第24話 銭ゲバ薬師
誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。
翌日からアイラは稽古に復帰した。その日からまるで憑物が落ちたかのように稽古に打ち込み、しばらくはユーゴが一本も取れなかったほどだ。そして何故か素振り用の剣を更に重い物に変えていた。
ジョージは顔色こそ変えなかったものの、戸惑いを隠せなかった。
(バーバラの奴いったいどんな手を使ったんだ!?)
数日後。ハインから〈テーブル弁償費用〉として、金貨2枚(約20万円相当)の請求書が届けられた時に、ジョージは事の顛末を聞いて納得した。
「そりゃあウチのスタッフ達が迷惑掛けたな、すまん……」
「バーバラさん?だったかしら、彼女からふんだくって良いって言われたから平気よ。流石にビックリしたけどね」
「まあ、オマエの店でまだ良かったのかもな」
「金額は少しまけてあげても良いわよ?」
「いや、やめとこう。後でどんなお願いされるか分からん……」
「あら残念〜」
「お前と何年付き合ってると思ってんだよ」
「また御贔屓に〜」
「ああ、俺の飲み代が……」
ハインは金貨を懐にとっととしまい込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ユーゴは嬉しかった。最近元気の無かったアイラが、また以前の様に明るくなったからだ。しかも以前にも増して剣が鋭くなり、今週はアイラから一本も取れなかったほどだ。
ユーゴはそんな事を思い返し笑みを浮かべながら、ハインの店でポーション作りのバイトに励んでいた。
「あらユーゴ君、今日はなんだか嬉しそうね?」
「はい、ちょっと良いことが有って」
「そっか、良かったわね。ところで……そろそろ違うポーションも作ってみない?」
「えっ、良いんですか!?」
「ユーゴ君のおかげで私も大分助かってるからね」
現在ユーゴが教わって作っているのは2種類、〈ヒールポーション〉と〈キュアポーション〉だ。
ヒールは回復効果、キュアは状態異常に効くポーションだ。ただしユーゴはコンスタントに〈高品質〉を作れてしまう為、〈普通品質〉ポーションの1.5倍効くポーションはハインにとっても嬉しい誤算であった。
「ハイポーション用の薬草を仕入れたから、ちょっとやって見る?材料以外の工程は一緒だから」
「ありがとうございますっ!」
ユーゴはガラスの容器に全ての材料を入れると、いつもの様に薬品調合〈錬金術〉のスキルを発動する。ハインに教わった通り頭の中で液体が出来上がっていくイメージだ。
するとガラスの容器の中で全ての材料が金色に光りたした、時間にして30秒ほどであろうか。やがてその光が収まると、そこには薄っすらと青みがかった液体が出来上がっていた。
(何回見てもおかしいわね……普通は私みたいに白く光るはずなんだけど?)
念の為ハインが鑑定をかけて見ると、そこには予想していた通り
【ハイ・ヒールポーション】〈高品質〉
の文字が。ベテランのハインですら高品質のクオリティは3回に1回しか出せない。
「あっさり成功ね……ユーゴ君、貴方はもう私と同じかそれ以上の腕があるわよ」
「えっこれで成功ですか?やった!」
「材料沢山あるから、しばらく練習してて良いわよ……」
「はいっ、ありがとうございます!」
「はぁ〜、自信無くすわー」
ハインはアイラの落ち込んでいた理由が分かった様な気がした。何せハインの十五年に及ぶ薬品調合の技術を、わずか三ヶ月程でユーゴは超えてきたのだ。普通ならば妬みや悔しさといった気持ちを抑えられないであろう。
ただしそこは年の功、ハインはアイラほどやわな性格では無かった。
コンスタントに高品質のハイポーションを作り続けるのは、王都の薬師ギルドの連中でも簡単なことでは無い。
(もしユーゴ君と組んでハイポーションを安定供給する事が出来たら?薬師業界を席巻して、ポーション王になる事も夢じゃ無いかも!?)
ハインは黒い笑みを浮かべていた。
ハインは誰から見ても美しく、優しく、完璧な女性ではあったが唯一つだけ欠点があった。そう、残念な事に彼女は究極の拝金主義者だったのだ……
一方ユーゴはそんな事になっているとはつゆ知らず、無料で練習出来てラッキーっ!とばかりに、その日は二種類の高品質ハイポーションを作り続けたのであった。
参考価格(普通品質)ーーーーーーー
ポーション各種1本 大銀貨1枚 10,000円
ハイポーション各種1本
金貨1枚と大銀貨2枚 120,000円
ポーションの品質は調合した薬師の腕によって異なり、下から 低品質→普通→高品質→最高品質となっている。
又、ポーションとハイポーションの効果の違いは10倍ほどだが、ポーションを10回使ってもハイポーションと同じ効果は得られない為、ハイポーションの方が金額は高い。
ご愛読ありがとうございます。 よければブクマ、
評価していただけると嬉しいです。
お好きな星を入れてください。
★★★★★
よろしくお願いします!




