たか、おかえり。初めての王都は楽しかったか?」
ジョージから労いの言葉を掛けてもらうと、旅の疲れは一気に吹っ飛んだ。話したい事や聞きたい事が沢山ある。旅は少年を確実に大人へと成長させるのだ。
二人は夜の営業を手伝うと申し出たのだが、明日からで良いとのことで、今日は皆の好意に甘える事にした。今回の旅ではお土産もたくさん買ってきた。
まず父さんには、コリーさんから預かってきた手紙と謎の蒸留酒。鑑定によるとどうやら【ダークエルフの火酒】らしい。是非後でご相伴に預かりたいものだ。バギーさんに打ち直してもらった剣も後で見せびらかそう。
そしてバーバラさんには王都の露天で買ってきた、シンプルな銀細工の髪留め。白金髪で色白のバーバラさんによく似合うと思う。渡すときにアイラさんの視線を感じたが、気付かなかったことにする。
ついでにガストンさんには魔牛ロングホーンのビーフジャーキー。酒のつまみには最高なのだ。
他にもアルバイトの女性スタッフ達には、王都で今流行っている綺麗なガラス細工のアクセサリーなどを選んできた。とても喜んでくれたようで僕はホッと胸を撫で下ろす。
アイラはバギーの店でオケラになってしまった為お土産は何も無いのだが、店のスタッフははなからアイラにはお土産など期待していない。その為にユーゴがいると言っても過言ではないのだ。
ジョージの計らいで、久しぶりの風呂に入らせて貰える事になった。飛空亭のお風呂は男女別になっている為、ユーゴらはそれぞれ旅の疲れを癒すことが出来た。
風呂上りに二人は、たまたま酒場にいた常連客からエールを一杯ずつご馳走になる。
「「うんまーっ!!」」
改めて思ったが飛空亭のエールは王都のどの店よりも美味しいのだった。
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まだ宵の口だったので、アイラはユーゴの部屋に寄らせてもらう事にした。因みにこの部屋に来たのは何も今日が初めてではない。
しかし今日はいつもと状況が違っていた。一つは風呂上がりである事、そしてもう一つはお酒が少しだけ入っている事だ。
ベッドに腰掛けたユーゴの横に、急に剣幕になったアイラが詰め寄る。
「ちょっとユーゴっ、何なのあのバーバラさんへのお土産っ!」
やはり見られていたようである。
「いやー、普段お世話になってるから似合うかなと思って、ハハハ」
アイラは露骨にふてくされた表情で言葉を続ける。
「私にはああいうのくれた事ないよね〜、どうせ食べ物だけ食わせとけば良いと思ってんでしょっ」
アイラは完全に怒っている様子だ。ユーゴはそそくさとバッグの中から小さな木の箱を取り出す。
中にはおよそ世の女性達には全くウケなそうな、両手剣を模した金色の髪留めが入っていた。
「実はちゃんとアイラさんにも買ってあったんですけど、渡すタイミングに困っちゃって」
「な、な、何これ、超可愛いーっ!これユーゴが私に?ありがとうユーゴーっ」
世の女性達とは一線を画すセンスの持ち主アイラには、どうやら大剣を模した髪留めはどストライクだった様である。恐るべしユーゴの選球眼。
髪留めを留めたアイラは嬉しそうにユーゴの腕に抱きつく。しかしこの日は風呂上がりで防具を外しているのを失念していた。
防具から解き放たれた、アイラのはち切れんばかりの双丘がユーゴの腕と背中に押しつけられる。反射的にユーゴの全神経がその腕と背中に集約される。
アイラもアイラでユーゴの温もりを直に感じて、防具をしてなかった事に気が付くと急に恥ずかしくなってしまった。
二人はバジリスクに睨まれた冒険者の様にしばらく動くことが出来なくなっていた。
その間にして約十秒、ユーゴの脳内では脳細胞とシナプスが完全にパニックを起こしていた。
(こここ、これはっ!この間の〈また今度〉っていう展開なのか!?今夜が今度なのかっ?どどど、どうすればっ!?)
ドッドッドッドッドドドドドドッ
ユーゴの爆発的な心臓の鼓動が、腕越しにアイラの胸にまで響いてくる。
(な、何これ、凄いっ)
アイラは年上らしく意を決して言葉を紡ぎ出した。
「ユーゴは私の事好き?」
風呂上りのせいか、いつものおちゃらけたアイラではなく、そこには一人の妖艶な大人の女性がいた。
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