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ケモ耳少女はファンタジーの夢を見る(仮)  作者: 空駆けるケモ耳
第2章 王都観光
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164話 勝てないよ〜


「うぅ、むりぃ〜!」

「私の方が4歳上だからね」

「今度は強化魔法ありでやろ〜っ!」


 腕相撲に負けたレイは、悔しそうに再戦を申し込んでくる。


 あの後、アリスが倒したら1体ずつ順番に浮遊させているイビルマッシュを自由にさせることにして、自由にさせる時以外で暇になったレイが暇な私に腕相撲を挑んできた。


 年上2人が何してるんだか。


「強化魔法でやるの怖くない?怪我しそうで」

「え〜、ミオちゃん怖いの〜?」

「怖いんだって」


 場合によっては腕が千切れてもおかしくないからね。


「ね〜おねが〜い、もういっか〜い!」

「もう無理だって、3回とも私が勝ったんだよ?」

「うぅ…」


 レイが泣きそうになる。


「もぉ、泣くことないじゃん」

「泣いてないもんっ」

「そうなの?それはごめんね」


 でも腕相撲しなかったら絶対泣くじゃん。

 それでも本人がそう言うなら、可哀想だしわざわざ追い討ちをかけるようなことはしない。


「それじゃあ最後の1回ね」

「おっけ〜!」


 レイは顔を手で拭ったあと、やる気満々で机に肘をつく。


「本当に怖いから強化魔法は無しだよ?」

「うん、魔法無しで本気ね〜」

「よし」


 私も机に肘をついて、レイの手を握る。


「ふぅ、よ〜い…」


 そう言ってレイが私の手を強く握る。

 私もそれを握り返す。


「どんっ!」


 レイの掛け声と共に私とレイはお互いの手を倒そうと力を入れる。


 ただ正直に言うなら、接戦にはならない。

 流石に子供の4歳差を埋めることは難しい。


 私は徐々にレイの手を押していき、そしてレイの手の甲を机に付ける。


「うぅ、勝てないよ〜」

「まあ、流石にね」


 手を抜いて負けてあげても良かったけど、レイはそれで勝っても喜ぶとは思えないし。

 でもやっぱり負けてあげた方が良かったかな?


 こういう時に末っ子の悪いところを感じる。


 私ってお姉ちゃん達と腕相撲した時は勝たせてもらったっけ?

 いや、お姉ちゃんと腕相撲した思い出なんかないよ。


「え〜、なんで勝てないの〜」

「なんでって言っても、歳の差あるから仕方ないよ」

「じゃあ4年後にリベンジか〜」


 すごく気長だね。


「4年後も4歳差は変わらないけどね」

「あっ、ミオちゃんどうしよ〜」

「私もどうすればいいか分かんないよ」


 レイの頭を撫でて慰める。


「ミオお姉ちゃんとレイお姉ちゃん、今度は魔法で倒してきましたよ」


 遊んでる私達のもとにアリスが戻ってくる。

 ちょっとだけ息が上がっている。


「本当?いいね、水魔法で倒したの?」

「水魔法で倒しました。でも魔法は難しいですね、そこそこ疲れますし」

「飛行魔法を使えてるから魔力量は上がってるかなって思ったんだけど、そんなことはない?」

「ないですね。といいますか、飛行魔法ってほとんど魔力を使ってる感じはないですよ」

「あれ、そうなの?」


 そうなんだ、なんでだろう。

 飛行魔法ってそこまで燃費がいい魔法なのかな?

