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異世界まるっと丸噛じり  作者: 伍頭眼
2/7

【ポンポン村に到着~】

簡易的な寝床を作る為に森に落ちている大きな

枯れ木を拾い蔦で縛り葉っぱを敷き詰める。

たったこれだけで簡単な寝床が完成した。

第三者から見たら酷い作りかもしれないが、

どうせ取り壊すし俺はどんな場所でも寝る事が

出来るので全然OK!


一応、夜の森なので焚き火をしておく。

じゃないと真っ暗で何も見えないし純粋に怖い!

夜の森って言うのは完全に闇が支配している。

もし、興味があったら森で一泊してみると良い。

ネオン輝く現代では信じられない様な真っ暗を

味わえるぞ。


田舎も灯りが少ないから暗く感じるが真っ暗では無い。

天気が良ければ綺麗な星空も見えるし

ポツポツと民家の明かりもある。

街灯も所々あるよね。


けど、森は全~然違うざんす!

もう夕方ぐらいで視界が結構危うい。

夏時期や冬期によって若干違うが

あっという間に真っ暗!本当に真っ暗!

森の木や葉っぱが光を遮断するから何も見えないんだ。

だから森や山で一泊する時は必ず光源を持って行ってね!

絶対だよ!振りじゃないからね!


俺は一度、中学3年の頃、爺ちゃんに置いて行かれた事が

あってね。

確か…ほんの少しヤンチャをしていた頃だったかな~。

ヤンチャと言っても仮病を使って学校から帰るとか

ガチヤンキー勢と一緒に少し酒を飲む程度だ。

まぁ、思春期のアレだ。

そんで、爺ちゃんが大事に飲んでいたハブ酒を、

かっぱらって仲間と飲んでたらバレて爺ちゃん大激怒!

俺と特に仲が良かった金髪オールバックの中村と

お調子者の田中の3人は爺ちゃんにロープで

グルグル巻きにされて真っ暗な森にマッチ箱一つ

持たされて置いて行かれたのは良き思い出……すまん、

嘘だ。思い出したらメッチャ辛い思い出だった。

俺達3人はマッチの灯りだけで半泣きになりながら

ボロボロな姿で帰ったものだ。

あの時のマッチの灯りの心細さと言ったら無かったなぁ~。

田舎特有の教育にしては、やり過ぎな気もしないでも無いが、

そのお陰で中村は完全にグレる事も無く、

猛勉強の末、国家公務員になったし田中は家を

継いで坊さんになった。

その時は、俺以上に爺ちゃんが喜んで特上寿司と

ハブ酒をご馳走していた。厳しかったけど良い爺ちゃんだ。

イカン……思い出したら涙腺が……。


あっ!言っておくが爺ちゃんは健在だぞ。齢85歳で

鹿の首を極めてヘシ折る程、元気だ。

今、思えば相当人間離れしている爺ちゃんだったな。


おっと…森の暗さの話をしていたのに、いつの間にか

爺ちゃん談義に花を咲かせてしまったね(笑)

まぁ~、要は、森や山の暗さは経験した事の無い暗さって

事だ。もし一泊するなら準備万全にね!


さ~て、異世界の森も元の世界同様で真っ暗だし

寝ようかね。

森からは『ギャア!ギャア!』とか『グルルッ』とか

人ならざる者達の声が若干……いや、大分聞こえるが…。

寝れる気がしねぇ…。


◇◇

◇◇◇


はい!皆さん御早う御座います!

ぐっすり寝てしまいました。やっぱり睡眠は大事だね!


