第15話 冒険者としての覚悟
誤字、脱字、御指摘、感想 等もらえると嬉しいです。
宿屋の朝は早いが、午前11時から午後3時くらいまでは割と自由な時間だ。ユーゴは先日ハイン達から持ちかけられた、薬草採取クエストの件を素直にジョージに相談してみた。
「なるほどな。それでコソコソ筋トレなんざ始めたわけか……ま、良いんじゃないか?ただ今のままだと完全に足手まといだよなー」
(流石にこの歳で俺がお守りをしてやるわけにもいかねえし、少しは脅しておくか……)
「よし、今日から1週間。毎日この時間に剣の稽古をつけてやる。筋トレはそのまま続けても構わん」
父ジョージの話が飛躍しすぎてどういう事かさっぱり分からないが、ユーゴは剣の特訓する事になった。
「あ、じゃあクエスト自体には参加して良いんだよね?ありがとう父さん」
「おう、俺に任せとけ。お前に冒険者としての基礎をみっちり叩き込んでやる」
(まあ、アイツら二人なら心配は無いが、こんな機会でも無いと鍛えようがねえからな)
「えーっと、僕はどっちかって言うと薬草採取の方に興味があるんだけど……」
「んっ?あーー悪い悪いそうだったな、つい熱くなっちまった。俺は喰えない素材採取はそれほど得意じゃなくてさ、その辺はまあハインの奴が詳しいだろうから直接教えて貰えよ」
「えっ、父さんハインさんの事知ってるの?」
「ん、まあ……昔ちょっとな」
(そうだよな、実は120歳だから父さんの事知っていても何の不思議もないよね)
(ハインの奴、ユーゴに余計な事言わねえだろうなあ?ま、大丈夫か)
「とにかくだ、お前は早く足を引っ張らない様にならないとな。まさか2人の女にずっと貢いで貰うつもりでもないんだろう?」
(父さんが言うとなんか違う意味に聞こえなくもない……)
あんまり考えて無かったが、確かにそうだ。いつもパーティメンバーに助けてもらってるだけなんて、男としては格好悪い。ここは一つ父の口車に乗っておくことにしよう。
「それもそうだね、もう成人するわけだし。では明日から宜しくお願いします!」
「話を聞いてなかったのか?今日からだ」
「ですよね……」
ジョージはこうと決めたら行動が早い。飛空亭には洗濯物を干したりするので中庭がある。ジョージは時折り手持ち無沙汰な時に、ここで剣の素振りをしたりアイラに稽古をつけたりしている。
「よし着替えたか。そうだな、お前にはこの剣をやるよ。俺が駆け出しの頃に手に入れた剣で確かそこそこ使い易かった……はずだ」
父はアイテムボックスから無造作に剣を取り出すと、鞘ごとそれを僕の方に放り投げた。
僕はそれをよろけながらなんとか両手で受け止める。
(おっとっと、重っ!筋力を上げてなかったら絶対落としてたな……)
「お前には少し重いだろうがな。だがそれを使いこなせるようにならないと、町の外では死ぬぞ」
「えっ?」
「聞こえなかったか?〈死ぬ〉と言ったんだ」
突然の父の冷めた言葉に僕は考えが甘かったと気付かされた。町の外には普通に魔物が住んでいるのだ。
町の入口は午後7時には閉鎖される為、普段塀の内側にいる分には安全だが、一般人が塀の外に出るのは自殺行為だと言われている。ユーゴはまだ見ぬ魔物達に初めて恐怖心を抱いた。
「怖いのか?」
「はい、正直怖くなって来たかも……」
「それで良い、恐怖心を持たない奴はすぐに死ぬ。冒険者にとって一番大切な事は、富や名声ではなくとにかく死なない事だ。俺にそれを約束できるか……?ユーゴ」
初めて見るジョージの真剣な眼差し。この世界は常に死と隣り合わせなんだと、改めてユーゴが感じた瞬間だった。
「うん、約束するよ」
「……良しっ!それでこそ俺の息子だ。ハハハ」
父は満面の笑みで僕の頭をクシャクシャにした。
15歳にもなってやめて欲しいけど、父との久しぶりのスキンシップ。なんとも言えない安心感が僕を包み込む。
「じゃあまずは剣の握り、そして構え方からだな。用意は良いかー?」
その後、2時間みっちりと稽古をつけて貰った僕は、ヘロヘロになりながらもなんとかその日の業務をこなした。
当然その晩は筋トレなど出来るはずもなくすぐに就寝したのだが、翌朝再び筋肉痛に見舞われたユーゴであった。
ご愛読ありがとうございます。
よければブクマ、評価していただけると嬉しいです。
お好きな星を入れてください。
★★★★★
よろしくお願いします!




