8話 冒険者の掟
アリスとアリスの姉、リアスであろう人が私を待っていた。
「ミオお姉さん、少しいいですか?」
え、何々、怖い。
お姉さんもそんな真剣な目で見ないでよ。
「いいけど、どうしたの」
「アリスがウルフに襲われた時、助けてくれたと聞いた。少しばかり話をしたい」
お姉さんは美形でアリスと同じ金髪碧眼だ。
ただのその真剣な顔つきは、少しばかり恐怖を感じた。
食事スペースに移動すると、お姉さんは私を座らせ、その正面に座り、アリスがその横に座る。
「まずアリスを助けてくれたこと、本当に感謝する」
そう言いお姉さんは頭を下げる。
それに習ってアリスも頭を下げる。
「いやいや、そんな…」
2人が頭を上げると、お姉さんが口を開く。
「自己紹介が遅れた。私の名前はリアス。アリスの姉だ。リアと呼んでくれ」
「よろしくリア。私はミオ」
「よろしくなミオ。それで礼の話なんだが」
話し続けようとするリアの話を遮る。
「お礼ならもう貰ってるよ。アリスを助けたお礼として、アリスは冒険者ギルドまで私を連れてきてくれた。だからお礼はもう要らない」
「いやそうは言ってもしっかりした礼はしなければならない。助けられたならそれ相応の礼をする。それが冒険者だ」
そうは言われても。
「こんな腕でも私はCランクの冒険者だ。金はないわけではない」
「いやお金とか大丈夫だよ」
実際お金はいらないと思う。
「なら強い魔物の素材、そうだな、ガーゴイルの皮はどうだ?硬く軽い素材だ。加工すれば防具になるだろう」
なんかそれっぽい素材を提示された。
でも皮の防具か。
ゲームだとなんでもないけど、実際に皮を着けるとなると少し気持ち悪さがあるな。
「いや、ガーゴイルの素材もいらないよ。別にもうお礼は貰ったから」
「わかった。なら何か欲しいものはないか?私が出来る事でもいい。可能であればミオが望むことをしよう」
それほど妹の命が大切で、私が助けたことを大きく受け止めたんだろう。
ただそんなに義理を通されても、こっちとしては魔法を使ってみたかっただけって感じもあるし…
…いや、そうか。
魔法を使わせて貰おう。
「じゃあさ、リアに魔法の実験台になって欲しいんだけど」
「…分かった。その魔法、受けよう」
アリスがすごくこちらを見てくる。
そんな不審そうな顔で見ないで、大丈夫だから。
私は少し机から身を乗り出すと、リアの怪我した腕に手を向ける。
「な、何をするつもりだ」
「まあまあ」
リアを諭す。
風魔法を使って感じたのは、この世界には魔力は存在する。
魔法を使うのに必要なものがある。
それは力を込めるように意識を向ける感覚。
これ自体はゲームで何度もやってきた。
VRゴーグルは脳波で何をするか感知するらしく、意識というのはゲームに置いて重要だったからこの感覚は研ぎ澄まされている。
意識を向けると、今度は今まで感じたことないエネルギーのような何かがそこに集中するのが分かる。
恐らくそのエネルギーが魔力だろう。
魔力を手に集中させ、その魔力をリアの腕に放つ。
「ヒール」
そしてその魔力で何をするか決めるのも重要なのは意識だ。
ウルフを倒した風魔法を使った時、アリスが巻き込まれないように鋭く細い疾風を意識しながら放った。
その意識通りに魔法は放たれ、強力な疾風でウルフは真っ二つになった。
恐らく適当に風魔法を撃っていたら、ウルフは真っ二つにならなかったと思う。
ならば意識さえ出来れば、他の魔法も使えるのではないか?
そう思った私は、人体として何ら問題のないような状態に回復させる意識、特に骨が正常になるように意識しながらリアに回復魔法を使った。
私から放たれた浅緑色の魔法は、リアの腕に付着し、そして浸透していくように体に吸い込まれていった。
「…!?今、回復魔法を使ったか?」
リアがこちらを見る。
「もしかしたら出来てないかもしれないけど、そのつもりだよ」
魔法を使った時、変な意識は一切してない。
失敗してたとしても、悪化はしていないはず。
リアは腕の痛みを確認するために、ギブスの上から骨折しているであろう箇所を逆の手で叩き始めた。
「…まさか本当に」
そう言いリアは急いでギブスを外し、そして直接腕を叩き始める。
「痛くない…」
リアは驚いたように腕を見る。
自分の腕を動かして確認したり、腕をいろんな角度から見ている。
「もしかしたら失敗してるかもしれない。さっきも言った通り実験として回復魔法を使ったから。ちゃんと医者に診てもらって」
「いや、大丈夫だ。何も問題ない。完全に治っている…」
本当に?
やっといて何だけど、こっちが心配なんだ。
「まさかミオは本当の魔法が使える者だったのか…」
私は耳を疑った。
本当の魔法?
偽物の魔法があるの?
意識を集中するため雑念は振り払っていたが、ミオは内心ドキドキだった。
失敗して腕が余計に悪くなったらどうしよう。
大丈夫だとは分かってたけど、それでも恐怖心は完全に払拭しきれてなかったようです。