太陽の光が暗闇だった森を照らし濃い緑が

辺り一面に広がる。本当に森や山と言うのは不思議だ。

夜になると真っ暗で恐怖すら感じるのに木漏れ日が射す

森や山は美しさで息を飲んでしまう。

その両極端な一面が人間の本能を刺激するのだろう。

素晴らしい事だ。


うう~んと腕を上げ伸びをしながら朝食になりそうな

食材を探す。

一応、ステータスの確認もして【大食い】スキルも

元の数値に戻っていた。


よっし!ステータスも戻った事だし移動しますかね。


ザッ…ザッ…と道なき道を歩く。悪食スキルで

色々な命を頂いた御蔭で体力もバッチリなので全然

疲れず幻想的な森をひたすら歩く。

歩いている最中に岩塩を見つけた時は拳を天に

突き上げたな。

ちょっと赤みがかった岩があんなぁ~と思って

齧ったらしょっぱかったので塩と判明。

でも普通、岩塩って地層に有る物じゃなかったっけ?

思いっきり岩と一緒に転がってたぞ。

うーむ…解らん!


塩も手に入ったので、道草も忘れずモッシャモッシャ食べた。

食べ物も生き物も変てこりんな生物ばかりで全く飽きないね。

中でも面白かったのがコレ!


【綿毛虫】 (食用可)✩レア


◇身体全体に綿の様な毛に覆われている魔虫。

 動きは鈍いが風魔法を自身に使用しフワフワと

 胞子の様に飛ぶ事が出来る。

 綿毛虫が纏っている毛は非常に上質な綿で

 風耐性を持ち貴族や魔法使いに高価で取引される。

 食べ方は綿を綺麗に取ってから焼くのがオススメ。

 焼いていくと皮が弾けプリプリの身がジューシー。

 しかし、外見から嫌煙されがち。


これは、普通に美味しかった!確かに外見が

まんま幼虫だけど身が締まっていて上質な肉を食べている

感じだったな。

けど、嫌煙されがちなのが残念。こんなに美味しいのに。

昆虫…とゆーか、この世界では魔虫かな?

ぶっちゃけ知っている人も多いと思うが虫とゆーのは、

栄養の塊の様な凄い食べ物なんだよ。

基本的に半分以上はたんぱく質で、サイズは違えども、

昆虫も動物の種類に入るからたんぱく質を多く含んでいる。

また、必須アミノ酸や鉄分などのミネラル・ビタミンも豊富に

含んでいるため、昆虫は一種の完全食品なのだ。

特に遭難した時なんかは水と虫さえ見つければ何とか大丈夫。

但し、火は通してね。


あっ!綿毛虫の綿も食べて見たら綿飴みたいで

最高でした。

こんな感じで食べ歩きながら、のほほ~んと山道を

歩いて行くと大きな巨木が倒れていた。

本当に、デカイ!横に倒れているのに俺より1mぐらい

高い。登ったら景色が良さそう。

なので登って御食事タイム。よいしょ…と!


おお!す、すげーー!メッチャ景色良いじゃんか!


横倒しの巨木の上に立つと目の前には落差30m程の崖になっており

その崖の下に広がる景色に思わず息を飲んだ。

崖下には様々な色をした木々や植物に溢れ、

空に無数の巨大な土地が浮かび、そこから滝の水が

流れ落ちていた。

その水が光に反射し、これまた綺麗だ。


俺は絶景を眺めながら綿毛虫の蒸し焼きと岩虫を齧り、

デザートにロハスの実と言う酸味が強い実を食べる。

口の中がサッパリするので油っこい食べ物には良いかも知れない。


一通り景色を楽しんだ後に移動しようと不意に横を向く。

いや、ホントに何も考えずに、意識せずに向いたのよ。

そしたら、俺の鼻先に触れるぐらいの近さに、

ニャンコの顔があった。


「でぃぃいやああああああああ!!?」


「ニョワニャアアアアアアアア!!?」


お互いの奇声が森に響き尻餅を着く。

そして、お互いしばし相手を観察。


(……猫?いや、でも服着とるぞ?頭にはターバンの様な

 幾何学模様の刺繍が施せれた布を巻いてるし…。

 ズボンは、まんま土建屋さんの皆様が履いている

 ニッカポッカみたいな感じだな…。

 これは、第一異界人発見って奴か!?)


