電子書籍専門レーベルを通して出版する価値について
お久しぶりです。
でもんです。
久しぶりのエッセイになりますが、今回は新人作家が電子書籍専門レーベルで小説を出版する価値について……という話題で書いてみたいと思います。
まず端的に結論から。
販売部数および印税収入という2点においては、小説を出版する価値はありません。
基本的に電子書籍のマーケットは多種多様なコンテンツが売上を伸ばす構造をもっていません。
ある程度著名な作家が単作品では500部から1000部を売るのがやっとという世界です。
理由については他のエッセイでも書いていますが、インターネット上では膨大な量の作品が毎日リリースされるため、新作発売、直後にロングテイルの商品群に埋没という状況が一般的です。
※ ロングテイル:販売構造のセグメントで長い尾っぽと称される、ほとんど売れない沢山な商品の意。ロングテイルであることを商機とするようなビジネスモデルもあります。
ロングテイルに自作品を埋没させないためには、固定のファン層を持つか、広告戦略しかないのですが、そもそも売れて1000部という状況では、出版社がかけられるコストはしれています。
1000円×1000部で、ようやく100万円の売上、これをストア、出版社、作者と山分けするのです。広告費用に回す余力はありません。表紙にすらコストをかけられないのが実情です。
作家自身で広告を打つにしても、電子書籍は実売部数での印税が普通だと思いますので、10%や15%の印税では上記の例でも最高で15万円。ほとんどの作家は1作品、数千円から数万円程度の収入しかないと思われます(私の作品は単価も安かったので数千円にしかなりませんでした)
以前、Twitter上で著名な作家(紙書籍でも多く世に出されている方)と電子書籍の販売実態についてやりとりをさせていただく機会があったのですが、作品数をある程度供給し続けることができれば、収入面を押し上げるメリットはあるとのことでした。
これはどうしても紙書籍で発行部数ベースの収入があることが前提となりますので、私のようなドマイナーかつ遅筆な作家では稼ぐこともできませんし、そもそも売れません。
出版社側にとっても同じ事が言えます。
売れない作品はコストにしかなりません。
ということは、新人作家の作品を電子書籍専門レーベルから出すというのは、冒頭で結論として記述した通り、売上という面では価値は無いと言えるのではないでしょうか。
一方で、電子書籍専門レーベルであっても編集者がちゃんと付くようであれば、作家にとっての価値は跳ね上がります。
Web小説は一人でコツコツと書くのが普通ですが、いざ出版となると、本を売るために色々な方の目を通すことになります。専門の編集の方がちゃんと付いてくれるのであれば、自分で書く作品のレベルアップが期待できます。
実際、編集が付かないという状況でも、商業作品として質を上げるための推敲作業を経験するだけで、作家としての技量が上がるように思います。
出版社によっては、校正から何から自分でやらないといけないレーベルもありますが、それでも商業作品として世に出す価値はありますので、売上とは違った面での判断基準として考えると良いかと思います。
結論:
電子書籍専門レーベルでは売れない、儲からない。
商業作品を出すことを意識したり、編集の方と打合せて作品を推敲すると技量はアップする。
作家自身がどこに価値を見出して、電子書籍専門レーベルで出版するのかを考えると良い。
おまけ:
KDPがどうたらという話もあるので、とりあえず1冊出してみようと準備中です。
なにか思うところがあれば、KDPについてもエッセイを書こうと思います。
なお、これからは電子書籍での自費出版の時代だ……とは考えていません。数年前に色んな人が言っていましたね。
自費出版はあくまで作家にとって販売チャネルの一つでしかないですし、KDPであろうがネット上の作品はロングテイル群に沈むということに差異はありませんので、印税率の違いと自己責任でマーケットに対して戦略が打てるという程度がメリットかなとは思ってます。