006. 困惑 -2-
ディーデリヒとリアムは顔を見合わせた。
「救護室に連れて行った3人だが、“一般科”に所属するレオンハルト・バートシェンナ殿と同じく”一般科”所属のセレスト・フランゼン嬢だ。2人はまだ放心状態なので、寮に戻りゆっくり休むように伝えた。話が聞けるようになるまで2~3日はかかるだろう。残る1人はこちらも“一般科”所属のアルフェリス・ローゼン・エバーグリーンだ。アルフェリスは救護室にいる間、目を覚ましていない。いつ意識を取り戻すかさえわからない。なので、私の一存でアルフェリスを寮から王宮へ移した。意識が戻り、この学院に戻れる確証がとれるまで休学扱いとする。」
冷めた目で話すディーデリヒに、会計のカミラ・ルーデルスは矢継ぎ早に聞いた。
「これ以上は何もできないのですか?アルフェリス様は大丈夫なのですか?」
「私だってこのままにできない・・・。できないが今はレオンハルトもセレスト嬢も話ができる程に落ち着いてはいないんだ。さっきも言った通り、様子を見るしかないんだ。」
ディーデリヒの言葉にカミラは不満そうな顔をした。
「取り敢えず、現状ではこれ以上に詳しい情報はない。他の学院生たちはいたずらだったと思っている。教師への報告は『いたずらがあった』とだけ報告する。このことは誰にも絶対漏らすなよ。」
生徒会執行部メンバーの顔を睨むようにリアムは見つめた。
「「「「は、はい!」」」」
リアムの後ろに冷たい氷の気配を感じ少しビビりながら、サーシアム・ベルンハルトとカミラ・ルーデルスとリュシアンとリタは返事をした。
リアムの横で、ディーデリヒだけが悠然と紅茶を飲んでいた。
事故から3日後。
レオンハルト・バートシェンナとセレスト・フランゼンの2人は生徒会執行部室へ呼ばれた。レオンハルトは落ち着いたものの、顔色がまだ少し青かった。セレストは部屋に入ってもまだ何かに怯えているような表情だった。
そんな表情を見せながらも、気丈に振舞っていた。その表情を見たディーデリヒは微笑みながら手で、椅子に座るように合図をした。
「調子はどうかな?話を聞かせてほしい。事故があった日何があったんだ?」
言葉短めにディーデリヒが聞いた。
下を向いていたレオンハルトはディーデリヒの顔を見た。
「アルフェリス様は大丈夫なんですか?」
小さな声でディーデリヒに聞いた。
「レオンハルト、君だから嘘はつかないよ。アルフェリスはまだ意識を取り戻してない。だが落ち着いてはいる。」
ニッコリ笑いかけ、ディーデリヒが答えるとホッとした顔を見せたレオンハルトは涙を流した。
リュシオンとリタは2人の前に紅茶を淹れたカップを置き席に着いた。
「あの日のことはこの部屋にいる者たちだけしか、あの時アルフェリスが怪我したという事実は誰も知らない。他の学院生及び教師たちにはいたずらだったと報告した。」
レオンハルトとセレストには事実を隠すことなく正直に話すことが正解だと結論を出した。
「同じことを聞いて申し訳ないが、君たちがどうして巻き込まれたのか知るためにも教えて欲しい!」
リアムが頭を下げて懇願した。
レオンハルトは困惑気味の顔をしてセレストと顔を見合わせた。
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