と心に思ってはいるが全く口から言葉が出ない。

完全に吃驚している証拠だ。


「に、人間ニャ?迷子ニャ?」


おおう!!語尾にニャって!可愛すぎるじゃないか!

これが、俺みたいなオッサンがニャ、なんて語尾に

付けていたら温厚な俺でもフルボッコにしてしまいそうだ。

………ちょっと語尾に付けてみよう。


「そうだニャ!!迷子ニャ!」


いかん。自分で言っといて何だが気持ち悪いな!

辞めよう!心が死にそうだ。


「ニャ!?同族かニャ!?」


「ごめん…人間です。ちょっと真似してみただけです」


「ニャ~んだ、そうだったニャ」


ニャンコは落ち着いて来たのかトコトコと俺に

近づいてくる。もうちょっと警戒とかしないのん?

近所の野良ニャンコより警戒心が薄い。


「さっき何食べてたニャ?人間の食べ物気になるニャ」


ほほう。俺が食っていた物が気になってんのか。

よしよし。ならば見せてあげよう!


「コレだよ」


ニャンコの目の前に綿毛虫の綿を取ったバージョンを

差し出す。因みに大きさは20cm程。


「ギャ二゛ャアアアアアアアアアア!!!」


綿毛虫の毛無しバージョンを見た瞬間、ニャンコの

毛が一気に逆立ち叫び声を上げながら飛び退いた。

しかも、飛び退く瞬間に俺の顔を引っ掻くと言う

オマケ付きで。


「いだぁぁぁぁあああ!!」


「ニャ!ニャんで、魔虫なんて食べてるニャ!?

 魔虫ニャよ!?虫ニャ!?虫!キモいニャ!!」


「キモくニャい!…間違った!キモく無いよ!!

 いや、語尾にニャなんて付ける俺はキモいが、

 この虫は美味しいんだよ!ホントだよ!

 噛むと虫本来の味が口一杯に広がって上質な…」


「キモいニャアアアアア!!」


まぁ、この様な喜劇が繰り広げられたがお互い

クールダウンして自己紹介。


「私は、ニャロメ。ポンポン村の出身で今日は、

 魔虫の森で山菜を採ってたニャ」


ふむふむ、ニャロメちゃんって言うんだ。

私って言ってたから多分、レディなんだろう。

しっかし…マジ異世界って実感するよ。

だって二足歩行で猫が服着て言葉喋ってるんだぜ?

マジ半端無い!

獣人って種族なのかな?なんか日本に居た時の漫画に出る獣人って

人間にケモ耳と尻尾が付いているってイメージだけど、

この子は、まんま二足歩行の猫ちゃんだな。


お調子者で今は寺の住職の田中が見たら狂喜乱舞

しそうだ。あいつは、俗に言うケモナーに目覚めて

しまって一時期戻れない所まで突き進んでたからな。

あいつの話だとケモナーレベルと言う物が有り

5段階表記されるらしい。

ニャロメはレベル4って所かな?骨格も猫っぽいし。

まぁ、この表現があっているか、どうか解らんが。


「初めまして。俺は、砂頭 健吾って言います。

 さっきは驚かせてしまってサーセン」


「本当ニャ!いきなり、女の子の目の前に魔虫を

 出すんニャもん!吃驚したニャ」


あっ、やっぱり女の子なんだね。此処に田中が居なくて

良かったよ。もし居たら完全に事案になるからね。


しかしなぁ、あの驚き様だと昆虫食とか無い文化なのかな?

