第34話 鍛冶師バギー
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鍛冶屋の店主はユーゴの剣を受け取ると鞘から抜き、刀身や細部の造りをマジマジと観察していた。
「小僧。この剣どこで手に入れた?」
(もしかして盗品!?そんな筈無いと思うけど……)
「えっとどこで手に入れたかは定かでは無いですが、父から譲り受けた物です」
ユーゴは嘘は言っていない、入手経路は不明だが恐らく父ジョージが若い頃使っていた剣の筈だ。
「父からだと、父親の名前は何と言うんだ?」
「父はジョージ・エジリと言います」
「なんだとっ!あの鼻垂れのジョージか?」
(えっ、鼻垂れ!?)
今のダンディな父からは想像も出来ないあだ名だが、昔の話であれば分からなくも無い。
「お前の名前は?」
「あ、はい。ご挨拶が遅れました、ユーゴ・エジリと申します」
「私はアイラ・バーレイだよーっ」
店主は何かを納得した様子で、先ほどアイラと話をしていた時の陽気な顔に戻った。
「なるほどなガッハッハ!おれはこの店の店主で鍛冶師の《グレン・バギー》ってもんだ。ドワーフはどいつもこいつもグレンって名前が多いから、バギーって呼んでくれや」
まるでシングルモルト・ウィスキーの様な名前である。ユーゴは頭の中で〈グレン・モーレンジー〉さんや〈グレン・ドロナック〉さんという名のドワーフが並んでいる絵を想像していた。
「もしかして父とお知り合いだったんですか?」
「もう三十年近くも昔の話だがな。小僧が貰ったという剣は、俺が若い頃に打ったいわゆる〈魔剣〉の処女作だ。試し斬りと思って渡したんだが、気に入ったらしくて持っていかれちまったんだよ」
バギーは苦笑いしていた。ちなみに魔剣というのは呪われているという意味では無く、何かしらの魔法によるエンチャントがなされている剣の事である。ちなみにユーゴの剣は、鑑定によると品質は〈普通〉エンチャントとして〈斬れ味1〉が付いている。
「確かにこの剣って無骨でまあまあ重いんですけど、めちゃくちゃ斬れ味が良いんですよ」
「そりゃあ斬れ味に特化しただけの、試作品みてえなもんだからな。俺は装飾の付いた鞘なんてもんは作らねえから、ぱっと見全然気付かんかったわ」
「どおりで私の剣と形が似てると思ったんだ。まさかユーゴの剣もおじさんの作品とは」
「でっ、あの野郎は何処で何してやがるんだ?かれこれ十五年近くは見てねえが」
「父は僕が産まれた時に、膝の怪我もあったみたいで冒険者を引退したそうです。今は地元の町ネグロンで飛空亭という名の宿を営んでます」
「ほう〈飛空亭〉ね。ジョージらしいわな」
「ねーねー、その剣おじさんが造ったんならさ、私にも魔剣作ってよー」
「ああ?簡単に言いやがって、アイラっつったか。お前がさっき選んだ剣だって金貨10枚はするんだぞ。付与する内容にもよるが魔剣となると更に金貨10枚は必要だ」
「うーん金貨20枚か……買ったっ!!」
「はっ?俺の話聞いてたかっ!金貨20枚だぞっ!お前さんそんなに金持ってんのか??」
「うん、多分大丈夫」
アイラはハインの性格をわかっていた。パーティの報酬は基本均等割なので、先ほどの報酬は少なくとも一人金貨40枚である。なおかつアイラはあまりお金に対して執着が無かった。
「あと防具類も、もうちょい良いのにしようかなーっと思ってさ」
アイラの防具は初級者用の最低限の革の防具である。軽くて動きやすい分カバー出来る面積は小さい。
「まあ払えるってんなら、付与の方は直ぐに頼んどいてやる。明日中には出来るだろう。あと小僧!久しぶりに見たその剣もちょっと俺に預けろ。自分で言うのも何だが、あまりにも下手過ぎて笑っちまった、ちょっと手直しさせろ。付与の方も元どおりにしておいてやるから別に良いだろっ?」
「えっ、はい!別に良いですけど」
「オッケー。それじゃあ明日の夕方までには全て終わらせといてやる、それで良いか?」
「はい、明後日の朝には帰るのでそれに間に合う様でしたら大丈夫です」
「おう、それまではコレを貸しといてやる。実際に使ってもかまわねえぞ、恐らくお前の鞘にもぴったりな筈だ」
バギーはそう言うと、アイラが選んだ剣の山から適当な1本を取り出し、ユーゴに渡した。品質は勿論〈高品質〉だった。
「ありがとうございます、よろしくお願いしますっ!」
「やったねユーゴ!」
「お二人ともすいません、私もまだまだ勉強不足でした。裏通りにこんな隠れた名店があるだなんて」
先ほどまで一切話に入って来れなかったヴィクターが、二人に申し訳なさそうにしていると。
「そう言えばあんた居たんだっけ、見たところ商人の様だが間違っちゃいねえよ。何たって格好ばっかりの気に食わねえ冒険者なんざ、ほとんど追い返しちまってたからな!ガッハッハッハ」
バギーはそう言って豪快に笑ったのだった。
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