 マリンがここまで旅を出来る魔法って考えたら、燃費は良さそうに聞こえるけど、でもマリンの魔力量っていまいち分かってないし。


「ミオお姉ちゃんは使ってる感じするんですか?」

「ううん、私も何も感じないよ」

「だと思いました」


 アリスが笑って言う。


「レイは?」

「私も全然使ってる〜って思わないよ〜」

「やっぱりそうですよね」


 多分、レイも私と同じ偽神の加護があるから魔力の変化を感じにくいだろうし、あんまりあてにはならないね。

 今度マリンに聞いてみよ。


「それじゃあ次だね。まだまだ行けそう?」

「はい、大丈夫です」


 これでアリスがイビルマッシュを倒したのは3体目、次で4体目だね。


「イビルマッシュの死体回収ついでに私達もついて行こっか。遊んでばっかりも冒険者の名が廃るよ」

「おっけ〜」


 私はテーブルをアイテムボックスにしまう。


「そういえばレイお姉ちゃんは勝てたんですか?」

「勝てなかったよ〜慰めて〜」


 レイがアリスに抱きつく。


「そうだったんですね、でも次こそは勝てると思いますよ」

「うぅ、アリスちゃんやさし〜」


 アリスがレイを抱きしめて、ちょっとためらいながらレイの頭を撫でる。


 私も撫でてほしい。


 最近、アリスにママ要素を見出してきた。

 気持ち悪いから絶対に言わないけど。


「はい、もうおしまい。アリスの邪魔したらダメだよ」

「うぅ、ミオちゃん厳しいよ〜」

「私が撫でてあげるから、次のイビルマッシュをお願い」

「は〜い」


 そういうとレイは私の前に頭を持ってきて、適当なイビルマッシュを適当な方向に飛行魔法で飛ばす。


 魔物愛護団体がいたら起訴されてもおかしくないよ。

 しかも空中で自由を奪われているイビルマッシュを見ると可哀想に思えてくる。


「あっちの方に行きましょう」

「行こ〜」

「うん」


 アリスを先頭に、レイの頭を撫でながら私達は飛ばした方向に向かって歩いていく。


 飛ばしたイビルマッシュの方向に歩いている10mぐらい、木にもたれかかった死体のイビルマッシュを見つける。


「あれはアリスの?」

「はい、そうですね」

「じゃあこれは回収だね」


 私は死体をアイテムボックスにしまう。


 また歩き始めて少しした頃、もう1体のイビルマッシュの死体を見つけてそれも回収する。


「このやり方、面倒くさいね」

「せめてもうちょっと近いところでやれば良かったかもね〜」

「どうしてわざわざ飛ばしてたんですか?」


 このやり方はレイ考案で、私は何も口出しをしていない。


「だって魔物と戦う時、最初っから相手がどこにいるか分からないでしょ〜?」

「なるほどね」


 ちゃんと考えてはいたんだね。


「もしかして遠くに飛ばしたこと怒ってるの〜?」

「いえ、怒ってませんよ。ちょっと気になっただけです」


 アリスがしっかりと否定する。


「よかった〜」

「それでも近い方が嬉しくはあったがも知れないですね」


 アリスが意地悪に笑う。


「ごめんねアリスちゃん」

「いえいえ、それなら今度髪を梳かしてもらえませんか?」

「いいよ〜、全然梳かしてあげるよ〜!」

「いいな、私もやりたい」

「わ、私も…」

「わっ!びっくりした〜」

「マリンお姉ちゃんもしてくれるんですか?」


 気配を感じさせることなくマリンが私達の後ろにいる。


 いつの間に。


「は、はい、してみたいです…」

「どうかしたの?何かあった?」

「いえ、た、大したことではないんですけど、もしかしたら雨が降るかもしれません」

「天気読めるの?」

「す、少しだけなら」


 すごいね。


「それじゃあ雨宿りしないとね〜」

「近くに建物ありますかね?」

「そ、それなら向かってる先に館がありましたよ」

「こんな森の中にあるんだ」

「ちょ、ちょっと不思議ですよね」


 魔物がいて、しかもゴブリンとオークがいる森に住む人なんているんだね。


「アカリとヒカリはどこにいるか分かる?」

「えっと、アカリさんとヒカリさんもこの先にいますよ」

「じゃあ、このまま進もっか」

「すすも〜!」


 そうしてマリンも合流して、飛ばしたイビルマッシュとアカリとヒカリ、そして館に向かっていく。

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