5話 そこは血生臭い第二の故郷
元気になったアリスは何を聞こうかと少し悩み、私に質問してくる。
「気になったんですけど、ミオお姉さんの国では魔物を解体しないのですか?」
なんか思ってたのと違うけど、答えてあげよう。
「そうだね、少なくとも私が知ってるなかでは、解体してる人は1人もいなかったよ」
これは本当のこと。
そもそも魔物を倒したら勝手に素材になるから、解体はしたくても出来ない。
めんどくさいだろうし私はやりたくないけど。
「魔物とかいっぱい寄ってきたりしませんか?」
「そうだね、私がいた場所には数えきれないほどの魔物がいたよ。私達が今歩いてる間に、だいたいだけど30体ぐらいの魔物と戦えるかな」
ゲームのフィールドにはそのぐらいの魔物がいるからね。
「え、そ、そんなに。危なくないですか?」
「危ないね。でも私がいた場所には冒険者が、何10万といるから」
「そんなに冒険者がいるんですか!?」
「私がいた場所では、魔物を倒して生計を立てるのが当たり前だったの。副業みたいな感じで素材や装備の売買をしたりする人もいたけどね」
ゲーム内のマーケットでそうやって儲けてる人はいた。
自分が簡単に倒せる魔物の素材を大量に手に入れて、自分より弱い冒険者に大量に安く売って儲けを得る人や、強い魔物のレアドロップを高額で売る人もいた。
「そうなんですね。怪我したりとかはしないんですか?」
「戦ってるとパーティの人とか見知らぬ人が勝手に傷を治してくれるから、怪我したとしてもすぐ治るよ」
「え!?そんな見ず知らずの人が助けてくれたりするんですか?」
アリスはかなり驚いているようだ。
「うん、冒険者がその人よりも強い魔物と戦ってたら一緒に戦ってあげたりするよ」
「皆さん優しいんですね」
「優しいってより暇潰しって感じだけどね」
「そ、そうなんですか」
「よし、もう充分答えたかな?」
アリスがハッとする。
「もう少し聞きたいことがあります」
「そっか。でもダメだよ。ちょっとだけだからね」
「そんなぁ」
「女性は秘密がある方が魅力的なんだよ」
洒落臭い。
似合わないことは言うもんじゃないな、ちょっと恥ずかしくなってきた。
アリスもあんまり私のこと見ないで。
「なるほど」
何を感心してるか分からないけど、そういうのは笑って聞き流す物だよ。
うぅ、恥ずかしい。
「あ、ミオお姉さん見てください。草原に出ますよ」
そうこう話してるうちに、森を出ることが出来た。
目の前には草原が広がっており、少し先に草の生えてない道が見える。
恐らく馬とかが通って草が生えないんだろうな。
そう考えていると爽やかな風が吹く。
こんな気持ちいい空気、日本で味わえないね。
そこで私は思った。
あれ、これ夢じゃなくない?
夢にしてはやけに現実味があるというか、いやファンタジーの世界なんだけど、土や草を触った感じや、風の心地よさや空気の新鮮さは、果たして私の夢で再現できる代物だろうか。
ましてやこの空気の良さ、今まで感じたことのない気持ちよさだ。
「アリス、これって夢じゃないよね?」
「え?夢じゃないですけど、ミオお姉さん、もしかして寝ぼけてるんですか?」
「いや、寝ぼけてないよ。ごめんね」
「いえ」
アリスに変な顔をされてしまった。
そうか、夢じゃないんだ。
どうしよう。
元の世界への戻り方がわからない。
これ、本当に現実で、この世界で生活するとなると、家がない。
どこかに泊まるにしても、お金が…
いや、お金いっぱいある。
多分やっていけるよ。
もしかしたら家買えるかもしれない。
あれ、なんか楽しくなってきた。
ファンタジーの世界に生きるって現代人の夢じゃない?
「ミオお姉さん、あれが私が住んでる街、ユスティアです」
草原に出て左手側、そこそこ遠くに壁が見える。
ただあまり高い壁ではないから、壁の向こう側にある建物が見えている。
どの建物も赤い屋根で、中世って言葉がとても似合う外観だ。
さらに向こう側に塔のようなものがあるのも分かる。
城ではないだろうな、残念。
ただそれ以外の情報は全て壁によって遮られ、人がどれほどいるのか、どこまで街が広がっているか見ることは出来ない。
「この後どうしますか?一緒にユスティアに行きますか?ユスティアへの道を反対に行ってハスネールに向かいますか?」
そんなの決まってる。
「ユスティアに行くよ」
「分かりました、それでは行きましょう」
私とアリスは道形にユスティアへ歩き出した。
元々文章に起こしてたのはここまで。
ただ書きたい話はいくらでもあるので、文字起こしの作業の時間だ!