少なくとも、ニャロメちゃんが住んでいる場所には無いかもな。


「ニャロメちゃんの住んでる場所では、魔虫とか

 やっぱり食べないの?」


「ニャロメで良いニャ。それと、魔虫なんて食べニャい!!」


こうもハッキリ断言されると凹むなぁ。

日本に居た時なんて様々な美味しい食べ物の中に

昆虫食の文化もあったのに。猛毒だって何とか解毒して

食べるぐらいの情熱を持った民族だからね。

けど、こっちで日本のノリで食ってたら完全に変人扱いかも

しれないな~。

でも、これが日本人の性なので気にせず食べるけどね。


「大体、魔虫を食べるニャんて危ないんニャよ!?

 魔虫は、魔素を取り込んで体の中に魔石を作るニャよ!」


魔石?あぁ、何か食っている最中に石みたいな食感が

混じってたけど、アレの事かな?


「本来、魔物、魔虫、魔植物には魔石があるニャ。

 魔石自体は魔法使いや冒険者達から重宝されているから

 問題ニャいけど、魔抜きをしていない魔物や魔虫、魔植物は

 毒なんニャよ!

 特に魔虫は魔抜きが難しくて食べようとする奴なんて

 いニャいよ」


「魔抜き?何、それ。教えてニャロメ先生」


先生と言う言葉に気分を良くしたのか、ふふん!と猫背を

ピーンと伸ばして解説が始まった。


「魔抜きは、体内に有る魔石を抜く事ニャ。

 魔物は小石ぐらいから大きい物で、そこにある岩ぐらいの

 魔石を持っていて倒せば比較的簡単に取り出せるんニャけど、

 魔虫は魔石が小さいし体中に散りばめられていて

 取り出すのに苦労するんニャよ」


ほーーん。なるほどねぇ、全然知らずに

バリバリ食ってたわ。けど、俺のステータス画面には

食用可って出てたけどなぁ。

悪食スキルの御蔭かな?多分、俺の魔力が上がっているのも

魔石が少なからず関係しているんだろう。


しっかし…魔石ねぇ…。色々な大きさがあるみたいだな。

そこにある岩ぐらいの魔石って1mぐらいあんじゃん。

どんな魔物が持ってんだよ。

会いたくねーー。


「あと、魔植物は根に魔石があるニャ。

 だから、根以外は特に魔抜きしなくても良いんニャけど

 毒草も沢山あるから気を付けるニャ」


「勉強になりましたー!」


「ニャハハ!別に良いニャ!」


本当に勉強になった。やっぱり異世界の事は異世界の方の

話を聞くのが一番だ。

ぶっちゃけ悪食スキルがある俺には関係無いが…

勉強になったのは事実だしね。


ニャロメの異世界講習が終わり、お礼に山菜が沢山

入った重そうな籠を持ってあげると言ったら

喜んでくれた。

序でに、ニャロメが住んでいるポンポン村と言う

何とも可愛らしい村に案内してくれるとの事。

嬉しい事だ。




はい!ニャロメと道草を食いながら

ポンポン村に到着~。


おぉ~、この世界に来て初めて人の営みが有る

場所に来たなぁ。

パッと見だけど、そこまで大きい村って訳じゃないな。

けど、雰囲気とか良さそう。


ポンポン村の入口に近付いていくと2人の

門番らしき方々が椅子に座りながら

喋っていた。


「ただいニャ~」


「おっ!ニャロメか。おかえり」


どうやら顔見知りの様だなぁ。田舎の村なら

珍しい事でも無いか。

……しかし、気になるんだが、門番の方々って

人間じゃないよね?

一人は、頭から2本角が生えているし肌も赤黒い

筋骨隆々のマッチョメンだし。

もう1人は、赤い髪の短髪が特徴的な女性。

頭からは、ピョコンとケモ耳が生えていて

お尻にはフッサフサの尻尾が出てる。

俺が漫画で見たような人間にケモ耳と尻尾が

ある獣人って感じだ。

獣人って色んな種類が居るのかな?


