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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第1章 ケモ耳 異世界を知る
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3話 魔法の試し撃ちの時間だ!


 森の中に悲鳴が響いた。

 その声は女の子の声のようで、私は急いでその声の元へ走って行く。


 別に悲鳴の先に魔物がいて、魔法を撃つことが出来るとか、そんなこと思ってないよ。

 …本当だよ!


 声の主を見つけると、そこには10歳ぐらいの可愛らしい少女がいた。

 その少女は背中には大きな木があり、正面には2体のウルフがいた。


 2体のウルフは私の存在には気付いていない。


 私は魔法を使うため、もとい少女を助けるために風魔法を放つ。


 少女を巻き込まないようにと細心の注意を払われながら放たれた2つの疾風は、ウルフが気付いていないこともあり見事に命中し、2体のウルフの胴体を右半身と左半身に分け、そして空中へと霧散した。


「やばっ」


 思わず声が出た。

 半分になったウルフの死体が転がる。

 少女に嫌なものを見せてしまった。


 私はスキルでナイフをアイテムボックスにしまい、私は少女に駆け寄り大丈夫かと声をかける。


「はい、大丈夫です。助けてくださりありがとうございます。…でも今、お金がなくて… お礼が出来ないのですけど… どうすればいいですか?」


  ゲームの街にどこにでもいるような装いをしたロングヘアの女の子は、どこにでもいる街娘とは形容し難い、とても可愛らしい顔の金髪碧眼美少女。

 しかも目がうるうるしてる。

 面食い(かわいいもの好き)の私、心の中で乱舞。


 それはそれとして、どうしてもらえばいいんだろう。

 体で払ってもらえばいいのかな?

 そういう趣味はないんだけどな。


「じゃあ、そうだね…」


 その言葉に少女は固唾を飲む。

 命を助けてもらったから、とんでもない要求されると思ってるのかな?

 夢って自分の理想を映し出すっていうし、私って本当にそういう趣味…?


「じゃあさ、私、道に迷ってたんだけど、近くの街に案内してくれる?」

「はい、分かりました!」


 少女が勢いよく返事する。


「え、それでいいんですか?」


 え、なんで聞き返してきたの?

 あの勢いのいい返事はどうしたの。


「うん、それじゃあよろしくね」

 

 私は少女に微笑みかけると、少女はどこかホッとしたかのように見えた。

 

「お姉さんのお名前は何て言うんですか?」

「お姉さん…」


 私は末妹だから生まれてこのかた、お姉さん何て呼ばれたことない。

 いや、もしかしたら、小学校の登校班で呼ばれてたかもしれない。


 でも、そんなのはノーカウントだ。

 子供の知り合いなんていないJKの今、末妹の私にとってお姉さんとは神聖なる言葉なのだ。

 

「あの…お姉さん?」


 やばい、成仏する。

 いや、死んでないけど。

 いやでも今死ぬ。

 今死んで今成仏する。

 夢のような経験をしてしまった今なら死ぬ。

 いや夢なんだけど。

 それでも私にもう後悔はない。

 さようなら…


「あ、あの…!」


 目を閉じ、迎えがくるのを待とうとする私に声がかかる。


「お名前は何て言うのでしょうか?」


 名前って私の名前?

 なんで私の名前を聞くんだろう。

 お迎えにも本人確認が必要なのかな?


「私はミオって言います」

「ミオお姉さんって言うんですね?私は━━━」


 心臓が大きく脈打つ。

 ミオお姉さん…

 心が満たされ、ときめくのを感じる。

 私は幸せに包まれながら、意識が遠のいて行くのを感じた…




 気がつくと私は地面に横になってた。

 周りには草が生茂っていたため、体に異常もなく、固い地面で寝た感覚はなかった。

 意識がはっきりしてきた私は、起き上がると声をかけられた。


「起きましたか?」


 そこには血で濡れたナイフを持った少女がいた。


「大丈夫ですか?急に倒れてビックリしたんですよ?」


 ナイフは赤黒く輝き、少女が私との距離を詰めてくる。


「ひっ」


 思わず声が出る。


「苦しんだ様子もなければ脈も息もあったので、大丈夫な━━━」


 やばい。

 目で得られる情報がナイフだけになり、少女が何を言ってるのかも分からなくなってくる。

 物凄い速さで頭が回転してるのを感じる。

 比喩表現のはずなのに、何故か本当に脳が動き回ってるような。


 私が生きてきたなかで、最も頭が働いてるだろう。

 私はどうすればいいかと立ち上がりながら思考する。

 しかし考えが上手く纏まらない。


 どうする。

 どうする。

 どうする。


 逃げるしかない…!


 私は体を半回転させ、思いっきり走り出そうとする。

 しかし寸前で手を掴まれる。


「どこに行くんですか?」

「あっ」


 思わず声が出る。

 少女が真っ直ぐな目で私を見てくる。

 振り払おうとすれば出来るであろう少女の細い腕は、とてつもない力で私の腕を掴んでいる。


 いや、違う。


 私の力が入らないんだ。

 目の前の恐怖に怖気付いて、体は絶望を受け入れたんだ。

 少女の口が開かれる。


「これウルフの魔石なんですけど、要りますよね?」


 そう言うと、少女は白く濁った宝石を2つ見せてくる。


 横でケモ耳が気絶してるのにウルフの死体を解体するメンタル。

 この金髪、強い…!

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