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錬金術師?いえ、バーテンダーです  作者: 比呂彦
第一章 
18/102

第18話 冒険者デビュー(仮免)

「おはようございますっ!」


「あら、おはよう。早かったわねユーゴ君。アイラの事だから多分今日も時間ギリギリよ、ウフフ」


ハインの薬屋は自宅兼カフェである。当然ハインが一番乗りなのは当たり前だが、アイラはユーゴの予想通りのんびりした性格の様だ。


やる事もないので二人はオープンテラスでしばしアイラを待つ。


「そう言えばハインさんは父さんとお知り合いだったんですね?初めて会った時、なんで僕の名前を知ってるのか不思議だったんですよ」


「あら、ジョージから聴いたのかしら?」


ハインはカミツレ草のハーブティーをカップに二杯注ぐと、耳にかかる長い髪を柔らかくかき上げにっこり微笑んだ。


(うわぁ〜、なんだこの大人の色気は!父さんの事も呼び捨てだし。あ、実際年上だから良いのか?)


「いえ、あんまり詳しくは教えてくれなかったんですよね〜」


「そう、彼らしいわね。クスっ」


(なんだろ、めちゃくちゃ気になる……)


「そろそろかしら?あ、来たわよ」


その時、遠くからアイラが声を上げながら駆け寄って来るのが見えた。


「ゴメンごめーん!手間取っちゃってさ」


「今起きたような顔してよく言うわよ」


「アハハ、バレたか」


アイラがテラスに到着した時、いつの間にか三杯目のカップにはハーブティーが既に注がれていた。走って喉が乾いていたのか、少しぬるくなったハーブティーをアイラは一気に飲み干した。


(ハインさんの目配りはいつ見ても凄いなあ、いつ注いだのか全く気がつかなかった。とても勉強になる)


「さあ、それじゃあ出発しましょうか」


「はいっ!」


「はーい」


町の正門を出るには身分証が必要なのだが、冒険者ギルド所属の二人がいるので、連れの僕もすんなり通ることが出来た。今回の薬草採取は比較的魔物の少ない西の森で行う。森へ向かう道中アイラさんが尋ねてきた。


「ユーゴの装備はずいぶん馴染んでるけど、新しく揃えたの?」


「父が昔使ってたやつみたいです、プレゼントしてくれました」


「えーっ、ジョージさんのお下がり?羨ましー。それ絶対高いやつだよ、私のこの剣だってかなりしたけどそれより立派だもん」


僕とアイラさんの装備は、軽装の戦士といった感じで大体同じだ。確かに剣を見比べてみると、鞘に装飾があしらわれている分僕の方が高そうではある。初心者なのになんだか申し訳ない。


「剣の腕は道具にあらず。違ったかしら?」


「分かってるよ、ちょっと言ってみただけ。魔物が出たら私の腕前、ユーゴに見せてあげるからね」


「宜しくお願いします!」


「うむ、宜しい」


冒険者の足どりはかなり速い、そんなやりとりをしながら歩く事1時間。ユーゴらはようやく西の森に辿り着いた。


「じゃあユーゴ君は私の後に付いてきて、アイラは辺りの警戒を宜しくね」


「了解!」


アイラさんは採取系が苦手らしく、二人で行動するときも基本サポート役のようだ。ハインさんも攻撃魔法が使えるのだが、大体アイラさんがあらかた片付けしまうらしい。


日本でも父譲治の後ろについて、山菜採りをしていたのが懐かしい。今日の採取は五目採りらしいので、ハーブや薬草を片っ端から採っていくスタイルだ。


「見てっ、ユーゴ君これが【ヤクモ草】よ!止血の効果がある薬草でポーションの材料にもなるの。こうやって根っこごと採るようにしてね。根が切れると劣化が早いから気を付けてっ」


採取の邪魔になるのか、いつの間にかハインさんは髪を一つに縛っているのだが、それがまた良く似合っていて横にいるだけでドキッとしてしまう。


本当に素材採取が好きらしく、町にいるよりなんだか活き活きしているようにも見える。エルフの血が騒ぐのだろうか?


ハインさんは他にもポーションの材料で、滋養強壮効果のある【ユズモドキの実】の採り方も教えてくれた。こちらは追熟するので熟れ過ぎてる物は足が早い為避けるように、との事だった。


初めての僕にも見分けがつきやすく採りやすい物、しかも失敗しないコツや群生しているポイントまで教えて貰った。神対応いや、もはや神である。


僕も適当にそれっぽいのを鑑定するため手を延ばす。


「おっ、こいつは〈タラの芽〉っぽいな?」


【オニウルシ】ー危険度Fー

・素人がタラの芽と間違えてよく食中毒を起こす。また、素手で触るとかぶれるので注意。


(うわあっ!鑑定さまさまだった。素直に教わった〈ヤクモ草〉と〈ユズモドキ〉を探そっ)


一方アイラさんは辺りを警戒しつつも手持ち無沙汰らしく、野いちごのような物をパクパクつまみ食いしていた……


ーーーーーーーーーーーーーー


3時間ほどでバッグが一杯になった為、採取を終了した。昼過ぎからは魔物も徐々に活発になってくるとのことなので、早めに森を出る事にした。僕を挟んで左にハインさんと右にはアイラさん、両手に花とは正にこの事だ。


「いやあ〜、沢山採れましたね!」


「ユーゴ君のおかげでいつもより大分捗ったわ、ありがとう」


「いえ、こちらこそ色々貴重な体験をさせて貰ってありがとうございます!」


「アイラも助かったわありがとう。ちょっと貴方口の周り真っ赤よ、アハハ」


いつもより快活に笑うハイン。


へへっと照れ笑いを返すアイラ。


とその時、ーーーアイラが急に声を張り上げた。


「みんな伏せてっ!!」


素早く身を伏せるハイン。


(えっ、何てっ!?)


咄嗟のことに驚いて、フリーズしてしまったユーゴの顔前にアイラが鋭く右拳を突き出す、と同時にユーゴは左手で突き飛ばされていた。


突き出された拳に握られていたのは、この世界で初めて見る本物の矢であった。

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