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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第二章
35/102

第35話 偉大なる発見

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。


なかなかバーテンダーらしい話に移りませんが

そもそも酒の種類があまり無い世界なので

今しばらくお付き合い下さいませ。

夕方まではまだまだ時間がある。バギーの店を出たユーゴはまず先に市場を見たいと言い出した。アイラはもう鍛冶屋で大満足だった為、あとはユーゴの趣味に付き合う事にした。


「いろんな野菜や果物がありますねー。あっこれって何ですか、もしかしてライム?」


「ユーゴさんそれは〈ライの実〉です。青いのは酸っぱいですが、熟すと黄色くなってそのまま食べられますよ。美容と健康に良いとかで私もたまに食べます」


流石はヴィクター、商人だけに良く知っている。


「へーそうなんですね、ちなみにこの青いのを絞ってさっきの串焼きに掛けたらもっと美味しくなると思うんだよなー。お店の人に教えてあげようかな?」


「えー本当っ!なんだかまた食べたくなって来ちゃった」


「ちょっ、ユーゴさん!そんな面白いアイデアを人に簡単に教えるもんじゃありませんっ。ライの実は青いうちは何の価値も無いとまで言われてるんですから、絶対に他所で言わないで下さい。


なんだか商人の血が騒いで来ましたっ!ちょっと気になるんでもう三本買ってきて早速試してみましょう!少し待っていて下さい」


「やった!ラッキー。ヴィクターも案外食いしん坊だね」


「いや、多分そこじゃないと思いますけどね」


ほどなくしてヴィクターが串焼き肉を買ってきた。ユーゴらは人目に付かない様にライの実を適当にカットすると、串焼き肉に絞りかける。


「「いただきまーす!」」


ガブっ、ムシャムシャムシャ、モグモグモグ、ゴクンっ。


「旨んまっっ!!さっきのも美味しかったけどそれ以上だね!」


「やっぱり!味が更に引き締まりましたね、肉の臭みも完全に消えてますし」


「確かにっ!庶民には少し物足りないかも知れませんが、上流階級には臭みのない方が絶対に喜ばれます。ユーゴさん後でお礼しますから、この事は是非内密にお願いしますっ」


「それくらい全然お安い御用ですけど、お肉のおかわりまで頂いて、かえってご馳走様でした」


「なんのなんの、ユーゴさん。気になる材料があったらどんな些細なことでも良いのでどんどん言って下さい!片っ端から私が買いますので」


ヴィクターは市場に来てから途端に元気になった。ユーゴの料理知識と味覚には商売のヒントがまだまだ隠されている、それを身をもって感じた瞬間だった。


実は市場に来たのにはある目的があった、ユーゴはダメ元であるものを探していたのである。この時代にはまだコーヒーは無くとも、コーヒーの実そのものはフルーツとして発見されているかもしれない。それを加工さえすればコーヒーが飲めるのだ。


そんな事を考えながら、見た目がさくらんぼの様に見えるコーヒーの実を探しながら歩いていく、すると。


「あっ、ヴィクターさんこれなんですか?」


「ほお、お目が高いですね。それはバンの実です。最近巷で注目を集め出したフルーツで、奇跡の実と言われているんですよ」


「奇跡の実ですか?」


この時代の魔法などはすでに奇跡みたいなものだが、それより凄い奇跡などあるのだろうか。ユーゴがそんな風に思っていると。


「はい、この実を2、3個齧るとなんとその日は寝なくてもいられるんです。徹夜で仕事を仕上げなくてはならない事なんてザラにありますからね、我々商人には今や必需品ですよ」


「寝ないでいられるですって!?」


ユーゴはピンと来た、カフェインだ。これはもしかするとほぼコーヒーの実で間違いないかも知れない。


「ヴィクターさん、驚かないで聞いて下さいね。以前話していた〈コーヒー〉という飲み物の原料は、ほぼ間違いなくこれに違いありませんっ」


「なんですって!?まさか奇跡の実がコーヒーの原料だとは……これは絶対に他には漏らしてはいけませんよっ!アイラさんも良いですねっ!」


「う、うん」


Cランク冒険者にも全く後れを取らなかったアイラも、この時ばかりはドン引きしてしまうほどヴィクターは鬼気迫る表情で興奮していた。


「これは是非買っていきましょう。一応僕の方でも一度実験をしてみないと、ハッキリとした事は分からないので」


「はい、お願いいたします。私の方でも安定したバンの実の仕入れルートを作っておきます!」


ユーゴはネグロンの町に帰ってから、また一つ新たにやる事が増えたのであった。ずっと気になっていたコーヒーの手がかりを手に入れてスッキリしたユーゴは、次はこの世界のお酒をくまなく探して見ようと思い立つ。


幸にしてここは王都である、ネグロンとは違い世界中から様々なお酒が集まる事は間違いない。心なしかユーゴの足取りも軽くなる。


「ヴィクターさん。因みにエール以外のお酒ってどこに行けば手に入りますかね?」


「お酒ですか?昨晩飲んだ火酒の様な?」


「はい、火酒や果実酒なんかも良いですね」


「なるほど。入手方法はいくつかありますが恐らくは大まかに三つに分類出来るかと。一つは修道院などが作っている秘薬。もう一つがエルフやドワーフなどの種族が作っている火酒です。三つ目は農家や家庭で自分達用に作られている果実酒ですかね」


「なるほど修道院の秘薬ですか」


確かにシャルトリューズなどは現代ではリキュールとして世界中で発売されているが、元々は修道院の秘薬だったと言われている。この時代には酒屋に行けばなんでも揃うと言った商売はまだ存在して無かった。


「仮にそれらの秘薬や火酒、家庭で作られた果実酒やワインを一つのお店で取り扱う事が出来たら、めちゃくちゃ儲かりそうですね」


「いやいやそんな事は、いや待てよ……」


ヴィクターは急に黙り込み、しばらく何かを考えている様だった。


「いける……かも知れません。いや、ユーゴさん素晴らしいアイデアをありがとうございますっ!私の商人仲間のコネクションと新たに手にしたトマス商会の後ろ盾があれば、きっとできる筈です!その役目、是非私にやらせて頂いても宜しいですか!?」


「は、はい、全然良いですけど。むしろやっていただけると僕も助かりますっ!」


ユーゴに錬金術のスキルがあるとは言え、BARで使う全ての酒を造るのは至難の業だ。やはり酒屋さんがあった方が助かる、ユーゴは単純にそう思うのであった。アイラ同様、金にまったく執着の無いユーゴなのであった。


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