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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第二章
30/102

第30話 二人だけの秘密

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。


命を救う為とは言え、年頃の女性のステータスを勝手にいじり回したのだ。考え様によっては傷モノにされたと言われても、致し方ない。


「もうー、本当にユーゴはピュアだよねー。冗談だよっ。もしかして私の事好きだったりして〜?」


「いやっ、確かにアイラさんは食いしん坊だけど可愛いし。ちょっとドジで抜けてるとこもあるけどスタイルも良いし、僕なんかじゃ釣り合いがっ」


完全に褒めてるんだか、けなしてるんだか分からないがユーゴがこの世界で初めて意識した女性なのだから嫌いな訳がない。ユーゴの顔は真っ赤だった。


それを見ていたアイラの顔まで思わず真っ赤になってしまう。今まで弟の様にしか思っていなかったユーゴに奇しくも命を救われたアイラは、ユーゴを一人の男として意識し始めていた。


数秒の沈黙が続いた。


先に痺れを切らしたのは歳上のアイラの方だ。


「良し、お終いっ!じゃあ今日の事は二人だけの秘密ね。ハインにもだよっ!約束出来る?」


「は、はいっ!約束します。二人だけの秘密です」


〈二人だけの秘密〉その言葉に一瞬だけ二人はときめいたが、互いのやるべき事を理解しうなずいた。先ずはギルドに戻り賊に襲われた事を報告する必要がある。ただし詳細は語れないので普通にユーゴが返り討ちにしたという体にする。


「その前にこの血はどうしよう?流石に不自然だよね、傷も塞がってるし」


「多分僕の水魔法で綺麗に出来ますよ、服の破れは胸当ての境目なので目立たないと思います」


ユーゴはそう言うと掌の上に拳大の水球を創り出し、アイラの出血跡にそれを密着させると魔力で水をぐるぐると動かし始めた。みるみる水が赤黒く汚れていく。仕上げに服に残った水分を水球に吸着させれば完了だ。


「ちょっ、あっ、くすぐったい」


アイラが何故か再び赤面する。


それを見たユーゴは、数秒遅れてその理由に気付く。女性の胸の下を水流でぐるぐるやればどうなるか大体想像出来よう。


「ああっ、今のはわざとじゃ無くて……」


「良いよっ、分かってるから」


二人は再び赤面して沈黙するのだった。


「ほ、ほらっ、早く報告に行くよ!」


アイラは気を取り直して先輩面すると、ユーゴの手を引く。まだ気恥ずかしいが決して嫌ではない、自然と二人の顔に笑みが溢れた。


「はい、では打ち合わせ通りに」


ーーーーーーーーーーーーーーー


二人はギルドに戻ると、まだ席に居たハインとヴィクターを見つけると事情を説明した。


誰も襲撃など予想もしてなかったので皆慌てていたが、急遽ギルド職員も同行して現場を検証してもらう事にする。


「お手柄でした。確かにこの男は〈黒蜥蜴〉の頭目ダリオですね。賞金首になってるので間違いないです」


「なるほど。峠で討ち漏らした盗賊頭に後をつけられていた訳ですね、執念深い男です。やはり賞金首でしたか」


ヴィクターがギルド職員にそう答える。


「予想外だったけど良くやってくれたわ、ユーゴ君。ヴィクターとの話も大体済んだから、後は彼らに任せて宿に戻りましょう」


流石のハインも油断していた様で、先に行かせた事をとても後悔していた。


「かしこまりしました。討伐の報酬はユーゴさんの名前で明日以降いつでも受け取れるようにしておきますので、後は我々にお任せ下さい!」


「はいっ!宜しくお願いします」


「流石ユーゴだねっ、頼りにしてるよー」


アイラはわざと軽口を叩く。


なんとか無事事なきを得たユーゴ達一行は、ギルド職員に後処理を任せて宿に向かうのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


一行は宿に辿り着くと、御者の手配もあってすんなりと宿泊手続きが出来た。やはり心付けはケチるべきではない。


この旅を機にハインらと仲良くなっておきたいヴィクターは、ユーゴに相部屋を提案する。ハインとアイラは相部屋であるが、ユーゴ一人だと料金が割高になってしまう為だ。


ハインも必要以上に宿泊代を払いたくので、その申し出を受ける様に促す。ユーゴとしてもヴィクターに聞きたい事が沢山あったので、むしろ大歓迎であった。


かくして一行は男二名、女二名それぞれ相部屋で宿泊をする事になった。


「それじゃあヴィクターさんまた明日、朝食時に一旦落ち合いましょう」


「はい、それでは又明日。皆さんおやすみなさい」


ハインとヴィクターに続いて、若者二人も挨拶をする。


「じゃあね〜また明日!おやすみー」


「皆さんおやすみなさいっ」

 

金の豚耳亭の客室は飛空亭の二等部屋と同程度の造りであった。ただしベッドはツインでは無く二段ベッドだ。部屋に入ってしばらくすると、それぞれにお湯が運ばれて来て各自その日の汗と疲れを落とした。


そしてヴィクターは寝るまでの間ユーゴの質問攻めに合う。何せ初めての王都なのだから無理もない。ところがその質問の多くはヴィクターの予想とは大きく違っていた。


ユーゴが質問したのはコーヒーや紅茶の有無、また醸造酒以外の蒸留酒や果実酒などの種類、はたまたシェイカーやバースプーンに至るまで、とにかく一般的な冒険者の質問では無かった。


あくまでもユーゴは本で見た知識という体で質問したのだが、当然商人でも知らない初めて聞く素材や道具の知識は普通ではない。ヴィクターは改めてユーゴから目が離せなくなったのであった。この青年と一緒にいれば新たな商売に繋がるに間違いないと。


更にはこれから日課の筋トレを始めるというユーゴ。常識外れのユーゴの体力に呆れながら、疲れていたヴィクターは二段ベッドの上で直ぐに深い眠りに落ちた。


筋トレを終えたユーゴは布団に潜り込んでから今日一日の出来事を思い出していた。自分の詰めの甘さ、そして初めて人を殺めた事。アイラを改めて女性として意識しているし、初めての王都にワクワクもしている。様々な気持ちが交錯してユーゴは少しだけ自分が大人になった様な気がした。


(色々あったなぁーでも、また明日が楽しみだ)


ユーゴは前向きな気持ちになり、そのまま深い眠りについた。

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