33話 アリスの先生になる
描写し忘れてたんですけど、アリスはフェンリルを解体した後に帰りました。
私はリアと共に冒険者ギルドを出て、リアの家に向かう。
「見られてるな」
「そうだね」
相変わらず道行く人にケモ耳を見られる。
「冒険とかしてても、1度も獣人族って見たことない?」
「見たことないな。むしろミオがどうしてここにいるのかを知りたいぐらいだ」
ここまできたら、本当は獣人族っていないんじゃない?
私はリアに付いていって広場に出て、また1つの大通りを歩いていく。
そこは住宅街のようで、お店も数件あるけど基本は一軒家だ。
私も住むならこの辺りがいいなんて考えていたらリアが歩みを止める。
「ここだ」
リアの家もごく一般的な赤い屋根の一軒家で、ごく普通の暮らしをしてる事が見て取れる。
リアが玄関を開ける。
「帰ったぞ」
そう言うとアリスが満面の笑みで部屋から出てくる。
「おかえり!」
アリスがリアに抱きつく。
羨ましいな。
私もアリスに抱きついて欲しいな。
アリスとスキンシップしたいな。
「お姉ちゃん早かったね」
「あぁ、今日は話があってな。ミオも来てるぞ」
「え?」
アリスはリアの後ろを見る。
もちろんそこには私がいる。
「ミオお姉さんこんにちは」
アリスがにっこり笑う。
午後もアリスはかわいい。
「こんにちは、アリス」
私が姿勢を低くして手を広げるとアリスがこっちに来て抱きしめてくれる。
え?
かわいすぎる。
やばい。
私はアリスを抱きしめ返す。
「う、ミオお姉さん、苦しいです」
「あ、ごめんね?」
私が手を離すとアリスも手を離す。
「それでお話って?」
アリスがリアの方を向き直す。
「まず、私は明日の朝にこの街を出る」
「え、そうなの?」
アリスの背中しか見えてないけど、どこか悲壮感が漂っている。
「ひとまず部屋で話そう、ミオも入れ」
そうして案内された部屋には1人の女性がいた。
恐らくアリスとリアのお母さんだろう。
「リア、早かったね」
「うん、話があって。お母さんも来て」
「お客さん?あら、あなたがミオちゃん?」
お母さんが私のケモ耳を見るなり名前を言い当てる。
「そうだよ」
「あらあら、とってもかわいい女の子ね。リアとアリスをよろしくね」
「こちらこそ」
そう言うとリアが4人席の1つに私を座らせると、その横にリアが座り、リアの正面にアリスが座り、アリスの横にお母さんが座る。
「話したい事なんだけど、明日の朝にユスティアを出る」
「そうなの?でもリア、アリスに剣術と魔法教えるんでしょ?」
「それなんだけど、アリス、約束を守れなくてごめんな」
「いや、大丈夫だよお姉ちゃん…」
明らかに悲しんでるのに、アリスが健気に答える。
悲しまないでアリス、そんな顔をしないでアリス。
「そこでなんだが、アリスの先生をミオに頼んだ」
「え?ミオお姉さんに?」
「ミオちゃんはいいの?旅で来てるのよね?」
「私は大丈夫だよ。この街に住むつもりだし」
お母さん、私のことすごい知ってるね。
「ミオお姉さん、ここに住むんですか?」
「あれ言ってなかったっけ?」
「言われてないです」
「リアにも言ってない?」
「言われてない」
「え、じゃあ何で私に先生を頼んだの?すぐこの街を出るかもしれないじゃん」
「いや、この街のギルドカードを作ったよな?だからしばらくはいると思ったんだ」
まぁ実際にいるからいいけど。
「まぁそういうことだアリス。ミオがアリスに魔法を教える。余裕があれば剣術も教えてもらう予定だ」
「私はそれでいいけど、ミオお姉さんはいいんですか?」
拒絶されなくて良かった〜…
「私は大丈夫だよ」
「お母さんもそれでいい?」
「3人がいいなら私はいいよ」
「それじゃあ決まりだな」
話がまとまったみたい。
「ミオお姉さん、これからよろしくお願いします」
アリスが頭を下げる。
「うん、よろしくね」
アリスが顔を上げるとにっこり笑う。
かわいい〜!
天使!
「ミオちゃん、今日はどうするの?よければ食べていく?」
「いや、私は宿を取ってるからご飯は大丈夫だよ」
そういえばマリアに朝ご飯いらないって言ってない。
「そう、残念ね。それじゃあ、アリスをこれからよろしくね」
何?
私とアリス結婚するの?
アリスとならいいかな。
そういう意味じゃないって分かってるけど。
「幸せにしてみせるよ」
「え!?」
「あらあら」
アリスが本気でびっくりしてる。
「冗談だよアリス」
「びっくりしました…」
かわいいよアリス。
「それじゃあ話はこれだけで、パーティのみんなとまだ話すことがあるから私は戻る。ミオはどうする?」
どうしようかな。
「魔物の素材を回収してないからギルドに取りに行こうかな。お邪魔しました」
「またいつでも来てね」
「またねミオお姉さん」
「またね」
挨拶を済ませて家を出る。
家を出るなりリアが頭を下げる。
「アリスの先生を引き受けたこと、本当に感謝する」
「大丈夫だから頭を上げて」
そう言うとリアが頭を上げる。
「ミオには助けられてばっかりだな」
「大したことしてないよ」
「そんな事はない。ミオはもう少し自分を誇った方がいい」
「大した人間、いや獣人じゃないから」
そういえば獣人族だった。
「獣人族ってだけで大した者だけどな」
「うーん、そうかなぁ…」
そうこうしてるうちに私達はギルドへ戻る。
私は素材を回収するとリア達と挨拶をしてギルドを出て宿に向かった。
3日目終了しました。
次回はCランクを見送る話からです。