なーんて考えていたらマッチョメンに

声を掛けられた。


「ニャロメ、こいつは…人間か?」


「そうニャ。魔虫の森で迷子にニャったんだって」


「あっ、砂頭 健吾って言います。魔虫の森で

 迷子になった所をニャロメさんに助けて

 貰いました」


日本の社会人スキルをフルに使用し挨拶をする。

それが効いたのか、不審者を見る目が少し

和らいだ感じだ。


「魔虫の森で迷子って……良く無事だったな。

 お前1人か?」


「えぇ。自分1人ですね」


「人間が1人でか……ううむ」


やべっ!警戒心が一瞬和らいと思ったのに

元に戻っちまった。

いや、まぁ、どっからどう見たって不審者だよな。

荷物も食料も持っていないし、ニャロメ曰く

魔虫の森って相当危険らしいし。

そんな所から1人で来たって言ったら誰でも

疑うわ。

仕方無い!余り使用したく無いが使うか!

禁断スキルを!!


「…実は元々3人で行商人の様な事を

 していたのですが、途中で魔物に襲われまして

 着の身着のまま何とか自分だけ逃げ出せ

 たのです。

 無我夢中で逃げて、いつの間にか森に……

 残りの2人は、目の前で……くっ!!」


はい。嘘です。ホントは神様に転移させて貰いました。

正直、メッチャ申し訳無いと思うが面倒事は勘弁。

なので社会人経験で培った詐称スキルを使わせて貰うね。

……しかし、こうも息を吐く様に嘘を言えるって

恐ろしいな。

序でに、保身の為に言うが詐欺とかしてないからね!

会社を仮病で休む時とか…まぁ…大人なら色々と

あんじゃん!


さて、俺の嘘が通用したかな?


「……そうだったのか…すまない。嫌な事

 思い出させちまったな」


ペコリと頭を下げるマッチョメン。その後ろで

悲しい顔をしている美人獣人とニャロメ。


純粋ーーー!この方々凄いピュアだーー!

メッチャ心が痛ぇー!……こんな純粋な方々に

面倒事を避ける為とは言え嘘を付いてしまった。

誠に申し訳無い!

今度、何か手に入ったら御馳走しよう。


「いえいえ!お気になさらず!自分もこうして

 生き残って皆さんと出会えたのですから」


「そう言って貰えると助かるぜ。俺はガストってんだ。

 こっちの奴はターニャだ」


ターニャさんがペコリと頭を下げる。


美人獣人がターニャさんで、マッチョメンが

ガストさんか。

覚えておこう!そして御飯を御馳走しよう。


「色々と大変だったみてぇだからな。ゆっくりして

 行けよ」


ガストさんとターニャさんに、お礼を行って

ポンポン村に無事に入る事が出来た。

若干、俺の心が罪悪感で死にそうと言う代償はあったが。


村に入って見ると緑豊かで自然と共存している

雰囲気の村だ。

地面は土が剥き出しでは無く牧草地帯の様に

芝が生えていて歩くとフカフカする。

何か小動物の様な生き物が放し飼い?されているが

見た事も無い生き物でサッパリ解らんけど、

危害とか無いだろう。

じゃなきゃ放置してないしね。

一応、後で鑑定してみよ!


村の中を歩いて気付いたんだが、皆、俺の事を

物珍しそうに見てんだよな~。

余り見られると恥ずかしい。

そんなに人間って珍しいのかな?


「なぁ、ニャロメ。さっきから見られてるけど、

 人間って珍しいの?」


「そうニャ~、此処は魔族領ニャから人間は

 少ないニャよ。

 だから、皆珍しいと思ってるニャ」


あ~、成る程ねぇ。だから、この村って

人間が全然見当たらないんだな。

てか、魔族領って大丈夫なんか!?


「嫌な気分にさせたニャら御免ニャ…。

 あんな悲しい事があった後ニャのに」


げっ!?まだ引き摺ってたのか、このニャンコは。

イカン!ケモ耳がシュンとして哀愁が漂ってる!

