007. 生徒会執行部
生徒会執行部室の中で、しばらくの間沈黙が続いた。
レオンハルトにしてみても、事故に遭った時のことはあまり覚えていないからだ。セレストはさらに、ショックが大きすぎて事故そのものが記憶にないくらいだ。それでも、レオンハルトは覚えていることを話そうとした。
「申し訳ないです。覚えてないんです・・・。」
やっとのことで、レオンハルトはリアムにそれだけを伝えると、下を向いた。
「君は、あの日中庭のどこにいた?」
尋問口調になっているが、ディーデリヒは優しい目をレオンハルトに向けた。
声の主が変わったのがわかったレオンハルトは顔を上げてディーデリヒを見た。
「あの日は、セレストと2人で中庭の騒がしい場所を避けたので、ダンスホールへ行く近道のそばにある木陰のベンチです。」
レオンハルトは自分から何を話せばいいのかわからない状態だったのを、質問されることによって緊張感が解け、すっきりとした顔つきになった。
「ベンチに座っていたのか?そこで何を見た?」
次々とディーデリヒは質問をしていった。
「ベンチで座ってセレストと話をしてたんです。そしたら急に眩しい光が見えたんで、慌ててセレストを抱きしめたんです。」
「その後は?」
「その後はなぜか誰かに押された感じがして、倒れました。」
「押された?」
「はい、押されました。」
「立ち上がった時、何を見た?」
「すぐに目が覚めて気が付くとセレストを抱いていたので、セレストを抱き起こしているとちょうどダンスホールの方から生徒会執行部の皆さんが中庭に来たのが見えました。」
「ふむ。」
レオンハルトの話した内容に納得したリアムは頷いた。
「ありがとう。君の話である程度この事故のことがわかったよ。」
リアムはレオンハルトに向かってにっこりと笑った。
「辛いことを思い出させてすまなかった。気持ちが落ち着くまで授業は休んでもいい。セレスト嬢の方がまだ無理みたいだな。付いていてあげなさい。」
ディーデリヒはセレストを気にかけながらレオンハルトに言った。
「ディーデリヒ様、できればアルフェリス様のそばにいたいです。お願いします。」
ディーデリヒは困った顔を見せながら、レオンハルトに向いた。
「レオンハルト、まずはセレスト嬢のことを気にかけてあげなさい。アルフェリスはまだしばらく意識は戻らない。目を覚ましたら必ず、君にも知らせるよ。」
「何か少しでも思い出したら、教えてくれないか?些細なことでもいい、よろしく頼む。」
リアムからの言葉を聞いて、悲しげな顔が少しだけ緩み、会釈をして生徒会執行部室からセレストと2人出た。
「ふーっ。」
「どう思う?」
「どうって・・・、君はどうなんだい?ディーデリヒ・ローゼン・エバーグリーン様。」
「フルネームで聞いてくるとは、王族としての見解かい?リアム・エアハルト殿。」
「うーん、両方?」
「なんとなく、見えてきているのはたぶん・・・学院内・・・かな・・・。どちらにしても、アルフェリスが目を覚ましてくれないと・・・はっきり見えてこない。」
「それじゃ、しばらくは様子を見てるしかないのか・・・。」
「まぁ、そういうことだよ。リアム生徒会長殿。」
少し冗談めかすように微笑み、ディーデリヒは答えた。
リアムは深い溜息を吐いてディーデリヒを見た。
「わかった。こちらで対処できるものは私が処理しておくよ。」
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生徒会執行部役員メンバー
生徒会長ーリアム・エアハルト
辺境伯家次男、14歳、“騎士科”、髪の毛=金色、瞳=緋色。
副会長ーディーデリヒ・ローゼン・エバーグリーン
エバーグリーン王国第1王子、14歳、“騎士科”、髪の毛=金色、瞳=琥珀、碧眼のオッドアイ。
書記ーサーシアム・ベルンハルト
ベルンハルト子爵家長男、14歳、“文官科”、髪の毛=栗色、瞳=水色。
会計ーカミラ・ルーデルス
ルーデルス子爵家長女、14歳。“文官科”、髪の毛=金色、瞳=ピンク
総務ーリュシアン
平民出身、13歳。“魔法科”、髪の毛=金色、瞳=碧眼。
広報ーリタ
平民出身、13歳。“魔法科”、髪の毛=栗色、瞳=茶色。
今日は、あの日から9年が経ちました。
私はその時福島県にいてあの地震を体験しました。あの日のことは忘れることはできません。
だからと言って、後ろ向きに考えているわけではありません。新しい生活・新しい仲間・新しい考え・・・。そんな中でもやっと9年が過ぎました。文章も拙いのに、小説を読んでくださる方、本当にありがとうございます。