28話 リアとレイナの頼み
私は自分の力で冒険がしたい。
「1日経って気が変わるほど簡単な事じゃないよ。しつこいと嫌われちゃうよ」
レイナさんがレスターに言う。
「それは本当に申し訳ない。ただ、俺達は明日でこの街を離れようと思ってる。今度いつミオに会えるか分からない」
「そうなの?」
「そもそもリアが怪我をしたからここに戻ってきていただけで、怪我が治ったならここに居る理由はない」
なるほど。
「だからミオと会えるのはもう最後かもしれない、これが最後のチャンスかもと考えてもう1度聞かせて貰った」
最後のチャンス。
これを逃したらCランクパーティに二度と入れないかもしれない。
でも、結局はどっちが楽しそうかだもんね。
「そっか、でもやっぱりソロかな」
「分かった。またどこかで会ったら、同じことを聞かせてもらうぞ」
「毎回毎回聞いてきたら嫌うかもね」
「…分かった」
相手が本気にしたら冗談は冗談にならないじゃん。
その反応はやめて。
「それとは別なんだが、私からも頼みたいことがある」
「何?」
リアが話しかけてくる。
「実はアリスが襲われてすぐ、私がまだ怪我をしてる時にアリスに剣術と魔法を教えると約束した。ただ怪我が治り、私達はまた冒険に出ることになった」
アリスはリアが教えてくれるって嬉しそうにしてたけど。
「だから私はアリスに剣術や魔法を教えることが出来ない」
「アリスを連れて行けば?」
「戦えない者を危険な場所に連れ出しても死ぬだけだ。だからミオにアリスの先生を頼みたい」
「どうして?」
そんなの無理だよ。
「まずミオは四大元素の魔法を使えるよな」
「そうだけど、何で知ってるの?」
「アリスに聞いた」
アリスにも風魔法しか見せてないけど。
「ミオがウルフを大量に倒して解体を頼んだ時、解体室にアリスがいただろう。その時にアリスが他の従業員から聞いたんだが、頭には岩の棘が刺さったウルフ、肺からは大量の水が出て来たウルフ、内側だけ焼かれたウルフがいたらしい。つまりは四大元素の魔法を使えるって事だろう?」
死人に口無しって言うけど、全くの嘘だよね。
「じゃあ魔法を教えるにしても、剣術は教えられないよ。私が使うのはナイフだから剣の扱いはあまり詳しくないよ」
ゲーム内で使ってたのも初めて1ヵ月の間。
ろくな技術ではない。
「いや、アリスの小さい体で剣は無理だ。ナイフやダガーで構わない。今までも解体をさせてきたから、ナイフをどのように入れれば肉が上手く切れるかも理解してるはずだ」
「私、ナイフ下手かもよ?」
「アリスが刃物で切られたウルフを解体したと言っていたんだが、アリスは傷痕に迷いが無く力任せに切られていなかったと感じたらしい。アリスはそこそこ解体をこなしてきた。1人の人としてアリスの目に間違いはないと思っている」
言わんとすることは分かる。
「でもリアは私が戦っているところ、1度も見たことないよね?それなのに任せていいの?」
「確かに見ていないが、技術は問題ないと思っているし、何よりアリスがミオの事を気に入っているんだ」
アリスが気に入っている。
アリス、私のこと好きなんだ…
えへへ。
「そっか、分かったよ。アリスの先生やるよ」
「本当に感謝する。押しつけたようで本当にすまない」
「いいよ。もし私が断ったらどうするつもりだったの?」
「アリスに謝って分かって貰うしかなかった」
「アリスには私が先生をやるかもって言ったの?」
「まだだが、アリスは理解してくれるだろう」
アリスに「ミオお姉さんに教わるのはちょっと…」とか言われたら死にかねないんだけど。
「それじゃあ、アリスを頼んだぞ」
「うん、任せてよ」
「私からも1個お願いしていい?」
レイナさんが話始める。
「ケモ耳はダメだよ」
「違うよ。フェンリルの時、障壁魔法を使ってたでしょ。聞いたことはあったけど使ってる人は始めてだよ。教えてくれない?」
「レイナ、魔法は価値があり、その者にとっての宝だ。他人に教えるなんて魔法の価値を下げる行為に変わりない。教えろ何て図々しいにも程がある」
レスターが何故か叱りだす。
「確かにそれはそうだけど…」
「ミオの優しさに甘えて、ミオの冒険者としての価値を下げようとするな」
「私は別にいいんだけど」
「ミオも自覚をしろ。むやみやたらに魔法を使うな。回復魔法の時だってそうだ。技術を盗まれたらどうする」
「魔法って使わないと意味ないよ」
「それはそうだ。ただミオは自分の首を絞めてるのを自覚した方がいいぞ」
何でレスターに叱られてるの?
レイナさんの方を見るが申し訳なさそうな顔をしてる。
リアに助けを求めよう。
「リアはどう思う?」
「私も強化魔法を他人に教えようとは思わない。時間をかけて手に入れた魔法だ。金を積まれたとしても教えないだろう」
リアもそっち側か…
「魔法ってそんなに覚えるの難しいの?」
「当たり前だ。ミオは簡単だったのかもしれないけど、教える者がいないから必然と独学となり、自分で研究をしなければならない」
リアが真剣に答える。
「う〜ん、でもやっぱり障壁魔法ぐらいなら教えるよ」
「ミオ!」
レスターが声をあげる。
「障壁魔法を教えた程度で、私の冒険者としての価値は減らないよ」
「…そうか。分かった、レイナに障壁魔法を教えてやってくれ」
レスター少し考えると諦めたようで、頭を下げてお願いをしてきた。
「ミオちゃんありがとう!」
そうしてレイナさんが私に抱きついてくる。
2人が良いって言ってるんだから良いじゃんと思うかもしれませんが、レスターからしてみればレイナが観光客相手に詐欺をしてるように見えています。
難しいですね。




