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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第一章 
19/102

第19話 初めての戦闘

誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。

「アーチャーか……厄介だな」


僕は完全に足手まといだった、出された指示にすら咄嗟に反応出来なかったのだ。


一方ハインは既に次の行動に移っていた。


「ほら立ってユーゴ君!走るわよっ」


そのか細い身体の何処にそんな力があるのか、ユーゴは片手で軽々と引き起こされる。先輩二人の見解はすでに一致しており、ユーゴは言われるがままに全力で走った。少し開けた場所に出る為だ。


「よし、ここで迎え撃つ。ユーゴは私の後ろにっ!ハインはアーチャーを頼む」


「任せて」


アイラの口調がいつもより男っぽくなる。ユーゴは情けない事にまだ足元がおぼつかない。


程なくして森から醜悪な顔の緑の小人がゾロゾロと出てきた、それは予想していた通り《ゴブリン》であった。


「ギ、ギギィィ」


「三匹かあ。ハイン!アーチャーは恐らく一匹だと思うけど一応用心してっ」


「了解よ」


二人は落ち着き払っていた。そんな二人の様子を見たおかげかユーゴはようやく正気を取り戻す。


アイラの踏み込みは速かった、ボロボロの剣を振り上げながら襲いかかって来た一匹を袈裟に切り捨てると、その勢いのまま振り向きざまに背後のもう一匹の首も切り落とした。


少しだけ体格の良い残る一匹が恐らくリーダーなのだろう。ゴブリンリーダーは悔しそうに叫んだ。


「グギィアアアアッ!」


次の瞬間、再びユーゴめがけて前方から矢が飛んでくる、今回は落ち着いているので良く見えていた。


「任せて下さいっ!」


ユーゴはそう叫ぶと下段から斜め上に矢を弾き飛ばした。と、同時にハインが何かを唱えると〈かまいたち〉が発生し矢が飛んで来た場所へと叩き込まれた。


「グギャッ!」


ドサッ


アーチャーを無事一発で仕留めた様だ。


リーダーは烈火の如く怒りながら、間髪入れずアイラに襲いかかる。手にした武器は多少はマシなマチェットではあったが一対一なら彼女の敵ではない。とその時、足下に倒れていた最初のゴブリンがアイラの足を掴んだ。


「ギギッ……」


「くっ、この!」


アイラは素早く足下のゴブリンに剣を突き立てだが、その隙をぬってゴブリンリーダーはまさかの方向転換、はじめから狙いはユーゴだった。魔物の勘でパーティ最弱のユーゴを斬り捨て、あわよくば逃走する気だろう。


「ユーゴっ、イケるかっ!」


「はいっ!!」


ユーゴは無我夢中ではあったが、練習通りの動きを寸分たがわずトレースする。敵とすれ違い様に確かな手応えを感じた。


我に帰ったユーゴがパッと後ろを振り向いた時、ゴブリンリーダーの上半身と下半身は泣き別れになっていた。


ユーゴは呆然と立ち尽くす。アイラも暫くは周囲を警戒していたが、残党がいない事を確認するとポンっとユーゴの肩を叩いた。


「お疲れさま、良くやったね」


「なんだか今でも実感無いです……」


「一撃だったわね、まさかユーゴ君がここまでやるとは」


「ともかく早く森を出よう。あっ、そだ」


アイラはすぐ済むとだけ云って、手早くゴブリンの胸から黒い小石のようなモノを取り出す。リーダーのは少し大きめだ。恐らくアレが〈魔石〉と言われる物だろう。赤黒い血肉がこびり付いた魔石をまとめて布で包みバッグに仕舞い込んだ。


「よし、オッケー。行こう」


ゴブリンの無残な死骸と価値の低そうな武器はそのままに、僕らはその場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーー


20分ほど足早に移動すると、来る時にも通った小川に差し掛かった。少し休憩しようと、アイラは先程の布包みを取り出し中の魔石を綺麗に洗い流した。


「どう、オニキスみたいで綺麗でしょ?」


そのうちの一つをアイラさんが僕に投げてよこした。やや大きめのゴブリンリーダーの魔石だ。


確かに見た目は真っ黒いオニキスの様な鉱物だ。太陽にかざすと何となく中は赤なのかなと思わせる不思議な輝きだ。


「魔石は売れるし嵩張らないからね。一応全部換金してから山分けするんだけど、そいつは記念にあげる。急いでたから確実に売れるか微妙なマチェットや弓は置いて来ちゃった」


拾った武器はピンきりではあるが、買い取って貰える場合がある。良い物は少し手直しして中古品として売れるからだ。価格は大体新品の半値と言われている。


魔石を握りしめたユーゴは、自分があのゴブリンリーダーを殺めたのだと改めて実感した。


そして最初の矢をもしアイラが止めて無かったら……自分はここにはいなかったかも知れない。


思い出すと再び震えが来た。


この感覚を忘れない為にも、リーダーの魔石は売らずに取っておこう。そう思うユーゴだった。


「薬草も魔石も換金したら後で山分けにするから待っててねー」


「あっ、はいっ!ぼーっとしてすいません」


「私も最初はそんなもんだったよ〜。しかし良い剣筋だったね。ジョージさんに叩き込まれた?」


「はい、昨日まで毎日実戦形式の打込み2時間と型の素振りを100本ひたすらやりました」


「どおりで……それにしても真っ二つはヤバいよね!あの剣絶対エンチャント付いてるよ」


「えっ!そうなんですか?」


「ええ、間違い無いわ。アイラでさえ流石にまだ真っ二つはちょっと無理ね」


「ちぇっ、悔しいけどねー」


「ウフフ、昔よくジョージが魔物を真っ二つに切り裂いてたのを思い出したわ」


「えっ?何それー初耳!詳しく教えてよ〜」


「えーどうしようかしら?」


「けちー」


「マジですか……エ、エンチャント」


初めての冒険で万が一がない様にとの父ジョージの親心であろう。実は腕輪と革の防具にも防御系のエンチャントが付いていたのだが、アイラとハインの活躍によりそれらが発動する事はなかった。


かくしてユーゴの冒険者仮デビューは無事?波乱含みで成功を収めたのであった。


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