…まぁ、ニャロメには本当の事を言うかな。


「あっ、さっきの話、嘘な」


「ニャ!?ニャんて!?嘘ニャ!?」


「すまん。面倒事になりそうだったから…つい、な」


「ニャふ~…そうだったのニャ~、良かったニャ!

 あっ、ザトーちょっと屈んでニャ」


んっ?何で屈む必要が?

あら?ニャロメさんや、肉球が付いてる可愛らしい

手から鋭い爪が出てるけど……何故に?


「嘘付いた罰ニャ!」


バリッ!ザシュ!!


「いだぁぁああああ!!」


小さな村に俺の叫び声が響いた。

その後は、社会人スキル【土下座】で何とか

謝り倒して許して貰いニャロメの家に招待してもらう。


ニャロメの家もそうだが、この村の家は変わっている。

異世界なんだから当然なんだが、木で出来ていて

ドーム状になっていた。

ニャロメの話だと【ジャイアント・ビーンズ】と言う

大きな豆が乾燥して真ん中から割れた物を

使っていると言う。

継ぎ目も無い一枚の殻なので雨風も防げ

比較的簡単に手に入り中身も食べれるので

重宝しているそうだ。

俺も食べてみたいなぁ~。


家に入ると木の良い匂いがして何とも落ち着く。

丸いテーブルに大小と大きさが違う椅子。

多分、様々な種族が居るからだろう。

他にも見た事の無い植物が逆さに吊るされ乾燥

させている。


「今、飲み物入れるニャ~」


パタパタと台所に走って行き飲み物の準備を

していると嗅いだことがある匂いが漂って来た。


この匂い……緑茶?


ニャロメが戻って来てコトッと置いた木製のカップには

薄い緑色の液体が入っていた。


「此処で取れる薬草を煎じた飲み物ニャ。

 初めは苦いかもしれニャいけど体に良いニャよ」


「ありがと~。頂きます」


ズズッ…


うん!これ、緑茶だね!日本で飲んでた緑茶より

若干、味が薄いけど、代わりに香りが強くて

鼻腔をくすぐる感じだ。

あぁ~、落ち着くわぁ。まさか異世界で緑茶を

飲めるとは思わなんだ。


「珍しいニャね~、チャチャ草を煎じた飲み物を

 美味しそうに飲むニャんて。

 皆、最初は苦いって言うのニャ」


「あ~、俺の住んでた所だと頻繁に飲んでたからね」


ニャロメは、「ふ~ん」と少し嬉しそうにしながら

飲んでいる。


お茶か…、お茶を飲んでいると、お茶請けが

欲しくなるな。

残念ながら和菓子は勿論、甘味なんて無いが。


「なぁ、ニャロメって、お菓子とか作ったりしないのん?」


「ニャハハ!ザトーは変な事聞くんニャね。

 お菓子ニャんて高級品ニャよ?自分達みたいニャ

 平民が食べれる訳ニャいニャ~」


ふ~む、お菓子は高級品なのか。

俺の居た世界ではピンからキリまでの値段の

お菓子があったのになぁ。

いやいや!此処は、異世界なんだから仕方無い!

……でも、甘味も食べたいなぁ。

それに、ガストさんやターニャさんにもお詫びしたいし。


「でも、魔虫の森に居る奴で【フォレスト・ビー】って

 魔虫が居て巣に甘~い蜜があるニャ。

 けど、冒険者でも手古摺るし、数が多いから

 ニャかニャか手に入らニャい」


蜂蜜!?この世界にも蜂蜜があるのか!?

これは良い事を聞いた!是非、欲しいけど

数が多くて手古摺るのかぁ~、うむむ!


けど、慌てる必要は無いか。

それに、手強いとなると色々準備だってしないと

駄目だしね。

いくら【悪食】スキルで強くなっていってても

油断は禁物だし、この世界の事を知らなすぎるし。

爺ちゃんにも、森や山で慢心など言語道断って

言われて来たしな。


よーし!まずは情報を色々とニャロメ先生から

教えて貰おう。

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