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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第二章
33/102

第33話 いざ鍛冶屋へ

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

ユーゴら一行は腹ごしらえを済ますと、鍛冶屋が多く集まるエリアにやって来た。


ヴィクター云くこの辺で一番品揃えが良いという店に入ってみた。エントリーモデルから上級冒険者向けの武器まで様々な武器が揃う。最も高い剣などは優に金貨500枚を超えていた。眺めているだけでも1時間は余裕で過ごせてしまう、ユーゴとアイラにとってまさにそこは武器と防具のパラダイスであった。


「うわーなんだか目移りしちゃいますね、でもミスリル合金にはまだまだ手が出ませんよ」


「うわー高っか、でも私もミスリルダガーちょっと欲しいかも」


「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」


奥から店員らしき男が出てくる。見た感じ自ら剣を打つといったタイプの風貌では無かった。男はアイラとユーゴの装備を舐める様に見ると、明らかに落胆した様子でこう言った。


「お客様の雰囲気ですと、この辺りがお手頃かと思います。あと、そこの樽に刺さってる剣でしたらどれでも1本大銀貨5枚で結構ですよ」


エントリーモデルの剣でさえ金貨1枚はするので大銀貨5枚の剣はほとんどが中古だしガラクタばかりである。いわゆるお金の無い駆け出しの冒険者が買っていくのがせいぜいだ。


雑然と樽の中に立て掛けられた数本の剣、その中に何故かユーゴの目を惹く一本の剣が……


あるはずも無く、ユーゴらは十分もせずに店を後にした。


「何さあの店員っ、明らかに田舎者だと思って馬鹿にしてたよね!」


「まあ初級冒険者向けのコーナーを勧められましたし、あながち間違いでは無いですけど」


「すいません、なんだかお気に召さなかったようで。あの店員も見る目が無いですねえ」


「いえ、色々勉強になりました。ありがとうございます。でも品揃えは圧巻でしたよ、完全に予算オーバーでしたけど」


流石に王都だけあって国内で最も物価が高くなっている感は否めない。今回の旅では結構稼いだつもりだったユーゴらだが、上級冒険者への道のりはまだまだ長かった。


「この一本裏通りにもお店があるんですね」


「そちらは古い区画の方ですね、王都の路地もここ二十年で大分拡張してますからね」


「ちょっと行ってみよーよ」


アイラは興味本位で裏通りへと向かってみる、確かに寂れた商店街といった雰囲気で、開いてる店も三分の一程度だ。


ユーゴはふと気になる看板のお店を見つける。剣と盾の袖看板がぶら下がっていることから、恐らく鍛冶屋なのだろうが、やってるんだかやってないんだか分からない。


ユーゴは興味本位で中を覗いてみた。


「アイラさん、ちょっとここ寄って良いですか?ごめんくださーーい」


特に返事は無い。


入り口は開け放ってあるので、中に入ってみる。大分建物に年季は入っている物の、肝心の武器はきちんと手入れされており、価格も王都にしては良心的な設定であった。


「あーっ!私のとおんなじ剣見つけたー。しかも金貨1枚だって。くそ〜っ地元で買った時はもうちょっと高かったんだぞコレっ」


「まあ、仮にその剣が王都で仕入れられた物だとしたら手間賃もかかりますから、地方だと少し割高にはなるかも知れませんね」


ヴィクターがアイラに分かりやすく説明する。と、その時であった、奥から急に大きな声が聞こえて来た。


「表でごちゃごちゃうるせーぞ!冷やかしならとっとと帰れ!」


さっきの店と比べてものすごい剣幕ではあったが、ユーゴは何故か不思議と居心地が良い店だと感じていた。先ほどの店とは違い、店主自らが武器を手掛ける根っからの職人の店なのではなかろうかと思ったからだ。


「すいませーん、ちゃんと買いに来たんですー!」


値段も手頃なので実際幾つかの装備を買おうかな、と思っていたユーゴが返事をする。すると奥から明らかにドワーフ族だと思われる、殺人的な風貌の毛むくじゃらの男が睨みつける様に出てきた。


「あーん、客だと?ったく」


作業中だったのか不機嫌そうに背中を掻きながらやってくる。先ほどの店の店員と同じようにユーゴらの装備を一瞥すると、顎で近くの棚を指してアイラにこう言った。


「お前ならこの辺が良いんじゃねえか?」


その棚はユーゴの鑑定で見るまでもなく、中級冒険者向けの装備が揃っていた。しかも先ほどの店では〈低品質〉も紛れていたが、ここは殆どが〈高品質〉にも関わらず値段もかなり良心的だ。


ドワーフの店主はひと目でアイラの強さを見抜いていた。


「おい姉ちゃん!見たところ戦士の様だが、お前この棚で一番良い剣はどれか分かるか?」


到底客に対する口の利き方ではないのだが、アイラはとくに気にする事も無く答える。


「うーんコレかコレかなあ?あっ、やっぱこっち。持った感じ一番しっくりくる」


アイラは一本の剣を持ち上げてそう答える。それは数ある剣の中でその棚に一本だけ無造作に置かれていた〈最高品質〉の物だった。


「ほう、ただのボンクラじゃ無かったか?ガッハッハ、すまんかったな。俺の剣を使ってくれてありがとよ」


「やっぱり私の剣おじさんが作ったんだ?何か全体的にこの店の武器と似てると思ったんだよねー」


「大体武器を見ればその使い手の技量が分かるってもんよ、ましてや自分が打った剣ってのは愛着があってだなあ」


店主はアイラを気に入ったのかとたんに饒舌になって武器について語り出した。しばらくしてふと連れのユーゴの存在を忘れていた事に気付く。


「おお、すまんすまん、小僧のことなどすっかり忘れとったわ。んっ?……お前の剣、ちょっと見せてみろ」


「えっっ!?は、はい」


店主は先ほど以上に鋭い眼光になると、無造作だが丁寧にユーゴの剣を受け取った。

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